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ドドーン、ドドーン―――!!
「敵襲だー――!!」
ウソップの声でサニー号内は一気に戦闘モードだ。
「数はどれくらいだ? ウソップ」
「えーっと、軍艦10隻!!左右に広がってる!!このままじゃ囲まれるぜ」
ウソップの言葉に口角がグッとあがったゾロは、刀に手をかける。
「おーし、野郎共」
船長のルフィも腕を組み笑顔で仲間に呼びかける。
「本当アンタ達、好きよね」
そんなナミの小言はルフィのとびきり大きな一声にかき消される。
「戦闘だァァ!!!」
「「「おおー!!」」」
ルフィの号令に皆が応えた。
【初陣】
「ジン! ユージンを部屋の中に!」
『承知しました』
ナミの言葉にジンが頷く。そしてすぐ側にいるユージンの手を取った。
ユージンは急に手に触れられ、ドキッとする。
「……! あ、ジンくん」
『! 失礼しました。ユージンさん、こちらへ。船室にご案内します』
「あ、うん……」
ユージンは静かに頷く。しかし、その表情には陰りが見えた。
ジンはその様子を不思議に思いながら、ユージンを連れ船室へ向う。
船室の扉に着いたところで、ユージンは立ち止まった。
『ユージンさん? どうしました?』
ジンが首を傾げる。
「ダメかな……?」
『? 何がです?』
ジンは地面を見つめているユージンに尋ねた。
ユージンはこわばっていた肩を、深呼吸で落ち着かせると、思いきって顔を上げた。
「あのさ、ジンくん、僕も一緒に戦ったらダメかな?」
『!』
ジンは驚いた顔でユージンを見る。
ユージンはうっすらと見えるジンの顔から、ジンの感情を読み取り、当然の反応だと感じていた。
「わかっているんだ。戦えもしない僕がこんなことを言うのはおかしいって。
でも、僕も“麦わらの一味“の一人なんだ。僕ばかり隠れていたら、いつまで経っても彼らと肩を並べられない」
『……』
「ごめん、無理をいって……こんなときに」
『いいえ』
「!」
ジンは顔を下げたユージンの頬に触れる。近づいたジンの表情はとても綺麗な笑顔だ。
『無理なことではありませんよ』
「え?」
『本当にやりたいという気持ちのであれば、きっとできます』
「!」
『ユージンさんの想いを形にするため、僕にも協力させて頂けますか?』
「……ありがとう、ジンくん」
『どういたしまして』
ジンが手を引き、顔が離れて白い靄の中へ消えてく。しかし手はしっかりと握られていた。
『では、ユージンさん。まずは戦況の把握をしましょう。僕の“視覚”をジャックしてください』
「うん」
ユージンはジンの視覚をジャックした。白い景色が一変、グレーの雲が空を埋め尽くす、うすぐらい景色が広がっていた。
「ゴムゴムのバズーカ!!」
「艶美魔(エンビマ) 夜不眠(ヨネズ) 鬼斬り!!」
「反礼儀(アンチマナー)キックコース!」
ルフィ達の技と共に次々に海に沈む軍艦、ルフィ達の善戦がうかがえる。
「でも、数が多い。このままではルフィくん達が…」
『ええ。どうやら、あちらは計画的にこの船を狙ってきているようです』
辺りを見せるように目を配るジンが言った。その視線が大砲を撃ってくる軍艦で止まる。
ジンは手を砲弾に向けた。
『栞(ブックマーク)』
ヒュンヒュン…!!と白い紙が砲弾に刺さる。砲弾はサニー号の船に届く前に爆発した。
ユージンはその光景に一種の感動を覚えつつ、肌がぴりっとした空気を感じる。
「! ジンくん、後ろを向いてくれないか?」
『!』
ジンは素早く船首へ目を向ける。船の進行方向に新たに10隻の軍艦が現れたのだ。
「すごい数だ」
『……ユージンさん、マスト上に移動します』
「え?」
「うわっ…!!」
ジンはユージンの手をしっかりと握ると飛んだ。
―――――サニー号、マスト。見張り台
