とある科学者と術士の話


『…君の研究に協力するのはわかったよ』

ヴェルデが訪れたその日。
自分もマーモンと同様に呪いの研究をしていること。
その資金が足りないが、自分一人の力ではどうにもならないこと。
その為、一時的に協力関係を築かないかの提案。

話を一通り聞いたマーモンは少し考えた後にその提案に賛同した。

『僕もちょうど、科学者を探していたからね
渡りに船、といったところだ』

『そうか、話が早くて助かる』

『ただ、なぜ君は僕の居場所を知っていたんだい?
仮にも僕は術士で、この姿を晒して活動をしていない
かつ、この部屋は幻術でカモフラージュをしているからバレないはずなんだけど』

『…さて、これから貴様のこの住処の話についてだが』

『おい、聞けよ人の話』










『私のところに来い』










『…え?』

マーモンはヴェルデの突然の言葉に思わずきょとんとしてしまう。

『勘違いをするな、ここの住処を捨てて私のところに住めと言っているんだ』

マーモンの様子を見た後にヴェルデは立ち上がりながら言う。

『私が研究をする事には変わりないが、助手も必要だからな
仕事が無い時は私の助手をしてもらうのに、近くにいないと意味がない』

『それ、僕に休みはあるの?』

『今の生活よりは休めると思うが?』

『…』

確かに、ほぼ不眠不休の今の状態よりはましか。

『それに、貴様のことだ
名前も、過去の自分を捨てた今…この部屋を捨てることにも躊躇はなかろう
そんなに大したものも置いていなさそうだし』

『お前、絶対友達とかいないタイプだろ』

『それはお互い様だ
どうするんだ、来るのか?来ないのか?』

ヴェルデは玄関の扉に手をかけながら振り向いてマーモンの行動を見守った。
マーモンは部屋をしばらく見つめた後に、近くにあったポシェットを手にとってヴェルデの元へと歩いていく。










『行くよ、それしか方法はないからね』

『…そうか、ならばもう行くぞ
一分一秒でも惜しいからな』












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