君のいないこの時は
「ッ…ま、待っ…ん」
再び顔が近付き、頬に軽くキスをしながら風の手がマーモンの服の中へと入ってきてくすぐったさから微かに身体を跳ねさせる。
うわ、待って…この状況はやばい…。
なんか風、シャンプーのいい匂いするし…それに…。
バチッ。
顔を上げるとタイミングよく風と視線が混じり合い、その獣のような瞳にゾクリと背筋が震えた。
「ッ…」
雰囲気とその風の状態に呑まれてしまい頭がくらくらとし始めて、堪えるようにマーモンは眉間に皺を寄せる。
術士の僕が…こいつに呑まれるなんて…。
…でも…。
「…」
マーモンは無言で熱のこもった瞳で風を見つめ返し、するりと首に自分の腕を回した。
その反応に風は少し目を見開いてマーモンを見返す。
「…風」
「マーモン…」
マーモンに名前を呼ばれた風は瞳を細めながらマーモンの顔に自分の顔をゆっくりと近付ける。
…こいつになら…風になら…呑まれても…。
だって、僕は…こいつの事を…。
「ッ!」
「?!」
マーモンはハッとした表情を浮かべると、お互いの唇が触れ合いそうになる瞬間にグッと風の肩を押した。
肩を押された風は、ピクリと肩を震わせながら動きを止めてマーモンを見つめる。
「…」
僕は、今、なにを思った…?
「マーモン?」
僕は、今、こいつに対して…。
どういう"感情"を抱いた…?
「…ッは…はは…」
「あの」
不意に漏れ出る笑いに風は少し心配そうにマーモンの顔を覗き込んでおり、マーモンは自分の口を手で覆い隠して顔をそらした。
「…ごめん…ちょっと…出そうだったから…」
「出そ…?!もしや、頭をぶつけた事が原因で…!
やはり、今すぐ病院で検査を…!」
「待って」
先程の雰囲気とは打って変わり、いつもの様子に戻った風は慌てて病院の予約を取ろうとし始めてマーモンはそれを制した。
「大丈夫…そこまでじゃない」
「し、しかし…」
「それに、出そうになったのは吐瀉物じゃないからね」
「…吐血…?!」
「それも違う
…なんか…ごめん」
頭がだんだんと冷えたことにより、自分の言動の数々を思い出してマーモンはススーッと顔をそらし、謝罪を口にすると風は苦笑を浮かべる。
「貴方が謝ることはないですよ…むしろ、私も暴走しかけてしまい…貴方の気持ちも聞かずにキスまでしてしまいましたし」
「…キス…」
「すいません、嫌、でしたよね…」
あぁ、そうか…さっきの、キスされたのか…。
マーモンは自分の唇に指で触れる。
…風に…キス…。
キ…ス…。
「…!」
キスをされた実感が湧いてきたのかマーモンの顔はボンッと熱が集まり真っ赤に染まる。
「マーモン?!」
いきなり真っ赤になったマーモンに驚いてあたふたし始める風をチラリと横目で見ながら息を吐く。
「そんなに嫌だったとは」
「…じゃない…」
「え?すいません、聞こえなかったのでもう一度…」
ポツリと呟くマーモンの言葉が聞き取れなかったのか、風は耳をマーモンの口元へと移動をさせながらもう一度聞こうとする。
その行動にマーモンは眉間に皺を寄せて額に手を当てた後に、再び口を開いた。
「だ、から…嫌じゃないって、言ったんだよ…」
「…」
「リボーンにされた時は…嫌だったけど、君のは別に嫌じゃ…」
そこまで言って風の顔を見ると、きょとんとした表情をしておりマーモンはハッとしてベッドから勢いよく降りた。
「僕、シャワー浴びてくる」
そう言って逃げるようにマーモンは浴室へと入っていきバタンッ!と音を立てて扉を閉める。
…あぁ…。
閉めた扉に寄りかかったマーモンはずるずるとその場に座り込み、自分の唇に触れて息を吐いた。
「…意味わかんない…僕…」
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