君のいないこの時は
「…は…違うけど」
「はい?」
骸の言葉を聞いたマーモンは表情を歪ませ、その顔に骸は意外そうな表情を見せる。
「なんで僕があいつのこと好きみたいになるんだよ」
「違うんですか?」
「断じて、絶対に違う」
きっぱり言い放つマーモンの気迫に押されたのか、骸は口を閉ざした。
「大体、なんで僕があいつに好意を持つしかないのさ
言っとくけどあいつ、ストーカーだからね?
ほぼ毎日僕の部屋にやってきてお菓子を盾に侵入してきて、週6だからね?週6!普通あり得ないから!」
「週6はほぼ同棲では?」
「最初の頃は罠張ったりセキュリティを強めたりしたのに平然と部屋の中に入ってきてるし、持ってくるお菓子は美味しいし、いいタイミングでレモネードとか出してくるし」
「至れり尽くせりですねぇ」
「1ヶ月もしたらもうその生活に慣れちゃうし、あいついないとなんか変な感じだし…」
「…ん?」
最初は今まで溜まっていた愚痴を吐き出すかのように言葉の勢いが強かったのが、だんだんと弱まっていくのと、発言に違和感を覚えて骸はピクリと反応した。
「…あの、それは…」
「…なんだよ」
「いえ…こう言っていいのかはわかりませんが…」
骸に声をかけられたマーモンがじとりとした目つきで骸に顔を向けると、少し言いづらそうに骸は口ごもる。
「…それは、彼に対しての"好意"を抱いているからでは?」
「…また君は…若い子はそうやってすぐにそう恋愛的なものに結び付けたがるね」
骸の言葉を黙って聞いていたマーモンは呆れたようなため息をつきながら骸から顔をそらした。
「若い子って…貴方も十分若いでしょう?
僕もさほど年は変わらないように見えますが」
「肉体的にはそう見えるだろうけど、精神的には君の倍近くは生きてると言ってもいい…はず」
「…話を戻します
彼がいない期間、変な感じがしたと言いましたね?」
「…まぁね、いつもはいるはずなのにいないから」
「その変な感じというのは、もしや寂しい、という感じでは?」
「寂しいって…なにを馬鹿な」
「では、どのような感じですか?」
「どのような…って…なんでそこまで君に言わなきゃいけないのさ」
「貴方があまりにも鈍感で見ていて哀れに感じたので」
「君ね、人を馬鹿にするのも大概に」
「それで、どうなんです?」
あまりにもしつこく聞いてくる骸に面倒くささを覚えながらマーモンは思い出すかのように空を見上げた。
…風がいなかった時間は、僕にとって…。
「…今までいるのが当たり前みたいな存在だったのが…いきなりいなくなって…
"なんで来ないのかな"って、思って…
雲雀恭弥との件で1週間空けるって言われる前から、ある出来事のせいかは分からないけど態度がいつもと違っていた
それに、僕は気付いてた…けど…」
いつもと同じ、優しげな表情。
だけど、違和感があった。
同じなはずなのに、いつもと同じはずなのに。
瞳は、どこか悲しげだった。
「気付いていたけど、気付かないふりをしていた
いつもなら、彼の些細な変化があった時、いつもより、ほんの少しだけ優しくしたのに…それなのに…」
僕は、あの件について、彼に対してどう声をかけていいのかわからなくなった。
「…彼が、雲雀恭弥の元から戻ってきたら…その時までに、なんて声をかければいいのか考えればいいと、そう安易に考えていた
だけど、風は戻ってこなくて…いつもなら、僕の名前を呼びながら来てくれるのに…」
あれ、僕はなにを言おうと…。
今まで思っていた事を止めようにも、せきを切ったように言葉が溢れ出してくる。
それにマーモンは内心戸惑いながらも、止まることはなかった。
「…僕は、あいつを…風のこと…」
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