気になり始めた今日此の頃


「ふふ、嬉しいことを言ってくれますね…マーモン
鍛えた甲斐があるというものです」

「ッ…むむ…君ね…」

上半身裸のまま自分に距離を詰めてくる風を忌々しそうに見上げ、口角が引くつく。

「ぼ…僕が恥ずかしいって言ってるのにこういう事して…意地悪じゃない?」

「そんなことはありませんよ?
貴方が喜ぶと思い、善意でしていることです」

いらない善意過ぎる…ッ!

自分の目の前にある素肌に視線をそらしながら返答をしていると、不意に風がマーモンの腰に手を回して引き寄せられ、そのまま腕の中に収められてしまう。

「ッ…!」

「マーモンが望むのなら、いくらでも抱きしめてあげますよ?」

「そ、ういうわけじゃなくて…!」

「おや?先程おっしゃっていたのはそのように聞こえましたが」

「君、どんな都合のいい耳してるんだよ!」

ばたばたと暴れても、びくともしない風。
自分がどれだけ力を入れたとしても、風は何食わぬ顔で受け止めている。

くそ、こいつの分かっててやる所は本当に…ッ…。
というか、この状況…風…腕…抱かれ…。

風の素肌から感じる高い体温が、自分の冷たい身体に伝わってくる。










あれ…これ…思った以上に…。










「…わ」

「…わ?」

「…あ…っ…わぁぁぁぁぁ!」

「?!」

マーモンは慌てて声を上げると同時に霧となって姿が消えてしまう。
風は声に驚き、マーモンの姿が目の前からいなくなると、姿を捉えようと周りをキョロキョロと見渡した。
しかし、マーモンの姿は部屋から消えており、先程自分が抱いていた場所には霧が少し残っているだけ。
風は"うーん"と困ったように笑いながら自分の頬をかいた。










「少し、からかい過ぎてしまいましたかね…」










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