お前に捧げる俺の( )
「...」
どういうことだろうか。
マーモンは今自分の置かれている状況が理解できずに頭の中で考える。
リボーンと離れて僕は料理が並んでいるテーブルにケーキ類も置かれているのを発見してそれを取って隅っこのほうで食べていた。
そこまではよかったんだ、そこまでは。
それなのに...。
いつの間にか僕の回りに男が群がってるんだけど...。
チラリと自分の回りを見渡すと数人の男性達がマーモンへと話しかけてきている。
「あ、あの...」
「貴方はどちらのマフィア関係の方ですか?見たことがありませんが」
「よかったら、俺と一緒に回りませんか?」
「先ほどまで一緒にいた方は?はぐれてしまったのなら僕と」
なんなんだ、こいつら本当に!
自分の声も聞かずに質問ばかり投げ掛けてくる男性達に苛立ちを覚え始める。
こいつら、自分の同伴者はどうしたんだ?
僕の方に来るって事は、もしや招待客ではなくここのファミリーの関係者って可能性も…。
いやだからといって、自分の職務を全うせずに来客に職務と関係のないことを話しかけるのはどうなんだ?
…ケーキもゆっくり食べれないしどうしたものか...いっそのこと、幻術で...。
"幻術は使うな、バレたらめんどうだからな"
「…」
そう思うもリボーンの言葉を思い出して思いとどまる。
確か術士が数名いるって言ってたよな。
僕と同等か、それ以上の術士でない限りばれることはない。
ないけれど、下手に使ってリボーンの邪魔をするよりかは自分の力でなんとかするしかないか。
だけど、こういう時どうすればいいんだろうか...こういう事にになったことがないしなぁ...。
とりあえずトイレに隠れようかな、トイレ。
「あの...ごめんなさい」
マーモンは恥ずかしげな表情を浮かべて目を伏せ、口元に手をあてながら言いづらそうに口を開く。
「ぼ...私...お手洗いに...行きたいのですが...」
その様子に周りの男性達はピタリと動きを止める。
これならさすがにこいつらも解放をしてー...。
「それでは、失礼し」
「それなら俺が付き添います!」
「いえ、私がご案内します!」
「ぼ、僕が!」
「は...え?」
間を縫ってこの場から逃げようとするも、それを遮るかのように男達が前へと出てきた。
思ってたのと…違う!!!
自分が思っていた反応とは裏腹に熱さを増す男性達に若干引いていると、自分の目の前にスッと見覚えのあるスーツ姿が男性とマーモンの間へと割って入る。
「わりぃ、待たせたな」
「リ、リボーン...」
リボーンは顔をチラリとこちらに向けた後に男性達をギロリと睨み付ける。すると、男性達はビクッと身体を震わせながらリボーンとマーモンから距離をとった。
「すまねぇが…」
睨み付けるのをやめにこりと優しげな笑みへと変えながらマーモンの肩を抱く。
リボーンは被っていた帽子を取ると、マーモンへと顔を近づけて帽子で顔を隠した。
明らかにキスをしているような光景に男性達は目を丸くしてその様子を見続けた。
「...こいつは俺の妻なんでね、これ以上ちょっかいかけるのはやめてもらおうか」
顔を離して帽子を被り直したリボーンはマーモンの肩を抱いてぐっと引き寄せながらそう言うと、男性達はそそくさと二人から離れていった。
「…ったく、油断も隙もあったもんじゃねぇな
マーモン、大丈夫か?」
「あぁ、手間取らせてすまないね」
男達が離れていくのを見たマーモンは肩に置かれたリボーンの手を払い除けながら距離を取る。
「まさか僕に男が群がってくるとは思わなくて」
「お前みたいな寸胴スタイルが好みの男もこの世にはいるんだよ
それにしても、よくさっきの怒らなかったな」
「さっきの?」
「ほら、俺がお前に顔を近付けたやつ」
「あぁ…」
リボーンは先程の自分の行動を思い返しながら伝え、マーモンはふとリボーンから視線を外した。
「…だって実際キスされたわけでもないし
それにその時はそれが一番効果的だと判断した行動だろう?
怒る理由がないさ」
「…はッ」
至って冷静なマーモンを見てリボーンは思わず吹き出してしまう。
「なんだよ」
「いや、わりぃ
お前そんな風に油断してるとこんな感じで食われんぞ?」
「...?なにを言って...んぐっ」
リボーンの言葉の意味がわからずに眉間にシワを寄せていると突然顔がアップになり、自分の唇に柔らかな感触を感じる。
ぱちぱちと瞬きをし、リボーンにキスをされていることに気付くとリボーンはスッと顔を離して妖しげな笑みを浮かべた。
「...わかったならあんまり隙見せんなよな、俺にも...風にも」
「...」
「おい、お前聞いてんのか?
もしかして、」
「...ッ...あぁ、ごめん」
反応がないマーモンの顔の前で手を振っているとハッとした表情を浮かべながらリボーンに顔を向ける。
「不意討ち過ぎて固まってしまったよ」
「おっまえ...隙見せんなって言ったすぐそばから見せてんなよ」
「とりあえず慰謝料として追加で振り込んでね」
「そうきたか...少し位は取り乱せよお前」
「取り乱してはないけど驚きはしたよ
悪いけど、少し外の風に当たってくる」
ふらりとリボーンへと背中を向けながら数歩歩き出すとパシッと腕を掴まれてマーモンは一度歩みを止める。
「なにさ」
「なら俺も行く
また他の男共にちょっかい出されたくねーだろ?
それに、今のお前を一人にしておくのはあぶねーからな」
リボーンはマーモンの横へとつくとそっと肩を抱きながら歩き出した。
「危ない...?」
「そうだ、まぁ人がいないところで話してやる」
「なら外に行く前にトイレ、行きたいんだけどいいかい?
飲み物飲み過ぎちゃって」
「そうか、なら一緒に中に」
「...今、僕女の子だよ?女子トイレにまで入ってくるつもりかい?」
マーモンは怪訝そうな表情を浮かべ、その言葉にマーモンの今の性別を思い出したリボーンは気まずそうに肩から手を離した。
「あー...確かにな
わかった、なら先にテラスで待ってるからすぐに来いよ?」
そう言うとリボーンはテラスの方向へ歩いていく。
マーモンはその背中を見送った後にトイレへと向かっていった。
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