気付いた時には此処にいて


「はぁ…君ね…人前でなんて事してくれたのさ…」

マーモンは人混みから離れたところで息を切らしながら言う。

「すいません、つい貴方への思いが溢れてしまいまして」

「だからと言って、あんな人がいる前で大きな声出さなくてもいいだろう?
そのせいで、公開プロポーズしたみたいな感じになって周りからすごい拍手されちゃったし」

先ほど、風の発言の後に周りから暖かな目で拍手をされてしまいマーモンはその人混みから逃れるように風の手を掴んで移動をし今に至る。
光景を思い出したマーモンからは深い溜息が漏れ出た。

「え、お嫁さんになってくださるのですか?」

「そんなわけない、まったく
ほら、お参り終わったんだからチョコバナナを」

ズキッ。

「ッ」

パァァと表情を明るくする風にきっぱりと否定をしマーモンは歩き出そうとした。
しかし、ふと足に痛みが走り表情を歪めた。
痛みのする右足に目をやると、履いている足袋の上からには特に異常は見られない。

たぶん、慣れない草履で変な歩き方しちゃったかな…こういうのとは縁が無いし。
まぁ、後は屋台を見たら旅館に戻るだけだろう。
そんなに時間はかからないからこのまま行くか。

「どうしました?」

マーモンが途中で言葉を発するのをやめたのが気になり風は隣に並びながら問いかける。

「いや、なにも」

バレたら抱きかかえられてそのまま運ばれるだろうから…また変に目立つのも嫌だし、このまま黙っていよう。

「ほら早く屋台行こ、売り切れちゃう」

「売り切れだなんて大袈裟な…そんなに急がなくても無くなりませんって」

マーモンの口ぶりに風はおかしそうに笑い、マーモンの手を握りしめながら人混みを歩き出した。

「チョコバナナ以外にもたくさんありますね、甘い物」

「そうだね、クレープに鈴カステラ、りんご飴…」

「ふふッ」

たくさんの種類の屋台に目を輝かせながらマーモンはきょろきょろと周りを見渡した。
その様子が、小さな子どものようで可愛らしく風は小さくほほ笑んだ。

「風、あった」

少し歩くとチョコバナナの屋台を見つけたマーモンが握られている手をクンッと引っ張り、空いている片手で屋台を指差した。

「私、買ってきますね
マーモンも一緒に来ますか?
飾り付けされているクッキーの種類も様々なようですし」

「いや、僕は屋台の隣で待ってるよ
君の好みでお願い」

「それは責任重要ですね…では、少し待っててください」

ソソッとマーモンが屋台の隅に移動をするのを見送った風は屋台の列へと並び始めた。
マーモンは少し待ち遠しそうにそわそわとしながら人混みを眺める。

友達、恋人、家族。
色んな人達が来てるな…よくもまぁ、こんなに混んでいるのに来る気になれるよね。
ジャッポーネはこういうイベントとか好きなのかな。

「10代目!人たくさんいるんで気をつけてください」

「ムムッ」

ふと聞き覚えのある声が聞こえ、マーモンはその声の方向へと顔を向けた。

「こんなに人いるなんて…」

「皆暇なんすね」

「あはは、俺達も言えないけど…」

「離れないように気をつけないとな
なんなら皆で手繋ぐか?」

「流石にそれは恥ずかしいかな」

「…あいつら」

沢田綱吉、獄寺隼人、山本武じゃないか…。
まさかあいつらがいるとは…彼らが住んでいる地域から近いし仕方がないか。
しかし、困ったな。
風と一緒にいるところを見られたら変な誤解を生みかねない。
そこからリボーンに話がいったりしたら…面倒なことになりそうだ…。

風の方へと見てみると、結構並んでおり時間がまだまだかかりそう。

…僕の存在に気付いていない今が逃げ時か。
風はまだ時間かかりそうだし、バレる前に距離をとろう。
それで、彼らが通り過ぎたらすぐに戻ればいいだろうし。

マーモンは気配を消しながら屋台の所から少し離れ、道を逸れて木の陰へと隠れた。

「いてて…」

忘れかけていた足の痛みを思い出し表情が歪む。

さっきよりも痛みが強くなってる。
あまり遠くに行くのは厳しいかも。
ここで少しの間、大人しく待ってるか。

木に寄りかかり、右足をかばうように左に体重をかけると少し痛みがマシになった気がした。

なんで僕が気を使わないといけないんだ。
まったく…面倒ったらありゃしない。

陰から先ほど綱吉達がいたところを見てみると、先に進んだのか姿が見えなくなっている。

「…行ったか」

姿が見えないことを確認したマーモンはホッと安堵の息を漏らして木陰から姿を現し、先ほどの屋台の場所へと戻ろうとした…が。

「…あれ…」










さっきの場所、どこだっけ…。










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