君のいないこの時は
「僕の情報では、君は黒曜を縄張りとしているらしいけど…なぜ君が並盛にいるんだい?」
「僕が何処にいようが貴方には関係のない事です
むしろ、なぜ暗殺部隊の貴方が日本…しかも、並盛にいるのでしょうか?」
「それこそ君には関係のないことだろう?」
「…」
「…」
2人の間に火花が散り、マーモンは1人を細めながら骸を見据えた。
六道骸…見るのは代理戦以来だな。
一応、ボンゴレ10代目ファミリーの霧の守護者を名乗ってはいるが、マフィア嫌いの彼が今後なにをしでかすかわからない。
今のところ、大人しくしているらしいけれど…。
…って、それどころじゃないんだった。
「悪いけど、僕は暇じゃないんでね
先を急がせてもらうよ」
はたと自分の本来の目的を思い出し、マーモンはくるりと骸へと背中を向ける。
「おや、それは引き止めて申し訳ありません
まぁ、貴方が何のようで日本に来ているかは分かりませんが…僕の邪魔をしないのであればなんでもいいです」
「フン…君もせいぜい変な真似をしないことだね、それじゃ」
そう言ってマーモンは後ろから聞こえる骸の声を聞いた後、並盛中を目指して歩き出した。
…歩き出したのだが…。
「…」
しばらく歩き続けた後、マーモンは背後から感じる気配にピタリと歩みを止めて振り返る。
「…ねぇ、なんで後をついてきてるの」
振り返るとそこには、先ほど別れたはずの骸の姿。
「ついて行ってるわけではありません
僕もこちらに用があるのでね」
「…ふぅん…そう」
腕を組みながら言う骸を見て、マーモンは"気のせいか"と前を向き直した。
…まぁ、方向が同じなんてことはよくあることか。
「…」
並盛中へとたどり着いたマーモンは校門の少し離れた場所で立ち止まる。
久々に来たな…相変わらず小さい学校。
ここに雲雀恭弥がいるはずだけど…。
「…それで」
マーモンはチラリと未だにいる骸へと視線を向ける。
「なんで君は、まだいるのかな」
「いえ、逆になぜ貴方がいるのですか
暗殺部隊がなにようで?
ザンザスに沢田綱吉の暗殺でも頼まれました?」
「彼はもう正式にボンゴレ10代目となっているんだ
僕の力があればバレずに暗殺は容易いけど、ボスの仕業だと分かれば僕達ヴァリアーの立場が危うくなる…
今日は雲雀恭弥に用があってね、僕個人的な用さ」
「…恭弥に?」
「まぁ、雲雀恭弥にと言っても本命は」
ガッ。
雲雀の名前を出した瞬間、骸がピクリと少し反応を示したかと思いきや、いきなり喉元に槍の先端が突きつけられた。
「…なんのつもりだい?」
「クフフ…深い意味はありませんが…彼は僕の獲物ですので、手を出さぬようお願いします」
冷静に骸に問いかけると、にこりと微笑むも目が笑っておらず、本気が伝わってくる。
…確か、六道骸と雲雀恭弥は仲が悪いって話だな。
昔六道骸が起こした黒曜事件がどうとかっていうのは聞いたことがあり、それ以来雲雀恭弥が執着していると。
まぁ、僕には関係のないことだから深追いはよしておこう。
「そういうつもりじゃないよ
確かに僕は雲雀恭弥に用があると言ったけど、それは風に用があるからだ」
「風…というと…同じアルコバレーノの?」
「あぁ、説明は省くけど今2人は一緒にいるはずだからね
雲雀恭弥は並盛中にいることが多いと聞いたから、それでここに来たのさ」
「あぁ、なるほど…それは失礼しました」
説明を聞き終えた骸は非礼を詫びながら槍をスッと下ろしてマーモンから離す。
「そういう君はなぜここに?
僕にだけ話させておいて、君だけ言わないのは不公平だろう?」
「僕は雲雀恭弥に用があるのです」
「雲雀恭弥に?」
「まぁ、こちらも説明は省かせていただきますがしばらく姿を見ていないので様子を見に」
骸の視線が屋上の方へと向けられ、マーモンも同様に視線をそっちに移してみる。
「彼は基本的に屋上にいるようなので、そちらに行こうかと」
「気配は感じられないけど」
「まぁ、行くだけ行くのみです
…1つ、ご提案があるのですが」
「…奇遇だね、僕も君に1つお願いがある」
「ここは1つ、協力関係と行きましょうか」
「…今回だけね」
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