お前に捧げる俺の(  )


「…風にどきどきしたのは…熱のせい…か…」

「…え?」

ヴェルデとの電話中、不意に聞こえてきたマーモンの言葉に、風は瞳を丸くしながら横になっているマーモンを見つめた。

今、なんて…。

『おい、どうした』

「…いえ、なにも」

スマホからこちらを伺うヴェルデの声にハッとして返事をする。

「マーモンが眠ったらそちらに伺います
その時にはまた連絡を」

『あぁ、そうしてくれ
しかし、やはり副作用が出たか…』

「こればかりは仕方がありません、マーモンから聞いていましたが試作段階だったのでしょう?よくその状態で手渡せましたね」

『治験というのはそういうものだ
解熱剤とその他必要そうなものは揃えておく
マーモンの状態はどうだ?』

「熱だけのようです
私が気付くまで、本人の自覚症状はなかったみたいで」

『…わかった、その状態ならば薬の報告はまた後日聞くとしよう』

「えぇ、そうしてください
では後ほど」

通話の終了ボタンを押し、スマホをテーブルに置くとマーモンの様子を見ようと顔をのぞき込む。

「マーモン、調子はどうですか?」

声をかけてみるも返事はなく、瞳を閉じている。
身体を揺すってみるも反応はなく、小さく寝息を立てていた。

「…眠ってしまったようですね」

とりあえず息をしていることを確認し安堵の息を漏らす。
マーモンの身体に手を伸ばして静かに抱き抱えるとそのまま寝室へと向かい、ベッドに身体を下ろした。

今日、リボーンの任務での付き添いがありましたからね…なにがあったのか詳細はわかりませんが、いつもとは違う任務内容の為に疲れが出たのでしょう。
それに、今は熱もありますし…。

額に触れてみると熱さが手から伝わってくる。
額から頬へと手を移動させると、くすぐったさからなのか"ん"と小さく声を漏らすマーモンを見て自然と頬が緩んでしまう。

無事とは、言えませんでしたが帰ってきてくれてよかった。


"安心しろよ、今日2回目のキスだからな"


「…」

不意にリボーンの言葉が脳裏を過ぎる。

2回目…任務中になにかしらのアクシデントがあって、流れで…というのはあるかもしれません。
いや、許すことは出来ませんが。

しかし、帰宅してからのあのキスの光景は…。

「…マーモン」

風は眠っているマーモンの顔をジッと見つめた後、顔を近付けてコツンと額を合わせる。










あの光景は…。










「…しばらく、忘れることは出来なさそうです」










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