STRONG WORLD 渡り鳥×ゼロ
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―――海軍本部、港。
物語はここから始まる。
「中将、整備完了しました」
『お疲れ、任務終わりに悪いね』
「いえ。次も控えてますので。中将、それは?」
右手に指先から肘の手前を覆うように無骨な手甲をはめたアルトが、ロールの問いに答えた。
『ああ、これはワイヤーフックだよ』
「! それが先日おっしゃっていたペガパンク博士の試作品ですか。思っていたよりも重厚ですね」
『外装はがっちりしてるけど、ワイヤーを巻いて入れてる部分がそうなだけで、裏は結構シンプルだよ』
手のひらが上にくるように手を返すと、言葉通り、表よりも簡素な造りになっていた。
指の第2関節が、可動式のバーにかかっており、そのバーの親指側には黄色いボタンがついている。
そして握るときに力が込めやすいように、手のひらのあたりに篭手と接合された動かないバーがもついていた。
「使われたご感想は?」
『まぁまぁってとこかな』
「どのように使うのですか?」
『ん? ああ…えっと、このバーを強く握ると、ワイヤーが発射される。巻き取るのはこの横のボタンを押すだけ。
途中で巻き取りを止めたいときもこのボタンを押す。仕組みは単純だね。
ただこのバーを握る強さで、ワイヤーが飛ぶ距離が変わるから、
どの強さでどれくらいワイヤーがでるのか、対象との距離はどれくらいか…。
そのあたりの目算ができないと引っ掛けるというのは難しいだろうね。
まぁ、この先端の形からして引っ掛けるというよりは突き刺すのが、目的なんだろうけど』
ロールはワイヤーフックの先端に目をやる。確かに矢の先端のように、鋭利だ。
「武器にも転用する予定なのでしょうか?」
『どうだろう。奇襲には使えるかもしれないけど、
クザンクン達大将クラスで通用するかと言われれば、無理だと思うし』
「確かに、そうですね」
『まぁ、慣れれば航行中の艦同士で行き来しやすくはなりそうだけど』
「……むむ、私には扱えそうにありませんね」
『そうかな?』
ロールの眉を寄せた表情にアルトは不思議そうに首を傾げた。
『――――ん?』
そしてふと、空を見上げる。そこには雲一つない青空が広がっていたが、
アルトはその空を探るように見つめていた。
「? 中将、どうされたんですか?」
『なんだか“空が”うるさいんだ』
「? “空が”……ですか?」
ロールは眉を寄せたままの難しい顔で、アルトと同じく空を見上げる。
しかしロールの耳には音は届かない。
ただロールの隣にいるこの中将はえらく耳がいいことで評判だった。
その彼がそういうなら、きっと音は鳴っているのだろうとロールは考える。
そして表情には出ないその態度から、彼はそれを悪い物として捉えているのだとも感じた。
「本部に連絡を入れますか?」
黙ったままのアルトに行動を提示する。
するとアルトは、さすが、ロールクンだね。と空から視線をロールに向けた。
『ああ、センゴクサンに繋いでくれ』
「はっ! 」
ロールが子電伝虫を取り出し話しかける。アルトは再び空を見上げた。
「――――本部応答願う。こちらノティ隊、ロールだ。
ノティ中将から、ご報告したいことがあると、センゴク元帥に知らせ、繋げてほしい」
『空気が揺れてるな……大きな物が来るのか?』
「ノティ中将、センゴク元帥です」
子電伝虫での連絡は思ったよりも早くついたようだ。
アルトは礼をいい、ロールから子電伝虫を受けとった。
『センゴクサン、いいかい?』
[アルトか。報告とはなんだ?]
『詳しくはわからないんだ。ただ“音”が鳴る何かが近づいてる。警戒してほしい……』
[音?待っていろ。――――おい、周辺を様子を報告しろ]
[はっ!]
センゴクが近くの部下に指示を入れたのが聞こえる。
センゴクがアルトに尋ねた。
[音は近づいているのか?]
