お前に捧げる俺の( )
「とりあえず任務お疲れさまでしたお二人とも」
「…」
マーモンの部屋へと向かった3人。
リボーンは椅子に腰かけ、マーモンはソファーへと腰かけている風に後ろから抱き締められていた。
「なんなの、この状況」
「おい、風
なんでお前はマーモンを抱っこしてんだよ」
「え、貴方から守るためですよ」
「なにもしやしねーよ」
「アジトの前で先程マーモンにキスをしたのはどこの誰でしたっけ?」
「安心しろよ、今日2回目のキスだからな」
「はい?」
あぁ、こいつはまた一言余計なことを…。
リボーンの発言に風の表情がピクリと反応を、マーモンはめんどくさそうにため息をついた。
「リボーンやめて、めんどくさいことになる」
「もうなってんだろが、隠す必要なんてねぇよ」
「それはそうだけど」
チラリと顔を風へと向けると、風は笑顔のままだがどこか不機嫌なオーラを出している。
「それに、お前ら付き合ってないんだからいいんじゃねーか」
「ムム、それはまぁ...」
「なんだ、マーモン
いつもだったら断言するのに今日は煮え切らない態度じゃねぇか」
ジッとマーモンの瞳を見つめながらリボーンはニヤリと口角をあげて笑みを浮かべる。
「それとも...風に知られてまずいことでもあるのか?ここの事、とか」
リボーンは自分の胸あたりを指でトントンッと指差しながら言うとマーモンはカァッと頬を赤らめて風の上から退き、リボーンの元へと行けば背中を押し始める。
「お前は、もう出てけよ」
「へーへー、なら今日のところは帰ってやるよ」
「あ、そうだジャケット…」
「ジャケットは今度会う時にでも返してくれればいい」
すんなりと受け入れて椅子から立ち上がるとリボーンは部屋の扉へと歩いていく。
マーモンはその後を追いかけながら着せてもらったジャケットの事を言うとリボーンはチラリと見た後にそう言った。
「じゃあな、ちゃんと後で胸の傷みせとけよ」
「わかったって、ジャケットはクリーニングかけてから返すから
それじゃ、気をつけて帰りなよ」
リボーンはマーモンの部屋から出ていき、パタンと扉が閉められた。
…さてと、今度はこいつの相手だ。
静かになった部屋の中。
マーモンは小さく息を吐くと先程リボーンが座っていた椅子に腰かけた。
二人のやりとりを見ていた風はなにも言わずにジッとマーモンを見つめている。
き、気まずい...。
「...約束のお菓子、食べますか?
もう夜中ですけど」
「え、あ...食べる…けど、少し待っててくれる?
ドレスから着替えるからさ」
しばらく沈黙が続いた後に風が立ち上がりマーモンへと問いかける。
いきなり話しかけられ驚きながらも頷くもふと自分がまだドレスのままなことを思い出したマーモンはジャケットで胸を隠しながら立ち上がりクローゼットへと近付いた。
「あ、そうだ風…君に謝らないといけないことが」
風が買ってきてくれた今着ているドレス。
そのドレスが切り裂かれてしまったことに負い目を感じているマーモンは振り返りながら風に謝罪の言葉を口にしようとした。
すると、いつの間にか自分の背後に立っていた風の姿にマーモンは驚きのあまり固まってしまう。
「び…っくりした…驚かせないでよ」
そう声を掛けるも、風はマーモンの事をジッと悲しげな表情で見つめたたま口を開こうとしない。
「ねぇ、風」
「…すいません」
「え…っと…」
風の顔を覗き込みながら再度声を掛けると、風の口からなぜか謝罪の言葉が先に出されてしまい呆然としていると、風の両手が差し出されそのままマーモンの事を優しく抱きしめた。
「…」
あぁ、またか…。
「…ただいま、風
心配かけてしまったね」
時々起こるこの現象にマーモンは慣れてしまったのか、風の背中に自分の手を回して抱きしめ返しながらあやすような口調で言う。
「別に心配というほどは…」
「ただでさえ、リボーンと2人きりになるのを嫌がってたんだ
君は心配するに決まってるだろう?」
「…はい…それに…」
「?」
風は言うのをためらっているのか唇をキュッと噛み締めた後にゆっくりと口を開く。
「…リボーンとのキスについて…事細かく聞きたいところですが」
「事細かくって…まぁ、見ての通りだよ
ただ不意打ちでされた、それだけさ
僕も避けられればよかったんだけど、あの行動は予想外だったから」
「リボーンは2回目とも言っていましたが」
「…」
珍しくジトリとした目つきの風にマーモンは吹き出してしまいそうになるもなんとか堪えた。
「それは、ちょっと任務中に他の男に迫られてしまって
それをどうにかするための苦肉の策というか…いや、その時はしてなかったから…結局は僕の油断、ということになるのか?」
"うーん"と唸りながらぶつぶつと呟いて考える。
しかし、考えがまとまらずマーモンは"あ"と話の内容を変えるように声を漏らした。
「風、ごめん
ちょっと胸から出血しているからあまり僕に抱きつかないでくれるかい?
君の服が汚れてしまうから」
「…傷…というのは先程リボーンが言っていたものですか?
なぜ先に話してくださらなかったのですか!」
自分に傷がついていることに気付くやいなや、風は先程の雰囲気とは打って変わり勢いよく顔を上げるとリボーンのジャケットに手をかけてめくった。
出血はほとんどもう出ておらず、表面の血液が軽く固まっており風の口から安堵の息が漏れ出る。
「いや、君がだって僕の事を抱きしめていたからであって」
「あまり深くはないようですね…よかった…よか…」
「…風?」
そこでふと風はジャケットをめくったと同時に切り裂かれてしまったドレスの合間から見えるマーモンの胸を凝視してしまい、カァァッと顔を赤くしてサッとジャケットで胸を覆い隠した。
「す、すいません…まだ女性の姿でしたね…」
「え?あぁ、まぁ…って、薬飲んだ時に一度見てるんだからそこまで気にしなくてもいいだろう?」
「君も、案外初で愛らしいところがあるんだね」
いつもの余裕そうな表情とは違い、新たな一面を見つけたマーモンはにやにやとしながら風へと背中を向けてジャケットを脱ぎ始める。
「もう、からかわないでください」
「いつも君に言われたい放題されてるから、おあいこさ
…あぁ、そうだった
君からせっかくもらったドレス、大切に出来なくて悪かったね」
切り裂かれた胸元をそっと指でなぞりながらマーモンは申し訳なさそうに言う。
その言葉に風はチラリとマーモンを見た後にすぐに視線をそらした。
「…別に気にしなくていいですよ、任務で使う物だと想定していましたし
貴方が無事に帰ってきてくださったことのほうが嬉しいですから」
「…ふふ、よく言うよ」
「?!」
ドレスを着たままマーモンはくるりと回り風に身体を向けると顔をソッと覗き込んでジッと見上げた。
視界に入ってくるマーモンと胸元に風は驚いた表情を浮かべる。
「君、以前僕に言っていたじゃないか
"着せたい服=脱がせたい服"だとね
それってつまり…君はこのドレスを、君の手で脱がせたかった…ということだろう?」
「ッ…それは…」
「…ふふ、たまには君のそういうところを見るのもまた一興だね
さて、そんな君にお願い事があるんだけどいいかい?」
「お願い事…ですか?」
「あぁ、一つだけお願い」
「消毒、手伝ってくれる?」
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