貴方に捧げる私の( )
『それで、仕事ってなんなのさ』
ホテルのロビーへと移動をし、空いている椅子に腰掛けながらマーモンは本題に入る。
『一応スクアーロに話は通すんだが、今度俺の任務についてきてほしいんだ』
マーモンの前の椅子に腰掛け、リボーンは帽子を脱ぎ目の前のテーブルへと置いた。
普段帽子で隠れてあまり見ない素顔。
その顔が露わになった途端、遠巻きにリボーンを見ていた女性達の黄色い声が聞こえてくる。
…こいつもこいつで、無駄に顔がいいんだよなぁ。
目立つから帽子被ってほしいんだけど。
『君の任務...ね…沢田綱吉の家庭教師はもうやめたのかい?』
『お前な、俺のもとの職業は殺し屋だぞ?
身体も元に戻ったんでな、本業も少しずつやっていくことにしたんだよ』
『なるほどね、だけどなんでついていく必要があるのかがわからないんだけど』
リボーンなら僕の力なんて借りずとも自分の力のみでこなす事ができるのが容易に想像できる。
それなのに、なぜ頼むにしても他の奴らではなく僕なのか。
そこが疑問だった。
『…それで、仕事の内容は?
ただついていくってわけではないんだろう?』
『いや、その言葉の意味そのままだ』
『…そのまま?』
『お前は手出さなくていいんだ、俺についてきてくれれば
マーモン、お前には俺のパートナー役をしてもらいたい』
『…パートナー?なんのさ』
マーモンはリボーンの言葉の意味がわからずに首を傾げる。
『そのまんまの意味だよ、分かりやすく言えば恋人役だ』
『恋人ねぇ...』
いつの間にかホテルマンに飲み物を頼んでいたのか目の前にグラスに入ったレモネードが差し出される。
マーモンはそれを手にしながら言葉を繰り返すも、自分の発言に違和感を覚えてピタリと動きを止めた。
『は?恋人?』
『反応遅すぎだろ、お前
今度俺のターゲットであるマフィアのボスが開催するパーティーがあるんだ
だけど、そのパーティーがパートナー同伴じゃないとダメみたいでな』
『愛人がいるじゃないか』
『なに言ってんだ、俺の愛人達をそんな危険なところに連れてけるわけねぇだろ?』
『おい、僕はいいのかよ』
『お前は紛いなりにもアルコバレーノで暗殺のプロ集団にいるんだ
そうそうやられりゃしねーよ』
『しかも恋人役って...それならラルの方がいいんじゃない?
君と並んでも絵にはなるし』
『頼んだがコロネロに断固拒否された』
『ああ...そうだったね、あいつら付き合ってるんだもんね
悪いけど、この話はなかったことにしてくれ
なにが好きで君の恋人役なんかを』
任務の内容が内容なだけに、僕がこれを受ける義理はない。
もう少し面白みのある任務なら受けたけど…これは無理。
いくら報酬を積まれたところで、なにが悲しくてリボーンの恋人役をしないといけないんだ。
話を切り上げるようにマーモンは立ち上がりリボーンに背中を向けた。
『報酬はSランクの3倍だ』
『...』
ふと背後から聞こえてきた言葉にマーモンはピタリと動きを止める。その反応に気をよくしたリボーンは口角をあげながら笑みを浮かべた。
『お前はなにもせず俺の隣にいるだけ
それだけで金が手に入るんだ
悪い話ではねぇと思うが?』
『…』
確かにそうだな。
僕はただ、なにもせずにこいつの隣にいてパーティに参加をすればいいだけ。
それだけで、Sランクの報酬3倍が手に入る。
これほど楽な仕事はない。
…しかし…。
"マーモン"
『…いいよ、やる』
『!』
マーモンは踵を返してリボーンの目の前に立って宣言をする。
リボーンは先程一旦断られてることもあり少し驚いたように瞳を見開いた。
『本当か?』
『あぁ、報酬もそのくらい貰えるんならね』
『…そうか、それなら助かる
だが、少し条件があってな』
『条件?』
『恋人役をやるにあたり、今回幻術の使用を控えてもらいてぇんだ』
『…幻術を使うなってこと?』
『簡単に言えばそうだな、あっちにも術士が数名いるんだ
お前の実力はわかっているんだが今回は幻術はなしで頼みてぇ
念には念を入れてな
昨日お前の素顔見てたら案外いけるだろうと思ったし』
幻術無しか…。
顔はまぁ、ルッスーリアからメイクを教えてもらうとして、体格だな…。
身長低いにしても、骨格は少し女性とは異なるし…。
…あいつの力を借りるか。
『なるほどね...まぁ、いいよ』
『案外あっさりだな、ここでごねられるかと思ってた』
『さっきも言ったろう?報酬がいいからねって』
『なるほどな、この金の亡者め』
『その金の亡者に頼み込んできたのは君だからな』
『ははっ、そうだったな』
そこまで話すとリボーンは帽子を頭に被り直して席から立ち上がった。
『他の細かい話はまた連絡する
そろそろ彼奴等の話し合いも終わっただろうし俺は先に帰るわ』
『あぁ、わかったよ
早めに連絡くれる?』
『そうだな、今晩にでも送る
それじゃ、頼んだぞマーモン』
『はいはい、それじゃね』
ヒラリと手を振りながらホテルのロビーから出ていくリボーン。
その背中を見送った後、マーモンはスマホを取り出してあるところに連絡をし始めた。
『あぁ、ヴェルデ
風との話は終わったかい?
…そう、それなら一つ依頼したい事があるんだけど』
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