『ああ、徐々に大きくはなってる……!』
ウーウー!!
「『!?』」
突然、甲高い警告音が本部を包んだ。
[何があった?]
[元帥! 上空から“大型の島”が!! こちらに近づいています]
『センゴクサン、……こっちも目視できた』
アルトも視界にも入ってきたその“大型の島”を見て、センゴクン報告を入れる。
海に沈んでいたであろう岩肌ごとえぐりとったかのような島。
しかしよく見るとオールのような物が無数に生えていた。
『“船”なのか?』
[お前たち、今すぐそこから離れろ!]
『え?』
センゴクの強い言葉に、疑問の声を返したアルト。同時に足元に違和感を感じた。
「中将!!」
ロールが声を上げる。そうかと思えば2人は巨大な軍艦ごと“宙に浮き上がった”。
『「!!?」』
驚きつつもアルトとロールはとっさに甲板に膝をつき、船から放り出される難を逃れる。
そして状況確認するため辺りに目を配ったロールは目に入った光景に驚愕した。
浮き上がったのはアルト達の艦だけではなかったからだ。
今やアルト達の艦の周りに停泊していた全ての艦が浮かんでいる。重厚な軍艦がまるでおもちゃのように。
[“金獅子”め……]
『?』
アルトが子電伝虫から聞こえたセンゴクの言葉を頭の端に捉えた。
しかし、すぐに現在の状況対応するため思考が動く。
「中将、このままでは」
『ああ、よくないな』
今も浮き上がり続ける艦。しかしこれは永遠ではない。
そこそこ高さまでいったら、ぷつりと切れ、重さに見合った墜落を迎えることは簡単に予想はついた。
そしてその高さから落ちれば、水はコンクリートのように硬くなることも。
きっと無事ではいられないだろうな、とアルトは妙に冷静に考えていた。
なぜアルトがこの状況下で冷静にいられるのか、
それは彼自身が持つ“悪魔の実”の能力があれば、浮き上がっている軍艦・船員達
を助けることができるという確信に近い自信があったからだ。
『……あとは“全艦を見渡せる位置”につければいいんだけど。――――――ロールクン』
「はっ、はい?」
『後を頼む。僕はこの状況を打開してくる』
「打開!? 一体何を!!?」
『悪い、説明している暇はないんだ』
「! りょ、了解です。お気をつけて」
『ああ、そうする』
アルトはそう言うと、艦へ意識を払った。
艦の浮遊が終わる瞬間を待つ。そしてそれは、すぐに訪れた。
『!』
浮力を失うと感じた瞬間、アルトは甲板を強く踏み、空へ飛び上がった。
そして空気を蹴るように上へ上へと飛び上がる。
その技術はCP(サイファーポール)の体術“六式”のひとつ、“月歩(ゲッポウ)”だ。
『“月歩”まで、予定通り。でも、やっぱり高さが足りないな』
月歩で飛べるところまで飛んだアルトは、下を確認しながら言葉を並べる。
高さがまだ足りていないことをあらかじめ予想していたため、
アルトは右腕のワイヤーフックを正面に見える“島のような船”へ構えた。
そしてハンドルを目一杯握りしめる。
バシュ……!!
ワイヤーフックが勢いよく発射された。そのワイヤーが進む方向は島の岩盤。
落下していく自分の身体とワイヤーフック、どちらが先に届くかが勝負だった。
ガキィン…!!
