君のいないこの時は
「…まぁ、大丈夫ならそのまま幻術お願い
それと、屋上の案内もね」
骸から距離を取り、先頭を歩くマーモンの肩を骸は掴んだ。
「まったく、人使いの荒い…
そもそも、案内させるのであれば先に行かないでください」
「ムム、君が遅いからだよ
あと、今さらな事言っていい?」
「なんでしょう?」
「なんで僕、男子生徒じゃなくて女子生徒なの?」
骸が自分にかけた幻術の姿が女子生徒な事に不満げな声を上げた。
「今さら過ぎでは?」
「だから自分でも今さらって言った」
「女子生徒しか入れない箇所もあるわけですし、探すのであれば男性女性どちらもいた方が楽かと
最初にそう言ったはずです、それを了承してじゃんけんをし、負けたのは貴方ですよ」
「そうなんだけどさ、1つ腑に落ちないことがあって」
「なんでしょう?」
「女子生徒しか入れない箇所に、雲雀恭弥が入れるとでも?」
「…」
「…おい、黙」
パチンッ。
「!」
骸が片手を上げて指を鳴らした瞬間、マーモンにかけられた幻術が解かれ、それと同時に服のみが女子生徒の制服へと変化をしマーモンは目を大きく見開いた。
「おい、君何をふざけた真似を」
パシャッ。
「ムムッ!」
自分の姿が窓に映り、マーモンは骸に身体を向けるといきなりシャッター音が聞こえ、眩しさからマーモンはギュッと瞳を閉じた。
「クフフ、これはよく撮れている」
「…お前」
ふとそんな骸の声が聞こえてきて顔をちらりと向けると、スマホの画面を見ながら口角を上げて笑みを浮かべている。
その様子から、自分のこの姿を写真に収めたことが分かり、マーモンはピクッと額に青筋を立てた。
「おい、今の消せよ」
「人の容姿にとやかく言うつもりはありませんが…貴方、女性と男性どちらなんです?
僕と戦った時は赤ん坊だったので、勝手に男性だと思い込んでいましたが…その姿ではまるで女性のようだ」
「ッ…それ、渡せ…」
骸が手に持っているスマホを取り上げようと手を伸ばすと、そのままひょいっと手を上げられ身長差から届かなくなってしまう。
「嫌ですよ、これを脅しの材料にして貴方が生意気な口を聞けなくしてしまうのもいいですねぇ」
「…性悪パイナップルめ」
スマホを口元に当てながらにやつく骸にイラッとして小さな声で口にした言葉。
それが聞こえたのか骸の動きがピタリと止まる。
「…貴方、わかっているのですか?
主導権は今、僕にあるんですよ?」
「フンッ、そんな小賢しい真似をしないと主導権握れないなんてね…」
「「…」」
バチバチと2人の間に火花が散り、一触即発の雰囲気が漂う。
「最近雲雀の奴見かけないですね、10代目」
「「!」」
ふと雲雀の名前を出す生徒の声に2人は同時に振り向くと、沢田綱吉、獄寺隼人、山本武の3人が廊下で話しているのが目に入った。
「確かに、学校好きな雲雀がこんなにいないのは珍しいよな」
「あー、それなんだけどね」
ツナは困ったような表情を浮かべながら頬を掻く。
「今、雲雀さんは風さんと」
…風?
パシッ。
「「!」」
「え?あ、ちょっと?!」
そこまでツナが言いかけるとマーモンはツナの腕を掴んでそのまま廊下をズンズンと歩いていく。
「おい、てめぇ!10代目になにを」
「あれ、ツナの友達か?」
「んなわけねぇだろ!あんな女見たことねぇ!」
ギャンギャンと声を上げる獄寺とのほほんとしている山本はそのまま2人を追って廊下を走っていく。
「…やれやれ」
その様子をジッと眺めていた骸は呆れたようにため息をついてその後をゆっくりと追い始めた。
なにをそんなに必死になっているんでしょう…彼は。
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