気になり始めた今日此の頃
「…」
「以前の貴方であれば、私に触れられる度に大きな声を上げていましたから嫌だったのでしょう?
しかし、今はもう嫌がる素振りも見せていない…
ということは、私に心を開いてくれていると言っても過言ではない、そうではないですか?」
嬉しそうに口元を緩ませながら問いかけてくる風。
その言葉を聞いてマーモンは返事をせずにただただ黙り込んだ。
「…君の言う通り、前に比べたら君に触れられるのは嫌ではない…かな
不本意ではないけどね」
少しの沈黙が流れた後、マーモンがぽつりと呟くように口を開く。
「君に心を開いているのか、と言われれば…確かにそうなのかもしれない
そうじゃないと、君に身体を洗ってもらったり、お酒を飲んだ後に介抱してもらったり、添い寝したり…なんて事、頼んだりしないし
いや、そもそも頼む事自体おかしな話なんだけども」
呪いが解かれ、風が自分の元へと通い出してからの日々を思い出す。
ほぼ毎日、僕の好きそうなお菓子を持ってきたりして…なにがそんなに楽しいのか、いつもにこにこしていてさ。
いつの間にか、風が自分の生活の一部になっていた。
「…風」
「はい、なんでしょう?」
「1つ、君に伝えたい事があるんだ」
小さく息を吸い込み、ゆっくりと吐くと意を決したようにマーモンは風を見つめた。
その様子に風は少し姿勢を正し、マーモンのその先の言葉を待つ。
「…風…あのね…」
「…はい」
「僕が君に大人しく抱かれているのは、君の力が強過ぎて振りほどけないからなんだけど」
「…え?」
今自分を抱きしめている風の腕を振り解こうと、自分の腕に力を込めるも風は微動だにしない。
むしろ"今なにかしてます?"みたいな顔をして首を傾げている。
「君、力強いんだよ
たまに抱きしめる力強過ぎて痛かったりするし
「す、すいません…そこまで入れているつもりはないのですが…」
「…今も言ったけど、君に慣れてきたというのは認める
だけど、それと同時に君の力が強すぎて振りほどけなくて諦めていることも覚えておいて」
諦めたように腕の力を抜いてぽふりと風に寄りかかる。
「えぇ、わかりました
力を制御する事に今度から尽力しますね」
そう言いながら風は力を少し弱めたのか腕の力が緩んだことを感じた。
それを感じながらマーモンはチラリと風の腕へと視線を向ける。
「…ねぇ」
「はい、なんで…あ、もしかしてモンブランですか?
すいません、今準備をいたしますので」
「いやまぁ、それもそうなんだけど…」
「…君の腕、見せてくれる?」
「…腕、ですか?」
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