気付いた時には此処にいて


「ようやく着きましたね」

お参りに並び始めて数分後。
やっと自分達の番になり、賽銭箱の前へと2人は並んだ。

「そうだね、さっさと済まそう
人もだいぶ混んでいるし」

「はい、マーモン」

「ム?」

風はスッとマーモンの手になにかひんやりとしたものを握らせる。
その手をマーモンがゆっくりと開くと、5円玉がそこにあった。

「5円玉…」

「"御縁がありますように"と願いを込めまして
まぁ、貴方にはもう私という縁がありますから必要ないかもしれませんが」

「はいはい」

賽銭箱へと5円玉を投げると"チャリン"と音を立てながら中へと入っていった。
マーモンのその様子を見届けた風も自分の手に握られた5円玉を賽銭箱に投げる。
2人は自分の両手を合わせて瞳を閉じた。

別に、お願い事とかないんだけどな…。

事前にお願い事を考えていなかったせいか、マーモンは考え込んだ。

強いて言えば、お金が欲しいけどそれを頼んだら罰当たりに感じる。
…今年1年、何事もなく任務を遂行できるように?
それとも、ヴァリアーの皆の安全祈願?

「…うむむ」

なにかいいお願い事は…。
そういえば、風はどんなお願い事してるんだろう。
こいつの場合、容易に想像は出来てしまうけど。

そこでマーモンはチラリと風に視線を向けた。
風は瞳を閉じ、両手を合わせたままジッとしておりまだお願いをしているようだった。










…お願い…。

僕のお願い…は…。










「…マーモン、お願いできましたか?」

「…うん、行こうか」

風が終わったのかマーモンへと声をかけてくる。
マーモンはふと閉じていた瞳を開け、くるりと背中を向けると賽銭箱から離れた。

「随分と長い時間お願いしていましたね
なにをお願いしていたのです?」

「そういう君も長かったね」

「そりゃ、貴方との今後についてたくさんお願いをしましたからね
貴方とお付き合い出来るよう、結婚出来るよう、そして最終的には…」

そこまで言うと風の表情がだらしなくにやけてしまい、マーモンはそれを見て"うわぁ…"と引いた表情を浮かべて少し距離を取った。。

「君ね…煩悩まみれもいいところだ」

「煩悩まみれですよ、私は
普段は我慢していますが貴方のことになるとどうにも我慢がきかなくなってしまう」

少し空いてしまった距離を埋めるかのように風はマーモンの隣へとぴたりとくっついて歩く。

「おい、近い」

「はぐれてしまわないようにするためですので、ご了承を」

「…チッ」

顔を覗き込みながら小さく笑みを浮かべる風にマーモンは小さく舌打ちをした。

「今度はマーモンの番ですよ
マーモンは、一体なにをお願いしたんですか?」

「…」

「私だけに言わせておいて、貴方は秘密なんてずるいですよ」

「君が勝手に言ったんじゃないか
それに、君知らないのかい?
こういうのって他の人に言うと願い叶わなくなるんだよ」

「?!」

「残念だったね、もしかしたら叶わないかも」

"叶わなくなる"その言葉を聞いた風はガンッとショックを受けたようにかたまってしまい、マーモンはそれを置いてスタスタと先を歩く。

「ッ…それでも私は!」

「ッ?!」

いきなり自分の背後から風の大きな声が聞こえてきて、マーモンは驚いてバッと振り返る。
風の声に周りの人々も何事かと注目を集めていた。

「お、おい風」

あまりに注目をされておりマーモンは恥ずかしさがこみ上げてきて慌てて風へと駆け寄る。
風はバッと顔を上げ、駆け寄ってきたマーモンの両手をギュッと自分の手で包み込んで握りしめた。

「…もし、神様が叶えられなくても」

「ちょっと、風」










「私は、自分の力で貴方をお嫁さんにしてみせます!」










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