君のいないこの時は
「沢田綱吉の言う通りであれば、アルコバレーノの元へと行くのが最善ですね」
「…」
学校から少し離れた場所に姿を現したマーモンと骸。
横に並んで歩きながら骸が提案をするもマーモンは黙り込んでおり、その様子に骸は小さくため息をついた。
「…貴方が彼に会いたくないのはわかります
しかし、だからと言って会わないわけにもいかないでしょう?」
「…それはわかってる…まさか、こんなに早く会うことになるなんて…」
マーモンは憂鬱そうに額に手を当てながらため息をついた。
この前の任務から1ヶ月半近く…になるっけ。
まさかこんなに早く再会することになるとは…。
"だから言ったじゃねーか
隙を見せるなってな"
「…」
「…どうしました?口なんて触って」
「…いや、なにもない」
無意識に口に触れていたのか骸からの指摘でハッとし、マーモンは口から手を離した。
あいつにキスされたからなんだと言うんだ。
そんなの、カウントなんてされるわけない。
だけど…あの時の、アジトの前で見た時の風の顔が忘れられない。
「…とにかく、奴の居場所を突き止めるのが先だ」
気を取り直して顔を横に振り、マーモンはするりとポシェットから紙を取り出す。
「沢田綱吉の家に行くのがいいのでは?」
「いや、最近あいつ殺し屋の方再開させたみたいだからね…日本にいるのかどうかも怪しい
あいにく、僕はあいつの連絡先知らないから」
「なるほど…そもそも、風の連絡先は知らないんですか?」
「知らないよ、知る必要もないし
第一、あいつが毎日僕のところに来るのに知る必要なんてない」
「はい?それはどういう…」
マーモンの発言に違和感を覚えた骸が問いかけようとすると、マーモンは少し距離を離し、くるりと骸に背中を向けた。
「…粘写…」
そう呟くとマーモンはそのまま紙に向かって鼻をかみ、骸は驚いてビクッと身体を震わせる。
かみ終えたマーモンはその紙をジッと見つめると"見つけた"と呟いて紙を折り畳みポシェットの中へと入れた。
「場所、わかったんですか?」
「あぁ、どうやら日本にいるみたいだね…しかも、沢田綱吉の家に」
「そうですか、それでは早速…」
…おや?
早速ツナの家にいるリボーンの元へと向かうために歩き出した骸だったが、ふと思ったことがありピタリと歩みを止める。
「どうしたの、骸?」
先に歩いていたマーモンだったが、骸が立ち止まり顎に手を当ててなにか考えている様子に同様に立ち止まって首を傾げた。
「いえ…その"粘写"というものは、人の位置がわかるものなんですか?
それならば、それを使って風を探せばいいのでは…」
「…確かに、粘写を使えばすぐに見つけることは出来る」
「ならばなぜ使わないのです?
はっきり言って、使えるものを使わないなんて時間の無駄ですよ」
「わかってるさ…でも…」
マーモンは口を閉ざし、骸に再び背中を向けて歩き出す。
「そうしたら、怖いじゃないか
彼が今どこにいるのか、この紙でわかってしまうのだから」
「…わかるに越したことはないのでは?」
言葉の意図がわからず、骸は少し早歩きをしてマーモンの隣へと並ぶと速度を合わせながら問いかけた。
「そもそも、彼らを見つけるのが目的なのですから」
「…その点に関してはコメントを控えさせてもらうよ
君には余計な時間をかけさせてしまって申し訳ないけど」
「本当ですよ、まったく…僕も暇ではないのですから」
「…その割には、僕に付き合ってくれてるじゃないか?
どういう風の吹き回しだい?」
「一応、この件については協力関係を結んでいるのでね
特に深い意味はありません」
「ふぅん…そう
でも君には貸しを借りたくないからあとで…」
「なんだ、珍しい組み合わせだな」
「「!」」
不意に背後から聞こえてくる声にマーモンと骸が振り返る。
「よぉ、久しぶりだなマーモン」
「…やぁ、リボーン」
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