貴方に捧げる私の(  )


「…手を出されかけていた?
馬鹿なことを言うなよ、彼は女性が好きなんだから僕に手を出すなんてことはあり得ないよ」

風の言葉を聞いたマーモンは"フンッ"と鼻で笑い、風の手を払いのける。

「やはり覚えていないんですね…
私同様、リボーンも貴方のことを一目見て性別を間違えていたではありませんか」

「…」

自分は過去、マーモンを一目見て一目惚れをした。
…が、その時、私は彼を見た目で"女性"だと勘違いをしてしまっていたのだ。
しかし、性別など関係ない私はその後も思いを伝え続けているのですがね。

マーモンに目をやると思い出すかのように顎に手を当てて"ムムムッ"と唸りだしていた。

「…あ」

しばらくすると、マーモンから声が聞こえてくる。
おそらく思い出したのか、口を微かに開けながら風へと顔を向けた。

「思い出しました?」

「あぁ、うん…忘れてた
忘れてた、というよりも君からのストーカー行為の方が印象に残り過ぎていて…」

「おや、それは嬉しいですねぇ
私との思い出の数々を覚えてくれていた、ということですものね」

「君、本当に美談にするのやめてよね…
しかし、そうか…確かにそうだった…
リボーンとの初対面の時にジロジロ見られた後、"術士の愛人は出来た事ないから愛人になれ"みたいな事言われて…それに"男なんだけど"って答えたらそのまま服脱がされそうになったんだっけ」

「そうですよ、"いや、こいつの性別確認するだけだ"って言いながら皆の前でするんですから…あれは興奮…驚きましたね
自分ではない男に脱がされそうになる貴方…ふふ」

「君、もしかしてそういう系とか好き?」

「そういう系、とは?」

「…」

「…」

「…ま、まぁ…とにかく」

風は首を傾げながらマーモンに聞き返すと、2人の間に無言の時間が流れ、数秒後にマーモンはこほんと咳払いをして話を続けた。

「そういう事は過去にはあったけど、今の彼には愛人が4人もいるんだ
僕の事を相手にするとは思えない」

「まぁ、貴方はそう思っていますが」

「ほら、もうこの話はおしまいにしよ
これ以上話をしてもどうせ君は納得しないだろうしね」

話を切り上げるかのようにマーモンは"ぽん"と手を叩いた。

「…そりゃ、納得しませんが」

「…それともなんだい?
たらればの話だけど、もしリボーンが僕に昔のように"愛人になれ"と言ったとして、僕がその言葉になびくと思ってるの?」

風の納得のいっていない言動にマーモンは立ち上がり、冷蔵庫へと向かいながら問いかける。

「それは…思いませんが」

「だろう?現に僕はリボーンの事嫌いだし、それに昔の話なのだから…あ、今日はティラミスだ」

冷蔵庫を開き、風が入れておいたケーキの箱を見つけたマーモンは冷蔵庫から取り出して中身を開くと嬉しそうな声色で言う。
それとは裏腹に、風はまだ難しそうな表情を浮かべていた。

…マーモンがリボーンを嫌っていることは重々承知。
ですが、万が一のこともある。
もし、今の女性の姿のマーモンを見てリボーンが変な気を起こし、自分のいないところで手を出したら…。

「…まったく」

あらゆる事態を想像してしまい、考えにふけっている風を見ながらマーモンはティラミスを皿へと乗せて再びソファーへと座った。

「風」

「…あぁ、すいません…なんです…ッんぐ」

風がマーモンの声にハッとして顔を向けると、微かに開いていた口の中になにやら突っ込んできて風は驚き瞳を丸くする。
パチパチと瞬きを繰り返し、口内に甘さの中に仄かに苦味が広がっていることに気付き、マーモンの手元にあるティラミスを見て自分の口内にあるものがティラミスだと察した。

「美味しい?」

「ん…えぇ、まぁ…」

パッとスプーンからマーモンは手を離すと問いかけてきて、風は離されたスプーンを手に持って口の中から取り出しながら頷いた。

「君ってさ、前から思ってたけど僕の事好きだの信じてるだの言ってる割に、僕の言葉を信じていない節があるよね」

「う…」

"返して"と言われ風はスプーンを返しているとマーモンからそう言われてしまい、苦笑いを浮かべた。

「そんなことは」

「そんなことあるだろう?まったく…案外女々しいんだから」

風から受け取ったスプーンでティラミスをすくい上げ、そのままぱくりとティラミスを口の中へと入れる。
その様子を風はジッと見つめ、マーモンは"んふふ"と美味しさから声を漏らした。

「僕の言葉信じないででもでもだってってさ
君らしくもない」

「…」

「僕の知っている君は、僕の事をずっと一途に想ってくれていて、僕が邪険にしても僕から離れずに自分の気持ちをぶつけてくる奴だ」

「…マーモン」

「だから、君は大人しく僕がリボーンの付き添いから帰ってくるのをここで待っててよ
美味しいお菓子でも用意してさ」

ティラミスを頬張りながら言うその様子に風はフッと口元に笑みを浮かべて瞳を伏せる。

「…えぇ、そうですね…わかりました」

「わかればいいよ、2つぐらい用意してくれるとうれしいかな」

「ところでマーモン」

「ム、なんだい?」

食べ終えたマーモンが皿をテーブルの上に置いた後、風は少し恥ずかしそうに頬を赤らめ、スプーンを指差した。










「まさか貴方が間接キスをしてくれるだなんて…キスでさえまだだと言うのに…」

「え…」










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