気付いた時には此処にいて


「そういえばこの着物、フードついてるんだ…」

ふと自分の頭を覆っているフードの存在に思い出し、マーモンはぽつりと呟いた。

「着物ってフードついてる羽織とかあるんだね」

「昔は無かったと思いますが、最近は洋物を合わせた着方とかありますからね
草履にしてしまいましたが、貴方の場合ブーツの方がよかったですか?」

「そうだね、その方がよかったけど君が選んでくれたものだから気にしなくていい」

「…ふふ、そうですか
ならもし足を痛めてしまった時は言ってください
その時は丁重にお運びいたしますので」

「まぁ、その時はね」

歩きながら話をしているとふとマーモンの視線が屋台へと釘付けになりピタリと動きを止めてしまった。
風は不思議に思いながらその視線の先へと目をやる。

「…あぁ、チョコバナナですか
食べますか?」

「ムム…いや、帰りに食べるよ
君の事だから、どうせ今からお参りするんだろう?
なら、早く行かないと大変じゃないかな、今の混み具合からしてもね」

風の言葉にハッとしたマーモンだったが、自分達の前にずっと続いている人の列を指差すと、風は苦笑を浮かべた。

「確かにそうですね、ならあとでのご褒美にしましょうか」

「ご褒美って…僕子どもじゃないんだけど」

「ふふ、そうでしたね
私の奥さん、ですものね」

「今日はやたらと機嫌がいいね、君
さっきから浮かれた発言ばかりじゃないか」

普段よりもやたらと回る口。
マーモンは風の顔をヒョコッと覗き込んでみる。
すると、マーモンと目が合い風は幸せそうにはにかんだ。

「機嫌もよくなりますよ
貴方と年を越し、年の始めを共に過ごせるのですから」

「…」

「はぁ…今年も良い年になりそうです
マーモンもそう思うでしょう?」

…こいつは、本当にいつもなんで…。

昔からずっと、変わらず愛おしそうに自分を見つめる風。
あまりに一途で、純粋なその瞳…。










僕には…。










「マーモン?」

反応を見せずにジッと自分を見つめ返してくるマーモンに風は名前を呼ぶと、マーモンはフイッと顔をそらして前を見た。

「列、前に進んでるから行こ」

「え?あぁ、そうですね
はぐれないでくださいね、マーモン」

少し進んでいた列に風はマーモンの手を握る力を少し強めた。









あぁ、本当にこいつは…。










「…眩しいな」

「どうしました、マーモン?」

「いや…なにもないよ」










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