気付いた時には此処にいて


「やはり、腫れていますね」

旅館に戻り、自分達の部屋へと案内をされた2人。
マーモンは椅子に腰掛け足袋を脱ぐと、風はマーモンが痛みを訴えていた右足に触れる。
少し赤みを増し、腫れてしまっている足に氷の入った袋をタオル越しにあてた。

「痛みますか?」

「まぁ、少しね…でもさっきよりはましかも
ありがとう」

「いえ、このくらいなんともないですよ
それより、これだけ腫れているとなると相当我慢していたのでは?」

「う…」

ジトリとした目つきで見られマーモンは言葉を詰まらせる。

「それに、私が来るまで待たずに無理に動いたようですし」

「それは…」

「…沢田綱吉達に見られたくなかったからですか?」

「え?」

不意を突かれた風の言葉に驚いていると、"やはりそうですか"と風は息を漏らした。

「貴方が姿を消してから偶然会いましたね
まさかとは思いましたが…」

「…流石に、君といるところを見られるのはちょっとね
沢田綱吉からリボーンに伝わりでもしたら、なんて冷やかされるか分かったものじゃない」

「貴方の気持ちはわかります
しかしですね、だからと言って痛めている足を無理に動かし悪化させるのはどうかと思いますよ?
それに、他にもやりようはあったでしょう
幻術を使って姿を変えるとか」

「それも最初は考えたさ
だけど、休暇中はなるべく幻術を使わないって決めているからね」

「その割に、先ほど男性達に絡まれていた時は容赦なく使おうとしていましたよね
私が来なければ今頃、彼等はどうなっていた事か……」

「それはご想像にお任せするよ
だって彼奴等、僕の事"お姉さん"とか言ってくるし変な顔で見てくるし…そもそも、僕は女性じゃないのになんで間違えられたんだか」

「あぁ、それは貴方が着ている着物が女性物だからでは?」

「…はい?」

「あれ、言っていませんでしたか?
貴方に着て欲しい柄が男物だとなかなか見つからなくて…
体型的にも、貴方の場合支障がないので女性物を着付けたんです
ふふ、我ながらいいセンスをしていると思うのですが…どうですか?」

「…」

風の言葉にマーモンは自分の着物と風の着物を交互に見てみる。
風の言う通り、よく見てみると作りが違う。

「…君のせいじゃないか」

「まあまあ、いいじゃないですか
それよりも、腕の方少し見させてください
先ほど掴まれていた所が気になりますので」

ふくれっ面のマーモンをなだめながら風は手を差し出して腕を見せるように促した。
マーモンは渋々掴まれていた右腕を差し出すと、ゆっくりと袖を捲られていく。

「…あぁ、やはり」

うっすらと赤みのある箇所を見つけ、風の表情は険しくなる。

「けっこう強かったからね
まぁ、足に比べたら大した痛みじゃ」

「…」

ぺろ。

「ッ!」

スッと腕に顔を近づけた風だったが、いきなりその箇所に舌を這わせ舐め上げるのを見てマーモンは瞳を見開いた。

「え、な、なにしてんの君?!」

バッと勢いよく風の手から腕を離すマーモン。 
それとは裏腹に風はきょとんとした表情を浮かべている。

「いえ、消毒をと思いまして」

「消毒?!
消毒になるわけないだろう、馬鹿じゃないの!」

「こちらも冷しておけば大丈夫ですね
フロントで追加の氷、もらってきますね」

「おい、話を聞け」

何事もなかったように風は立ち上がり、一声かけて部屋から出ていってしまった。
その背中を見送ったマーモンは、先ほど風邪に舐められた箇所を見つめだんだんと顔を赤くしていく。










「…消毒って、なんだよ…」










「…」

やってしまった…。

部屋から出てフロントに向かう為廊下を歩いていた風は、先ほど自分がマーモンにしてしまった事を思い出して歩みを止めた。

マーモンの肌が白く、見た目よりももちもちとした感触に、美味しそうに見えてしまって思わず口が動いてしまった…。
朝に食べた御雑煮のせいでしょうか。

"うーん"と首を傾げ唸りながら止まっていた歩みを進めだす。

しかし、マーモンを困らせてしまいましたかね。
仕方がないと言えば仕方がないですが。いきなり腕を滑られたんですもの。










"え、な、なにしてんの君?!"










「…ふふッ」

風は表情を緩め、歩く速度を速めた。

早く、マーモンの元へと戻りましょうか。










.
8/8ページ
スキ