吐き出されるこの言葉
「温泉街、というのもいいですね
これだけ賑やかなものとは思いませんでした」
旅館から外に出て少し歩くと温泉街に出て、自分達と同じように浴衣姿の人々を見ながら風は感嘆の声を上げた。
「風、待って」
その後ろをついてくるように歩くマーモンは、普段履かない下駄に苦戦しながらぎこちない歩き方をしていた。
「大丈夫ですか?」
「いつもと違うから少し歩きづらくてね…」
「いざという時は私が抱っこしますので、遠慮なく言ってください」
「そうなる前に声かけるよ…しかし、君が言う様に賑やかだね」
周りを見渡すと人が思った以上に温泉街におり、マーモンはキュッと風の浴衣の裾を掴む。
「はぐれたら大変だから、風、気をつけ…」
「…」
「なにさ、黙り込んで」
「…いえ…行動一つ一つが愛らしいな、と」
「何言ってるの、君」
「そこを掴むよりも、こちらのほうが離れづらいですよ」
「ムムッ」
そう言って風は自分の浴衣を掴んでいたマーモンの手を離すと、その手をギュッと握り締めて指と指を絡めた。
「ほら、ね?」
握られた2人の手をマーモンの目の前に差し出しながら微笑む風。
マーモンは恥ずかしいのか風から視線を外し、自分の握る力を少し込めた。
「…まぁ、そうだね
でも今日だけだから」
自分を握りしめる手に力が込められたのが分かったのか、風はジーンッと感動をしたような表情を浮かべる。
「…はい、明日も明後日も、ずっと毎日貴方の手を握ります!」
「今日だけって言ったでしょ、馬鹿」
「ふふッ」
上機嫌な様子で微笑みながら温泉街を散策すべく歩みを進める風とマーモン。
マーモンはチラリと横目で風を見た後にスッと視線を下へと落とす。
なんか、恥ずかしいな…。
いつも手繋いだりとかしないから、そのせいか?
というか、そもそも僕とこいつはそういう関係では…。
…でも…。
マーモンは再び風の様子を伺いながら風の唇を見る。
"…貴方にそこまで思われていることが嬉し過ぎて…幸せ過ぎて…気持ちが抑えきれませんでした"
…キスされて、それが嫌ではなかった。
なぜだかわからないけれど、嫌ではない。
ということは、こいつのことが嫌い、というわけではなくなっているわけで…。
だからといって、こいつのこと好きではないんだけれどね。
ただの、友人…的な立ち位置…いやでもキスしちゃってるし、嫌じゃなかったし…。
「ムムムムム…」
「どうしました?」
「いや、なにも…ちょっと考え事をね」
「今日はもう考え事はやめましょう?
せっかくのお泊りデートなのですから」
「お泊りデート…」
「あ、マーモン
りんご飴ありますよ?食べますか?」
風がりんご飴の店を見つけたようでマーモンも自然と視線がそのお店へと向かう。
通りで甘い匂いがしていたわけだ。
「食べたいけど、あれって普通のりんご飴と違うよね?
なんか、大きく見えるんだけど」
「通常サイズのりんご飴みたいですね
それで、食べやすいようにカットしてくれているようです」
「流石に大き過ぎてご飯食べれなくなるからいいかな」
「それならば、残りは私が食べますのでいいですよ?」
「ムム、いいのかい?」
「えぇ、それでは購入してきますので少し待っていてください」
マーモンの手からするりと風の手が離れようとする。
…あ。
ギュッ。
「ッ?」
マーモンは反射的に風の手を握りしめており、風は不思議そうにマーモンへと顔を向けた。
「マーモン、どうしました?」
「…え…ぁ…」
どうしたんだ、僕は。
「いや、ごめん…なんか、掴んじゃって」
自分の行動に戸惑いながら手を離そうとすると、風は微笑みながらマーモンの手を握り直した。
「お、おい」
「…人混みが多いですからね、一緒に行きましょうか」
「…うん」
そう言った後、風は店員に声をかけて注文をし始める。
その様子を見ながら、マーモンはギュッと風の手を握り締めた。
…本当、なにをしてるんだか…僕。
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