貴方に捧げる私の( )
「まぁ、そうですよね…
もう私達は裸の付き合いをした仲ですし、キスをしていないことのほうが不思議ですよね」
「…いやごめん、待って
すごい無意識でやってた」
照れながら言う風とは他所にマーモンは置いたスプーンを見たあとに自分の行動を振り返り自分の顔を両手で覆い隠しながら己の言動を後悔している。
「マーモン」
「…なんだよ…ッ」
風はにこにこしながらマーモンの顔の前で呼びかけると、マーモンは覆っていた手を離して顔を上げる。
すると、マーモンは顔の近さに驚いてビクッと身体を跳ねさせて動きを止めた。
スッとマーモンの顔へと手を伸ばすと、マーモンはギュッと瞳を固く閉じてしまう。
あぁ、またこの子は…。
風はいつもと同じような反応をする様にクスリと、口端についていたクリームをキュッと指で拭った。
指が触れるとマーモンは再び身体を跳ねさせながら恐る恐る瞳を開けた。
「クリーム、ついていますよ」
「うむむ…ごめん、ありがと」
風の指についたクリームと風の顔を交互にみた後、マーモンは自分の袖でごしごしと口を拭う。
「もうついてませんよ?」
「いや、わかってるけど…なんか…」
拭う動きを止め、マーモンはチラリと風の唇を見た後にススッと顔を逸らしてフードを深く被り直す。
被り直す最中、仄かに頬が赤らんでいるのが見えその様子に風は愛おしさを感じた。
「意識、してしまいましたか?」
「…君のそういう意地悪な所嫌いだよ」
「ふふ、甘やかすばかりでは面白くありませんから」
「…ふん」
「…そういえばマーモン
リボーンの任務の付き添いでパーティに出ると言いましたが、ドレスは持っているのですか?」
ふと風は任務当日の服装について気になり聞いてみる。
彼女役、ということですし女性物の服を持っているとは思えませんが…。
「…いきなりなにを言い出すのかと思えば
ドレスはリボーンが用意してくれるって言っていたよ
流石に女性物のドレスなんて今回の1回のみしか着ないだろうし、そのためだけにお金を使うのは癪だからね」
突然の風からの質問にマーモンはリボーンとの会話を思い出しながら言う。
…リボーンが選んだドレスを…マーモンが着る…。
…それは、嫌ですね。
「…マーモン、そのドレスの件ですが私に任せて頂けませんか?」
「ムム?ドレスを任せてって…どういう事さ」
「そのままの意味ですよ、私が選んだドレスを着ていただけませんか?
リボーンとは任務当日まで会わないのでしょう?」
「まぁ…2日後に任務があるからその時に持ってきてもらって着る感じだけど」
「それならば、彼は貴方が女性になっていることを知らないわけですし、男性の貴方の骨格でドレスを選ぶ可能性があります
しかし、今貴方は女性でしょう?
本来の骨格とは違いますから、事前にこちらで用意しておいた方がサイズを間違わずによろしいかと」
「その考えは一理ある…なら今からドレスを買いに行くって事?
今日は流石に休みたいんだけど」
「あ、その点については安心してください
私一人で行きますので」
「え、君一人で行ってどうするのさ
試着とかしないと流石に無理があると思うんだけど」
「先程貴方の姿と触れた感触からサイズは大体把握しましたので」
「…ごめん、なんて?」
「ということで今から調達してきます、善は急げと言いますしね」
風は立ち上がり自分が入ってきた窓の方へと足早に歩いていく。
マーモンは風の発言に困惑しながら風の背中を見ることしか出来ない。
「それではマーモン、また夕方頃に」
「いやそれよりもさっきの…行っちゃった」
窓から出ていってしまった風にマーモンはハッとして窓へと近づいて行き外を見る。
そこにはもう風の姿はおらず、小さく息を吐きながらマーモンは窓を閉めた。
「…あいつ、どんどん発言に気持ち悪さが増しているな」
…というか。
せっかく僕、休みなのに。
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