とある科学者と術士の話


◯◯年前---

『…これは一体…』

『…』

眩い光が体を包み込んだと思った次の瞬間、自分の視点が低くなっていることに気付いた。
目の前にいる風の言葉が耳に入り、自分の両手を見てみると…小さい手の平。

これは、なんだ…なんで…。

恐る恐る目の前の風を見た。
そこには、以前の大人の姿の風の姿はない。
同じ服装、見たことのあるおさげをした赤子の姿。
だが顔はどことなく風のようで、僕はそれが風であることを確信した。
周りを見渡すと、他の奴等も縮んでおり、同じように赤子のような姿になっていた。

『…これは…』

振り絞るように出た自分の声。
どこかうまく話せなくて、拙い。
声も、子どものように高い。

『あ…』









これは、一体…どうなっているんだ…?










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皆の話をまとめても、なにも解決策は見つからなかった。
分かったことといえば、気付いたらこの姿になっていた。
ただ、それだけ。

あと、なぜか知らない奴…コロネロも後をつけてきていたようで、ラルを庇って同様にこの姿に。

集められていた館へと一旦戻ることになり、戻って自分の姿を確認すると…他の奴等同様に、赤子の姿。

『…は…はは…』

現実が受け止めきれず、乾いた笑いが漏れ出る。
自分の姿を映した鏡にぺたりと小さな手の平を押しつけた。

これが、僕?
なんで、こんな姿に?
僕、なにかしたっけ?

なんで…。










なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。










『なんで!!』

バリンッ!と激しい音を立てながら鏡が割れ、パラパラと破片が落ちていく。 
それを、息を切らしながら眺めることしかできない。

こんなの、僕じゃない…。

そうだ、これは僕じゃない、違う誰かだ…。

僕がこんな姿になるわけない。










"バイパー"










『…こんなの…僕じゃない…』

瞳から大粒な涙が溢れ出てくる。
止めようにもどんどんと溢れてきて止めることが出来ない。

この姿では…。

地面に散らばった鏡の破片に映る自分の姿を虚ろな瞳で見下ろす。
どの破片を見ても、赤子の姿しか映らない。

『…!』

『…、…』

先程の鏡が割れる音が聞こえたのか、廊下が騒がしくなり足音が向かってくる音が聞こえてくる。  
その音を聞きながらパキッと音を立てて靴で破片を踏んだ。










『…じゃあね、バイパー』










そう一言呟いて、バイパー…後のマーモンの姿は霧となり、静かに館から姿を消した。










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