『!』
ワイヤーフックは島の岩盤を捕えた。同時にアルトの落下も止まる。
突然の制止に身体は大きく揺れたが、奥歯をくいしばり耐え、そのまま親指でボタンを押した。
ギュイイイン…!と金属は擦れる音が右腕から鳴る。その音と共にアルトの身体はみるみる空へ上がって行った。
『はぁ……。これでなんとかできるはずだ』
アルトはふっとひとつ息をつくと、下を見下ろす。
落下を始める軍艦の群れが全て見渡せた。
思っていたより落下が早い。まもなく海に激突してしまう。
そう感じたアルトはすかさず左手を軍艦の群れに向けた。
『聖域(ジ・ハード)……!!』
アルトは自身のもつ“盾”の能力を展開。
無数の透明な六角形のピースが軍艦と落下時に浮き上がってしまった船員の下に現れた。
そして間もなく軍艦と船員はピースにぶつかる。
――――瞬間、全ての軍艦と船員の落下衝撃を“無効化にした”。
『間に合ったね』
アルトは、人的・物的にも被害を最小限にとどめることに成功したことにひとまず安堵する。
そして、またひとつ“違う意味”でため息をついた。
『ところで、これどうしようか』
力加減が悪かったのか、親指のボタンを何度押してもワイヤーフックの巻き戻りを止めることができない状況に陥っていた。
壊そうにも小手のように腕に巻きついているため、叩き割ると自分がけがをしてしまう。
アルトは、ん~、っと考える。
[―――――アルト、よくやった。いま…どこ―――――だ??]
途切れ途切れに聞こえるセンゴクの声に、アルトはポケットにしまっていた子電伝虫を取り出した。
『今、例の“島”に向かってる』
[島?―――――まさか――――さっさと―――戻らんか!]
『いや、戻りたいのはやまやまなんだけどさ。ちょっと予定外のことが起こってね』
[何が―――――]
ザザザザと砂嵐が耳に届く。子電伝虫の通信範囲を超えそうだ。
『センゴクサン、とりあえず僕はこのまま船に潜入するよ』
[いかん―――――相手――――“金獅子”だ―――ぞ]
『無理はしない。……まぁ、たぶん。とりあえず、後で連絡するよ』
[――――――アルト――――!!]
ブチッという音と共に子電伝虫は目を閉じる。
通信ができなくなった子電伝虫をポケットに戻し、上を見上げた。
まもなくワイヤーフックの先端、終点が近づいている。
『まぁ、なんとかなるよね』
アルトは近づく島のような船を見ながらそう呟いた。
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物語はここから始まる。
「中将、整備完了しました」
『お疲れ、任務終わりに悪いね』
「いえ。次も控えてますので。中将、それは?」
右手に指先から肘の手前を覆うように無骨な手甲をはめたアルトが、ロールの問いに答えた。
『ああ、これはワイヤーフックだよ』
「! それが先日おっしゃっていたペガパンク博士の試作品ですか。思っていたよりも重厚ですね」
『外装はがっちりしてるけど、ワイヤーを巻いて入れてる部分がそうなだけで、裏は結構シンプルだよ』
手のひらが上にくるように手を返すと、言葉通り、表よりも簡素な造りになっていた。
指の第2関節が、可動式のバーにかかっており、そのバーの親指側には黄色いボタンがついている。
そして握るときに力が込めやすいように、手のひらのあたりに篭手と接合された動かないバーがもついていた。
「使われたご感想は?」
『まぁまぁってとこかな』
「どのように使うのですか?」
『ん? ああ…えっと、このバーを強く握ると、ワイヤーが発射される。巻き取るのはこの横のボタンを押すだけ。
途中で巻き取りを止めたいときもこのボタンを押す。仕組みは単純だね。
ただこのバーを握る強さで、ワイヤーが飛ぶ距離が変わるから、
どの強さでどれくらいワイヤーがでるのか、対象との距離はどれくらいか…。
そのあたりの目算ができないと引っ掛けるというのは難しいだろうね。
まぁ、この先端の形からして引っ掛けるというよりは突き刺すのが、目的なんだろうけど』
ロールはワイヤーフックの先端に目をやる。確かに矢の先端のように、鋭利だ。
「武器にも転用する予定なのでしょうか?」
『どうだろう。奇襲には使えるかもしれないけど、
クザンクン達大将クラスで通用するかと言われれば、無理だと思うし』
「確かに、そうですね」
『まぁ、慣れれば航行中の艦同士で行き来しやすくはなりそうだけど』
「……むむ、私には扱えそうにありませんね」
『そうかな?』
ロールの眉を寄せた表情にアルトは不思議そうに首を傾げた。
『――――ん?』
そしてふと、空を見上げる。そこには雲一つない青空が広がっていたが、
