口から出せないこの感情
いや、誘ったのは僕だけどさ。
はっきり言って、お礼&迷惑代というのであれば菓子とかを手渡してそれで済ませてもよかった。
…だけど…。
チラリと骸へと視線を向けた瞬間に、店員が飲み物をトレーに乗せて持ってきてマーモンと骸の目の前へと1つずつ差し出し、再びテーブルから離れる。
マーモンは自分が頼んだレモネードの入ったグラスを手に取り、ストローで飲みながら再度骸を見る。
「「!」」
すると、ふと骸と視線が合ってしまいマーモンはススーッと視線を逸らしてしまった。
…見てたのバレたか?
あからさまにそらしてしまったけど。
そう思いながら再度骸を見てみると、自分の考えを見透かしているかのように骸はマーモンを見ながら頬杖をついていた。
「…なんだよ、その顔」
「貴方が僕の事を見てくるからでしょう?
なにか僕の顔についていますか?」
「別になにも…頭にパイナップルついてるぐらいしか」
「叩きのめしますよ?」
「野蛮過ぎない?術士なのに力技でどうにかしようとしないでよ…少し聞きたいことあるんだけど」
「なんです?答えられる範囲であれば答えてあげますが」
「…あのさ」
骸がアイスティーの入ったグラスを手に取り、ストローに口をつける様子を見つめながらマーモンは口を開いた。
「雲雀恭弥の事、なんで探してたの?」
「んくふッ!!」
「?!」
自分の発した言葉を聞いて飲んでいたアイスティーを噴き出した骸に驚きながら、マーモンは"汚いな"と言ってテーブルに置いてあるナプキンを手渡した。
骸は"失礼…"とナプキンを受け取ると自分の口元を拭いながら隠す。
「…なぜそのようなことを聞くのですか?」
少しすると落ち着いたのか、骸はナプキンをテーブルの上へと置いてマーモンに声を掛ける。
マーモンは骸を一瞥した後に窓へと顔を向けて外の景色を眺めだした。
「…僕が持っている情報の中では、君が黒曜で起こした事件以降、雲雀恭弥が君に対して異常な執着心を持っていたのは知っていた
その執着心っていうのは、君に負けたことに対して、負けたままではいられない
君に完全な敗北を与えてやる、そういう感じの執着心なのかと思ってた」
「…まぁ、そうですね
その見解は半分正解、といったところでしょうか
現に彼は、僕が牢獄から出てきてすぐに毎日のように挑みに来てましたから」
「ふぅん、毎日ねぇ…」
やはり自分の考えは少しは当たっていたよう…ん?
そう思いながらストローをくわえてレモネードを飲もうとした瞬間、ふと疑問が頭に浮かんで動きを止めてしまう。
「…毎日?今、毎日って言わなかった?」
「えぇ、言いましたよ」
サラリと平然と答える骸をきょとんとした表情で見つめる。
「僕も牢獄を出る時は多少なりとも彼の強襲を想定していました
僕が出てきた以上、彼は必ず僕に戦いを挑んでくると
あんなに無様に僕に負かされたんです、彼の性格上そのままと言うわけにはいかないでしょう
…まぁ、それが毎日続くとは思ってもみませんでしたがね」
「…毎日…」
なんか、身に覚えのある光景だな…それ。
僕も風が毎日のように来てるし(といっても週6だけど)。
「…君も大変だね、嫌いな奴にそう毎日のように押しかけられて」
「…いえ、別に…嫌いではありませんし」
「?そうなの?
ほぼストーカーみたいな事されてるのに嫌いじゃないん…」
骸からの返答が意外で顔を向けてみると、骸は頬杖をつき仄かに頬を赤らめている。
…むむ?
「なにその反応、顔赤いけど」
「…なにも」
「なにもって、そんなはずないでしょ
なんでそんな反応するのさ、まるで雲雀恭弥の事嫌いではないみたいな…」
嫌いではない…それに、その反応…。
「…へぇ…ふぅん…そういうことか…」
マーモンは骸の反応からして察したのか、どこか納得したような声を漏らしストローをグラスの中で円を描くように動かした。
「この前、学校で雲雀恭弥との事を聞いた時もそういう反応してたけど…なるほどね」
「冷静に言わないでくれます?
これなら茶化してくれたほうがましです」
「別に茶化さないよ、一銭の得にならないし
まぁ、それなら君が雲雀恭弥を探していたことには納得だ
1ヶ月も会っていないだけで、探しに行くほど好きだなんてね…君も案外、可愛らしいところがあるじゃないか」
「貴方、それ自分のことだとわかっていますか?」
「僕は違うよ、あいつの事嫌いだし」
「…そういえば、その話も途中でしたね」
「途中?なにか話してたっけ?」
自分の言葉を聞いてふと思い出したように声を漏らした骸に、マーモンは不思議そうに問いかけながら首を傾げる。
「貴方が彼に対して、抱いている感情の話ですよ」
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