お前に捧げる俺の(  )


「…やばいな」

洗面所にやってきたマーモンは着替えをしながらポツリと呟いた。

風の奴、大丈夫かな。
僕が思った以上に、いつもよりも動揺しているんだけど。
まぁ、僕が男じゃなくて女になってるんだ。
しかも、その状態で簡易的な処置をさせているわけだし無理もないのかもしれない。
あいつの前では平静を装ってはいるものの、正直僕もめちゃくちゃ恥ずかしい。
だけど、だからといって傷の処置が出来ないのは困る。リボーンが言ったように、バイ菌が入って悪化したら大変だし。

ズボンを履き、上に脱ぎやすいようにシャツを羽織ったマーモンは深く息を吐いた後に洗面所から出て部屋へと戻る。

あとは包帯を巻いてもらうだけだ。それだけ。
特にやましい事とかはないんだから、すぐに終わらせてもらおう。

「風、お待たせ…」

風の元へと歩きながら声を掛けると、風は未だに四つん這いの状態になったまま。

「…大丈夫?」

「…大丈夫です、マーモンの方は準備はできましたか?」

「準備もなにも着替えるだけだったし」

「…なら、やってしまいましょう
貴方もお疲れのようですし」

意を決したように風は立ち上がり、包帯を手にしてマーモンが座るのを待つ。

「まぁ、うん…今度こそ頼んだよ」

本当に大丈夫かな…こいつ。

不安な気持ちを残しながら、マーモンはソファーに風に背中を向けるように座ってシャツを脱いだ。
すると、背後から"失礼しますね"と声がかかり、風が背後から腕を回して包帯を巻こうとする。

「マーモン、ガーゼだけ最初押さえてもらってもいいですか?」
 
「あぁ…こうでいいかい?」

風から手渡されたガーゼを傷口に宛てがいながら確認をすると、風がそのまま包帯を丁寧に巻いていく。
素肌と包帯が触れ、少しくすぐったさを覚えてマーモンはもぞっと少し身体を動かした。

「すいません、何処か触ってしまいましたか?」

「いや、大丈夫だよ…少しくすぐったくて」

「あと少しですので、我慢してくださいね」

風は少し包帯が巻きづらいのかマーモンに少し身体を寄せて耳元で囁き、それにマーモンはピクッと身体を跳ねさせる。

「…あの、風」

「はい?どうしました?」

チラリと顔を少し振り向かせながら風の名前を呼ぶと、風の顔が間近にありマーモンは驚いて身体を強張らせる。

「…大丈夫ですよ、手を出したりしませんから」

「むむッ」

その様子を察した風は微笑みながら優しく声をかけ、そのままマーモンの頬に自分の頬を擦り寄らせ、風は"ん?"と少し不思議そうな表情を浮かべた。

「別に怖がったりとかじゃ」

「…はい、終わりましたよ」

風に気を取られている間に包帯を巻き終えていたのか風はポンッと軽く背中に触れる。

「あれ、いつの間に…」

「貴方が私の顔を見ている間にです
私の顔、なにかついていましたか?」

「そういうんじゃなくて…ちょっと」

「?」

「…いや、なにもない」

風の顔をジッと見つめていたマーモンだったが、フイッと風から顔を逸らし、先程脱いだシャツに腕を通した。

…風の顔、いつも近くで見ているのに少しドキッとしてしまった。
これも異性になっていることが原因なのか?

「マーモン、少しいいですか?」

「ん?今度は何さ」

シャツのボタンを止め終えたマーモンが振り返ると、風が"失礼します"と顔を近づけて自分の額とマーモンの額をコツンと合わせて瞳を伏せた。

ち…っか…。

「…やはり」

風はポツリと呟き瞳を開けると目が合い、マーモンはボンッと顔に熱が集まり真っ赤になる。

「あの、えと風」

風の両手が自分の頬を包み込み、マーモンは少し慌てたように名前を呼んだ後、ギュッと瞳を閉じた。

「マーモン、貴方…」










「熱、ありますよ?」

「…え…熱…?」










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