君のいないこの時は
「…」
…今、マーモンはなんと…。
浴室に入っていったマーモンの背中を見ることしか出来なかった風はベッドに座ったままそこにいた。
"だ、から…嫌じゃないって、言ったんだよ…"
私とのキスが…嫌ではなかった…?
嫌では…ない…。
「ッ…」
風はマーモンの言葉を何回も頭で繰り返すうちにだんだんと顔を赤くしていき、口元を手で押さえる。
それってすなわち…。
「私の事が、好きということでは…?」
マーモンが私に好意を抱いてくれている、ということですよね?これはそういう意味ですよね??
だんだんと嬉しさが込み上げてきて、表情が緩んでしまう。
以前のリボーンとの件があって以来、マーモンとの接し方が分からなくなってしまって…この想いを払拭すべく雲雀恭弥との戦いをすることに決めた。
まさか、1ヶ月も戦ってしまうことになるとは予想外でしたが…そのおかげか気分はすっきりしましたが。
しかし、マーモンを淋しがらせてしまった事に関しては、反省すべき点ですね。
行く前は、淋しくない、と言っていたので…大丈夫かと思っていたのですが…。
「…ふふ」
…先程、その言葉を聞いて理性を失いかけてしまい、無抵抗な彼にキスをしてしまった…いや、キス以上のこともしようとして…。
「…そういえば」
そこまで思いかけて風は首を傾げる。
…私のことが好きならば、なぜあそこであのような顔をしたのでしょうか…。
なにか、大事なことを思い出したのか、はたまた気付いたような…。
彼は、出そうになった、と言っていましたが…。
「…あ!」
風は思い出したように声を上げ、慌ててベッドから降りると浴室の扉を勢いよく開けた。
「マーモン!!」
「ッむぎゃ?!」
扉を開けるとマーモンは座っていたのか、そのまま仰向けに倒れ込んでしまい後頭部をゴンッと音を立てながら床にぶつけてしまった。
「ッ〜!!」
「あ」
ぶつけた痛みからマーモンは声にならない声を上げ、その場にうずくまり後頭部を手で押さえる様子を見て、風はしゃがみ込んでマーモンの顔をのぞき込んだ。
マーモンは風に見られていることに気付いたのか瞳に涙を溜めながら弱々しく睨んでくる。
「き…みね…」
「す、すいません、もうシャワー浴びているのかと思いまして…大丈夫ですか?」
「…大丈夫なわけないだろう…何かようなわけ…?」
「いえ、先程"出そうになった"と言っていたので念の為一緒に浴びた方がいいかと思いまして」
「そんな事か…別に1人で大丈夫だよ
それに、一緒に浴びる必要性はないと思うんだけど?君、さっき浴びてたっぽいし」
"いてて"と後頭部に触れながらマーモンは上体を起こす。
「シャワー位貴方のためなら何度でも浴びますよ?」
「君、さっきのさっきでよく一緒にシャワー浴びようと出来るね…
君の場合、僕の貧相な裸を見たらまた興奮するだろう?」
「え、当たり前じゃないですか
むしろ、興奮しないほうがおかしいと言いますか」
「おかしいのは君の頭だけど?」
「まぁまぁ、いいではないですか
せっかく両思いになったのですから」
ピクッ。
「…両思い…?」
幸せそうに微笑みながら風が言うと、マーモンは身体を小さく跳ねさせて風の言葉を繰り返す。
「えぇ、そうですよ
貴方だって、私とのキスが嫌ではない、と言ったのですからそういうことでしょう?
ということは、私とお付き合い…いえ、結婚を」
「…君、なにか勘違いしていないかい?」
「勘違い、とは?」
「僕、君の事好きじゃないよ?」
「…はい?」
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