『…大丈夫ですか?』
「うん、なんとか」
ユージンは自分の顔を見ながら頷く。ジンがユージンを見ているのだ。
ユージンは突然飛び上がったため、驚いている心臓を落ちるかせる。
少しずつ落ち着きだした心臓。しかし肌は空気のぴりぴりを感じるているのか落ち着かない。
「ジン? どうしたのって……ユージン!?」
「ナミさん?」
ジンの視線がナミに向く。マストの上にスタンバイしていたナミは驚きの声を上げた。
「ジン! なんでユージンを連れてきてるのよ!!」
『ユージンさんも皆さんといっしょに戦いたいとのことでしたので』
「え? 戦いたいって……」
「ごめん、ナミさん。でも僕も、キミ達の仲間だから」
「……」
ナミは困っているのだろう。眉を寄せている。しかし、フッと寄ってた眉の力が抜けた。
「まぁ…そう思うようになるわよね、私達といたら」
ニコッとユージンに微笑みかけるナミ。ユージンは心が軽くなる様な気がした。
「で、ジン。アンタがここにユージンを連れて来たってことは、何か策があるんでしょうね?」
小悪魔のような、企みを持った顔で目が合う。視界は一度大きく瞬きすると、再びナミを見た。
『大した策ではありませんが、お二人の力ならこの状況を打開できるかと』
「「?」」
『ナミさん、天候が変わってきているのは?』
「もちろん、わかっているわ。もうすぐ嵐がくる」
『やはり……。いつ頃かはわかりますか?』
「いいえ。そこまでは」
『じゃあ、ユージンさんに測ってもらってください』
「え?」
ユージンは驚きの声をあげ、ジンへ目を向ける。ジンの視線はユージンとナミ両方を交互に見る。
『ユージンさんは、気配といいますか、周りの動きに関する感覚が非常に優れています』
「そんなことは……」
『最初の軍艦に気付いたのも、先程船首に現れた軍艦の発見も。
まだおぼろげな距離であるのに関わらず、見つけることができた。これはその証明になりませんか?』
「……そうなのかな?」
「……確かに、ユージンがいつも一番先に声を挙げている気がするわ」
「それはそれで、問題がありそうだね」
ユージンは苦笑した。しかし、自分の感覚を評価されているのは、少し嬉しい。
『全ての軍艦を退けることが可能か不可能かはわかりません。ただ、増援は見込んでいいかと思っています』
「増援?? まだ来るのか?」
『はい、ユージンさん。先程もいいましたが、これは明らかに計画的です』
「こちらは真正面から戦うよりも、逃げる準備が必要ってことね」
『そうです。土地勘もあちらに理がありますしね』
「そこまで考えて……」
『最善は尽くさなければ、先には進めません。
そこで、話は戻りますが、ユージンさんにはナミさんの視覚・触覚をジャックしていただきたいのです』
「!」
『そうすれば、ナミさんの肌で感じる天候への感覚と、ユージンさんご自身の感覚を合わせることができる』
「それで、正確な時間を特定できるかもしれない、ジンはそう思っているのね」
『はい』
「私の感覚と」
「僕の感覚を合わせる…」
『正しい方法かはわかりませんが、試してみてもよいと思っています』
「そうね、やってみましょう!」
ジンはナミの言葉に頷く。そして視線をユージンに向けた。
『ユージンさん。この提案は貴方の求める戦いの方法ではないかもしれません』
「……」
『でも僕は、剣や拳を持って戦うことが全てではないと思っています』
「!」
『今、貴方にお願いしたことは、僕やルフィさん、ゾロさん達にはできないことです』
ジンの言葉は真剣だ。ユージンは頷く。
「ありがとう。僕にしか出来ない戦い方があるんだね」
『はい。そして、ユージンさんのその戦いは、この戦場の活路になると、考えます』
そういうとジンはユージンの手を離す。白い靄が視界にかかる。
「活路か……大役だね」