アルトはその空を探るように見つめていた。
「? 中将、どうされたんですか?」
『なんだか“空が”うるさいんだ』
「? “空が”……ですか?」
ロールは眉を寄せたままの難しい顔で、アルトと同じく空を見上げる。
しかしロールの耳には音は届かない。
ただロールの隣にいるこの中将はえらく耳がいいことで評判だった。
その彼がそういうなら、きっと音は鳴っているのだろうとロールは考える。
そして表情には出ないその態度から、彼はそれを悪い物として捉えているのだとも感じた。
「本部に連絡を入れますか?」
黙ったままのアルトに行動を提示する。
するとアルトは、さすが、ロールクンだね。と空から視線をロールに向けた。
『ああ、センゴクサンに繋いでくれ』
「はっ! 」
ロールが子電伝虫を取り出し話しかける。アルトは再び空を見上げた。
「――――本部応答願う。こちらノティ隊、ロールだ。
ノティ中将から、ご報告したいことがあると、センゴク元帥に知らせ、繋げてほしい」
『空気が揺れてるな……大きな物が来るのか?』
「ノティ中将、センゴク元帥です」
子電伝虫での連絡は思ったよりも早くついたようだ。
アルトは礼をいい、ロールから子電伝虫を受けとった。
『センゴクサン、いいかい?』
[アルトか。報告とはなんだ?]
『詳しくはわからないんだ。ただ“音”が鳴る何かが近づいてる。警戒してほしい……』
[音?待っていろ。――――おい、周辺を様子を報告しろ]
[はっ!]
センゴクが近くの部下に指示を入れたのが聞こえる。
センゴクがアルトに尋ねた。
[音は近づいているのか?]
『ああ、徐々に大きくはなってる……!』
ウーウー!!
「『!?』」
突然、甲高い警告音が本部を包んだ。
[何があった?]
[元帥! 上空から“大型の島”が!! こちらに近づいています]
『センゴクサン、……こっちも目視できた』
アルトも視界にも入ってきたその“大型の島”を見て、センゴクン報告を入れる。
海に沈んでいたであろう岩肌ごとえぐりとったかのような島。
しかしよく見るとオールのような物が無数に生えていた。
『“船”なのか?』
[お前たち、今すぐそこから離れろ!]
『え?』
センゴクの強い言葉に、疑問の声を返したアルト。同時に足元に違和感を感じた。
「中将!!」
ロールが声を上げる。そうかと思えば2人は巨大な軍艦ごと“宙に浮き上がった”。
『「!!?」』
驚きつつもアルトとロールはとっさに甲板に膝をつき、船から放り出される難を逃れる。
そして状況確認するため辺りに目を配ったロールは目に入った光景に驚愕した。
浮き上がったのはアルト達の艦だけではなかったからだ。
今やアルト達の艦の周りに停泊していた全ての艦が浮かんでいる。重厚な軍艦がまるでおもちゃのように。
[“金獅子”め……]
『?』
アルトが子電伝虫から聞こえたセンゴクの言葉を頭の端に捉えた。
しかし、すぐに現在の状況対応するため思考が動く。
「中将、このままでは」
『ああ、よくないな』
今も浮き上がり続ける艦。しかしこれは永遠ではない。
そこそこ高さまでいったら、ぷつりと切れ、重さに見合った墜落を迎えることは簡単に予想はついた。
そしてその高さから落ちれば、水はコンクリートのように硬くなることも。
きっと無事ではいられないだろうな、とアルトは妙に冷静に考えていた。
なぜアルトがこの状況下で冷静にいられるのか、
それは彼自身が持つ“悪魔の実”の能力があれば、浮き上がっている軍艦・船員達
を助けることができるという確信に近い自信があったからだ。
『……あとは“全艦を見渡せる位置”につければいいんだけど。――――――ロールクン』
「はっ、はい?」
『後を頼む。僕はこの状況を打開してくる』
「打開!? 一体何を!!?」
『悪い、説明している暇はないんだ』
「! りょ、了解です。お気をつけて」
『ああ、そうする』
アルトはそう言うと、艦へ意識を払った。
艦の浮遊が終わる瞬間を待つ。そしてそれは、すぐに訪れた。
『!』
浮力を失うと感じた瞬間、アルトは甲板を強く踏み、空へ飛び上がった。
そして空気を蹴るように上へ上へと飛び上がる。
その技術はCP(サイファーポール)の体術“六式”のひとつ、“月歩(ゲッポウ)”だ。
『“月歩”まで、予定通り。でも、やっぱり高さが足りないな』
月歩で飛べるところまで飛んだアルトは、下を確認しながら言葉を並べる。
高さがまだ足りていないことをあらかじめ予想していたため、
アルトは右腕のワイヤーフックを正面に見える“島のような船”へ構えた。
そしてハンドルを目一杯握りしめる。
バシュ……!!
