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【あったかい…】


『……??』

ここは船の上。アルトは空を見上げた。白い氷の粒がはらはらと落ちてくる。


『雪……』

「おお、雪か」

『!』

ガチャッと船室からドレークが出てくる。アルトは振り向いた。


「アルト、そんな格好で寒くないか?」

『え…ああ、そういえば寒いかな』

アルトのいつもの格好は暖かい格好とは言えない。しかし寒さに鈍感なのか、平然としていた。


『ドレーククンこそ寒くないの?』

アルトが尋ねる。ドレークも今日は休暇のため、正義のコートは着ていない。


「おれはノースブルー生まれだからな。これくらいは平気だ」

『ノースブルーってそんなに寒いのかい?』

「ああ。おれが生まれた所は雪が何メートルも積もっていた。池や湖も凍ってるしな」

『……考えるだけで寒そうだ』

「想像絶するぞ」

『だろうね』

アルトは手を前に出す。アルトの手のひらに落ちた雪は、体温ですぐに消えた。


『じゃあ、僕はこれくらいでいいや』

「そうか」

ドレークはアルトの答えを聞いて笑う。
アルトはしばらく雪がしんしんと降る空を静かに見上げる。


「雪が珍しいのか?」

『いや……』

ドレークの問いにアルトが首を横に振った。


『雪が降ると静かだなって。周りの音が遠くに聞こえるんだ』

「確かに、そうだな。アルトは特に耳がいい分、もっと静かに感じるんだろうな」

『そうなのかな。わからないけど…こういうのもキライじゃない』

「ああ。おれもいいと思う。それに、“今日”雪と言うのはありがたいしな」

ドレークの言葉にアルトは怪訝な顔でドレークに目を向け、尋ねる。


『“今日”?今日だと何かあるのかい?』

「……やっぱり忘れているのか。まぁ、お前らしいが」

ドレークは呆れた様な声を出す。


『?』

見当のつかないアルトは首を傾げた。それを見てドレークはクスッと笑う。


「アルト、目を瞑れ」

『なんだい?』

「いいから」

『……わかった』

ドレークに促され、アルトは目を閉じる。
目を瞑ると間を開けず、首にふわっと“暖かさ”を感じた。


「メリークリスマス、アルト」

『え…?』

アルトは目を開ける。すると首には深い緑のマフラーが巻かれていた。


『こ、これは??』

ドレークに目を向けると優しく笑っていた。


「お前へのプレゼントだ。今日はクリスマスだからな」

『クリスマス…。そうだったのか』

「ああ。特に今日みたいな雪が降っている時のクリスマスを“ホワイトクリスマス”と言うんだ」

『へぇ。知らなかった…』

アルトは雪の降る空を見上げる。そしてドレークを見た。


『でも僕、何も用意してなっ……!?』

ドレークがアルトの顎を持ちあげ、軽く触れるだけのキスを交わす。
アルトはびっくりして目を見開いた。


「おれへのプレゼントはこれでいい」

『………そ、そう』

アルトは柄にもなく顔を赤らめ、目を反らした。ドレークはほほ笑み、アルトの頭を撫でる。


「この色にして良かった。お前の緑の目が引き立つ」

『……』



――あったかい……――



「?どうした?」

マフラーの温もりにアルトはドレークには聞こえないくらいの声で呟く。
そして首を傾げるドレークに目を向け、自然な笑顔で言った。





『ありがとう、大切にするよ』




fin
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