『はい。ただ、時間は出来る限りお作りします。そこは僕らのできることですから』
その時、ジンの顔は見えなかったが、ユージンには彼の笑顔が見えたようだった。
『ナミさん、後はお願いします』
「了解! ユージン、私の視覚と触覚をジャックして!」
「ああ」
ナミはユージンの視界に入るよう側に来る。
ユージンはナミに視線を向けると、視覚と触覚をジャックした。ジンはすでに移動してるらしい。
「何か変に感じたらすぐに教えて。天気のことなら私がわかるから」
「わかった、ありがとう。ナミさん」
「お礼はいいわ。“仲間”でしょ?」
「!…ああ、そうだね」
ユージンは静かに微笑み、自身の目を瞑る。
ナミの触覚から得られる空気の感覚と自分の肌が感じている空気の感覚を探っていた。
それから数十分後、ユージンは嵐の起こる時間を割り出すことに成功し、ナミは退路を開くことができた。
―――――その日の夜、サニー号にて
「「「カンパーイ!!」」」
食堂いっぱいに大きな声とジョッキが重なり合うガラス音が響く。
「ふーうめェ」
「今日はいっぱいだったなぁ、海軍♪」
「おいおい、ルフィ。なんで嬉しそうなんだよ!ったく。おれはもうヘトヘトだぜェ……」
「ほらよ」
『ありがとうございます、サンジさん』
サンジはジンの席に料理を運ぶと、ジンの隣に座った。
「なぁ、ジン、結局あれは待ち伏せされてたのか?」
『ええ。海軍の駐屯地が近い航路でしたから、そこにくる海賊を捕まえるために網を張っていた、そう考えるのが妥当でしょう』
「でもみんな無事でよかったわ~! 嵐の予報もばっちりだし!」
「アウ! まったくだ。おれのサニー号に傷がつかなかった」
「けが人もいなかったしな」
「それもこれもユージンのおかげね」
「いや、そんなことは……」
ユージンはみんなから感じる視線に頬を染める。
「でもよぉ~ユージン。戦いたいってんなら、言ってくれたらいいのに」
「! ああ、ごめんよ、ルフィくん。なかなか言いだせなくて」
「バカね。アンタなんかに言ったら、いっしょに軍艦まで飛んでいっちゃうでしょ」
「まぁ、でも初陣にしちゃ上出来だ」
「うん、すごかった! 助かったぞ、ユージン」
「ありがとう、ゾロくん、チョッパーくん」
ユージンは斜め右に座っているジンに目を向ける。
「ジンくん、ありがとう。キミのおかげだよ」
『いえいえ。ユージンさんのお力です』
ジンは笑顔で返す。それを見ていたサンジがにやりと笑った。
「仲間の教育もしちまうってことは、やっとこの船に乗る気になったってことか?」
『フフ…僕はお手伝いをしたまでですよ。“賭け”はまだ終わっていません』
「チッ、頑固な野郎だぜ」
ユージンはジンとサンジのやり取りを見てクスッっと笑った。
そして心の中でほっと息をつく。
ユージンは、“麦わらの一味”の一人として、ルフィ達の横に立てたと感じることができたのだ。
「これからも、がんばるね」
ユージンはそう言って優しい笑顔を見せる。それに皆はおう!と元気よく答えた。
end
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握手企画第2弾【渡り鳥】×ユージンくん!です。
わーとても難作となりました…HIROさん遅くなってすみません><
非戦闘員であるユージンくんをどう戦場で活躍させるか、
悩み悩んだ末の作戦がこれでした(大したものじゃなくてすみません…)
ジンを使っての純粋戦闘も考えたんですが、ユージンくんのイメージに合わずでして…;;
このような形になりました。
ユージンくんにジンがえらそうに言っておりますが、おゆるしてくださいm(_ _;)mスミマセン
楽しんで頂けるか不安なものになりましたが、
手はがっちりつながせましたよ(笑)!!よかったらもらってやってください!