とある科学者と術士の話
「おい待て、お前そんな昔からマーモンの居場所を知っていたって事か?」
風同様、ヴェルデからマーモンとの過去について聞いていたリボーンはグラスを片手にヴェルデへと詰め寄った。
「あぁ、知っていた
なんなら、あいつが私達の前から姿を消したその瞬間からな」
「…消した瞬間から?どういう意味だ」
ヴェルデはリボーンを一瞥してから口を開く。
「私はお前達1人1人にGPSを仕込み、居場所を把握していた
ただそれだけの事だ」
「そんなの聞いてないぞ」
「言っていないからな
まぁ、安心しろ
今はつけていない」
「…」
それは"前まで"はつけていたってことだよな。
プライバシーもへったくれもありゃしねぇ。
「…それで、なんでお前はマーモンの元に姿を現したんだ
お前、あいつ程ではないが俺達とつるむのは嫌がっていたし、お前もお前で虹の代理戦が起きるまでは姿を見せなかったじゃねぇか」
ワインボトルを片手に持ち空になっているヴェルデのグラスに注ごうとすると、"もう要らん"と手で制された。
「簡単な事だ、あいつは研究に詳しい"科学者"を、私は研究に必要な"資金"
お互いがお互いに欲している物を持っている事が予測出来たからあいつの元へと訪れた
私の計算通り、あいつはたんまりと溜め込んでいてくれたからな
資金は十分に確保することが出来た
そして、あいつも私という最高の科学者を手に入れ研究に正を出すことが出来る
まさに、win-winというやつだ」
「…」
"クククッ"と喉を鳴らしながら悪趣味な笑みを浮かべるヴェルデをリボーンは"うわぁ"と少し引いたような表情になる。
「お前…」
「そんな顔をするな
現に私のおかげでマーモンはおしゃぶりの反応を消すことができる鎖を手にすることができ、お前に一泡吹かせることが出来たんだ
資金は無駄ではなかったさ
まぁ、根本的な呪いを解く方法は分からずじまいだったがな」
話疲れたのか、ヴェルデは"ふぅ"と一息つきながら懐から煙草の箱を取り出して口にくわえた。
「私もあの時、呪いの研究をしていてた
呪い、ということで命のタイムリミットがあるだろうと思い勤しんでいたのだが…
研究には莫大な資金が必要になる
自分で作った機械や薬などを闇ルートで売ってはいたが、そうなると研究が疎かになってしまう
ここはマーモンと同じだった
片方をとれば、もう片方が進まなくなる
どちらも平等にしようとすれば、それこそ自分の体を壊す
そこで、貴様らの中で呪いをいち早く解くために尽力していそう、かつ金の亡者であるマーモンの元へと訪れた、ということだ」
「それならなんで俺達に協力を仰がなかった
全員で協力をすれば資金だって溜まるし研究だって進んだだろ?」
「貴様も先程言ったが、馴れ合うのはごめんだからな
大人数ですれば確かに進みはいい
だが、大人数で行うということはいずれ不満や対立が生まれる
その度に衝突し、絆を確かめ合うなんてもの…私にしてみれば労力の無駄だし反吐が出る
その点も踏まえて協力するのに最適だったのはマーモンだった
奴も奴でそこまで他人と関わるのが得意というわけではないし、自分のやるべき事を淡々とこなす
私としてはこれ以上ないくらい使いやすかった
私の提案にのった、ということはマーモンも同じ考えだったということだろう」
「…そうして、科学者と術士っていう正反対なコンビが結成されたってことか
虹の代理戦時の骸とお前の組み合わせ見た時も驚いたが、相当厄介な組み合わせだな」
「そうだな、そう考えると六道骸とマーモンは通ずるものがあるかもしれない
まぁ、性格は真逆だがな」
「それで、その後はどうしたんだ?」
「…その後…その後か…」
「同棲した」
「…あ?」
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