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【サクライロ】


ここは春島。ジンを乗せた麦わら海賊団は食料の確保のためやってきた。


「やっぱり、咲いてねェな」

『“サクラ”と言う花ですね?』

ジンの言葉にゾロが、ああっと相づちをうつ。

仕事のない二人は息抜きがてら散歩に来ていた。
ゾロは酒瓶片手に。隣のジンはいつものシルクハットやベストはなく、シャツとパンツだけ。
髪もラフに上げたリラックスモードだ。



『町の方達が“サクラ”の花の季節は終わったと言っていましたよ』

「ああ。桜はパッと咲いてパッと散る花なんだ。咲いてる日は少ねェ。
って、お前…知らないのか??」

ゾロは尋ねる。ロビンくらい博学のジンが知らないことがあるなんて珍しい。


『ええ、花の本には触ったことがありませんし、“サクラ”を見たことないんです。
どんな花なのですか?』

「どんなって……。こんくらいの小さい花でな……ってそこに落ちてるじゃねェか」

『?』

ゾロが説明しようとした時、目を向けた地面に桜の花が落ちていた。
幸い、散る前に落ちたようで木に咲いたままの形だった。拾ってジンに見せる。


「これだ。桜の花ってのは」

『なるほど……。でも枯れている様ですね。色がわかりません。本当は何色なんですか?』

「“淡いピンク”だ」

『……淡いピンクですか。……ん?』

ジンは首を傾げた。
ゾロはジンの肩に落ちているシルバーピンクの髪に触れているからだ。


『ゾロ?どうしましたか?』

「……こんな色だ」

『え?』

「桜の花びらの色。お前のこの髪の色と似てる」

『……なるほどこの色ですか。
ちなみに…ゾロは“サクラの色”はお好きですか?』

「まぁ…好きだな。主張しすぎないとこがいい」

でも、好きになったのは実は最近で、
ジンの太陽に当たる髪の色がキレイだと思ったからだなんて。

ゾロは口が裂けても言えない気がした。


「(エロコックでもあるまいし…)」

ゾロのひとり百面相見て、ジンはクスクスと笑みを携える。
少し意地悪したい気分になった。


『ヘェ……てっきり僕の髪の色に似ているからお好きなのかと思いましたよ』

「そ、そんなんじゃねェよ」

パッと髪から手を離し、そっぽを向くゾロ。
ほのかに赤らんだゾロにジンは、はははと笑った。


『失礼しました。怒らないでくださいね』

「……けっ」

『あらら…』

ゾロは不機嫌になった。ジンが困った顔をする。
また二人は桜を探しながら歩く。しかし、見つからなかった。


「ねェな。もう帰るか?」

『いえ、ここで花見をしましょう』

「……はぁ?」

ゾロは呆れた顔でジンを見る。


「お前、さっきから言ってただろ。花はねェって。花がないのに花見は出来ねェだろ?」

『する気満々でお酒を持って来たのにですか?』

「……っ。これだけ歩いてもねェんだ。それに花見をしなくても酒は飲める」

『僕は花見というのをしてみたいんです。ゾロはしたくないのですか?』

「だからしたくても出来ねェって」

『いえ、出来ますよ。準備は整いました』

「あぁ?」

ジンは手を前に出し、言った。


『“ファンタム(幻影)”…!!』

パッと桜の木々に桜の花びらが開く。色はジンの髪と同じ淡いピンク。
通りの木々全てに花が咲き、桜並木になった。


「……なっ!!?」

ゾロは目の前で起こった光景に目を見開く。
ジンは笑った。そして尋ねる。


『“サクラ”のお花見、これで出来ますか?』

ゾロは紙のサクラを見ながら、ああっと答える。さっきの不機嫌は完全に吹き飛んでいる様だ。


「こりゃいい。上手く出来てるじゃねェか。これ全部紙なのか?」

『はい。範囲が大きいので時間が掛かりましたが、本物を知っているゾロにそう言ってもらえたなら成功です』

二人はジンが咲かせた桜の花を見上げる。少ししてゾロがジンの手を取った。


『!?』

ジンがゾロを見る。目が合ったゾロの頬はほんのり桜色になっていた。ジンは笑う。


「ジン、花見だ。飲むぞ」

『ええ。お付き合いさせて頂きます』

ジンはそう言うと、ゾロの手を握り返した。



fin
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