ワイヤーフックが勢いよく発射された。そのワイヤーが進む方向は島の岩盤。
落下していく自分の身体とワイヤーフック、どちらが先に届くかが勝負だった。
ガキィン…!!
『!』
ワイヤーフックは島の岩盤を捕えた。同時にアルトの落下も止まる。
突然の制止に身体は大きく揺れたが、奥歯をくいしばり耐え、そのまま親指でボタンを押した。
ギュイイイン…!と金属は擦れる音が右腕から鳴る。その音と共にアルトの身体はみるみる空へ上がって行った。
『はぁ……。これでなんとかできるはずだ』
アルトはふっとひとつ息をつくと、下を見下ろす。
落下を始める軍艦の群れが全て見渡せた。
思っていたより落下が早い。まもなく海に激突してしまう。
そう感じたアルトはすかさず左手を軍艦の群れに向けた。
『聖域(ジ・ハード)……!!』
アルトは自身のもつ“盾”の能力を展開。
無数の透明な六角形のピースが軍艦と落下時に浮き上がってしまった船員の下に現れた。
そして間もなく軍艦と船員はピースにぶつかる。
――――瞬間、全ての軍艦と船員の落下衝撃を“無効化にした”。
『間に合ったね』
アルトは、人的・物的にも被害を最小限にとどめることに成功したことにひとまず安堵する。
そして、またひとつ“違う意味”でため息をついた。
『ところで、これどうしようか』
力加減が悪かったのか、親指のボタンを何度押してもワイヤーフックの巻き戻りを止めることができない状況に陥っていた。
壊そうにも小手のように腕に巻きついているため、叩き割ると自分がけがをしてしまう。
アルトは、ん~、っと考える。
[―――――アルト、よくやった。いま…どこ―――――だ??]
途切れ途切れに聞こえるセンゴクの声に、アルトはポケットにしまっていた子電伝虫を取り出した。
『今、例の“島”に向かってる』
[島?―――――まさか――――さっさと―――戻らんか!]
『いや、戻りたいのはやまやまなんだけどさ。ちょっと予定外のことが起こってね』
[何が―――――]
ザザザザと砂嵐が耳に届く。子電伝虫の通信範囲を超えそうだ。
『センゴクサン、とりあえず僕はこのまま船に潜入するよ』
[いかん―――――相手――――“金獅子”だ―――ぞ]
『無理はしない。……まぁ、たぶん。とりあえず、後で連絡するよ』
[――――――アルト――――!!]
ブチッという音と共に子電伝虫は目を閉じる。
通信ができなくなった子電伝虫をポケットに戻し、上を見上げた。
まもなくワイヤーフックの先端、終点が近づいている。
『まぁ、なんとかなるよね』
アルトは近づく島のような船を見ながらそう呟いた。
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