お前に捧げる俺の(  )


「すまないね、流石にこの姿を医者や他の幹部に見せるのは気が引けるから」

「…いえ、私としては貴方の力になれるので嬉しいです…嬉しいのですが…」

部屋にある簡易的な救急セットをテーブルに置いて中から消毒液やコットンを用意するマーモンを見ながら風は複雑そうな表情をした。

この状況、本来ならば喜んでお手伝いをする場面。
しかし…。

チラリとマーモンを見た後に、スッと胸元へと視線を移す。
着替えがまだ済んでおらず、切り裂かれた胸元から胸が見えてしまい、風はサッと顔をそらした。

男性の姿ならまだしも、異性の姿となると話が変わる。
別に女性慣れをしていない、というわけではありませんが…好意を持っている相手となると…。
しかし、いつもなら羞恥心で裸なんて見せないマーモンがこのように積極的な姿を見せるのはそれはそれで興奮…コホン、私に心を開いてくださっているので嬉しい。ましてや、私を頼ってくれている。

それに答えなければ男が廃るというもの…。

「風、準備できたんだけど出来そうかい?」

「…はい、大丈夫ですよ」

マーモンからの声かけに風は返事をしながらマーモンへと身体を向ける。

大丈夫です、これは手当て…そう、手当てなのですから。
やましい気持ちを持つ方がおかしいし、私を頼ってくださっているマーモンに失礼というもの。
淡々と手当てをすればいいだけのことです。

ピンセットで掴んだコットンに消毒液を染み込ませながら自分自身に言い聞かせた。

「それでは、やりますよ」

「あぁ、頼むよ…これで大丈夫かい?」

そう言いながら切り裂かれた部分をぺらりとめくり、風がやりやすいかを風に問いかけるマーモン。

「…はい、大丈夫です。
ですがマーモン、少し胸を隠していただけるとやりやすいかなぁと」

「隠したら隠したでやりづらいだろう?」

「それはまぁ、そうですが…」

「ほら、早く腹くくって消毒して
僕も疲れたから早く休みたいし」

「…き、極力触らないようにしますから」

「はいはい」

軽くあしらうマーモンを見ながら震える手で消毒液が染み込んだコットンをピンセットで挟み、優しく切り傷に触れる。

「ん…冷た」

「こればかりは仕方ありません、我慢してください」

無に…無になるのです風…これは治療、治療なのですから…。

冷たさに声を漏らすマーモンを無表情で見ながら傷全体に消毒液を塗り、塗り終えた風は小さく息を吐いた。

「…はい、終わりました
包帯は…」

「もう出血は止まっているけれど…念の為しようか
ガーゼはあるから巻いてくれる?」

「…仰せのままに」

一段落をついたところで更なる要求があり、風は脳内で葛藤を続ける。
マーモンは特に気にした様子はないのか、救急箱から包帯とガーゼを新たに取り出した。

「それじゃ、これお願…」

そこまで言いかけるとマーモンはハッとした表情を浮かべて包帯とガーゼを手にしたまま動きを止めてしまう。

「どうしましたか?」

「…いや…よくよく考えると…包帯を巻くのには服が邪魔なわけで」

「えぇ、まぁ…傷口からしてそうですね
胸全体を覆う形になるかと…」

そこまで言うと風はマーモンが言わんとしていることに気付いた。

そうだ、今はギリギリ服で胸が隠れている状態だから消毒はなんとか出来た。










しかし、包帯を巻くとなると…服は邪魔になるわけで…。










「…やっぱり、止めておこうか
ここまで頼んでおいてなんだけれど、流石にそれは」

「…いえ、大丈夫です」

手に持っていた包帯とガーゼを救急箱の中へと戻そうとするマーモンの手首を掴みながら阻止をし、風は"フゥ"と息を吐いた。










「最愛なる貴方が困っているのです、包帯を巻くくらいどうということはありません」

「…鼻血止めてからそういう事は言ってくれる?」










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