彼は迚も白い人だった
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とあるバー
「心君。今回は思ったより早かったね」
「あ、はい。もう少しいる予定だったのですが、急遽社長から戻ってこいとのお達しがありましたので、繰り上げて戻ってきました」
「ああ、それは彼のことで?」
「ええ」
「早速観察開始かな?」
「はい。社長にもお伝えしましたが、敦さんの異能を真似るため明後日からなるべく敦さんの側にいることをお伝えしました」
「明後日?」
「明日は休めと言われました。働き詰めだったのだろうと」
「なるほど。確かに君は働き者だ」
「そんなことありませんよ。海外遠征させていただいているのに、任務をこなせないのは忍びないです」
「君らしい。そうそう心君は敦君の異能どう見てるんだい?」
「そうですね異能は太宰さんから頂いたあの映像しか見ていませんが、まさに虎ですよね。己の姿を大きく変える異能というのはとても貴重です。海外でも滅多にお目にかかれません。まぁ、見れる機会がないのもありますが。ただ……」
「?」
「彼の異能に関してはなんだか、異質に感じます」
「!」
「別に貴重であれど、僕は変身するタイプの異能は見ています。今もなんとなくですがどう想像すべきかは予測も立ててはいるんです」
「へぇ、さすがだね」
「異能を考えることは苦になりませんから。もちろん今でも太宰さんの異能は断トツで異質ですが、敦さんの異能も計り知れない何かがある。そんな気がします。だから本物を早く見たいです…」
心は遠い目をしながらカクテルを飲む。
「ふふ。ところで私の異能は真似できそうかい?」
「はぁー……。残念ながら、まだ叶いません」
「そうか、それは残念だなぁ。できたら私が楽できるのに」
「それは誰も許してくれないと思いますが…」
「ちぇー」
口を尖らせ、ウイスキーを飲む太宰。心はカクテルのグラスを眺める。
「それに、所詮は“偽物”です。本家の太宰さんを超えることはできやしない」
「本当にそうなのかい?」
「?……そうですよ?」
「そうか…。それであの件はどうだったのかな?」
「はい。残念ながら情報にあったロシアの寝ぐらはすでにカラでした。他にも僕なりに該当しそうな場所はなるべく探りましたが、本拠地は並の深さではないようで…足取りは掴めていません」
「そうかい」
「ただ、そのカラの寝ぐらから太宰さんの仰った通り、日本に定期的に入り込んでいる形跡は確認できました」
心は、太宰に紙を差し出す。太宰はそれを受け取り手元で眺めた。
「ふむ…ここ最近は頻繁だな」
「あと“70億の件”ですが、闇市でも大きな話題になっていました。ただ元々特定の相手を狙った交渉のようで、その全貌は伏せられ、噂として闇市を駆け抜けていたようです。もちろん依頼者も分かりません。ただこんな大金を積める組織は限られますので探れば出るかと」
「特定の相手とは?」
「“70億円の虎”がいるこのヨコハマの闇を牛耳っている組織ーーーーーポートマフィアです」
「まぁ、そうでなければ、今頃大勢の人間が来ているだろうね」
「ええ。それだけでこのヨコハマが火の海になりかねません。ポートマフィアを詳しくたどったことはありませんが、潜入した方がいいですか?」
「いや、今はいいよ。そろそろ“君を勝手に動かしていること”が乱歩さんあたりにバレそうだし」
「あーそうですね、僕もさすがに乱歩さんは騙せません」
「だろうね。敦君の件は僕からも探ってみるよ。あと頼んでおいてなんだけど、“ロシアの彼”にはあまり近づいて欲しくないというのが、本音だよ」
「そこまで注意を払うべき相手の異能…気になります」
「でもとても危険なものだ。一人で近づいてはダメだよ」
「はい。それが太宰さんとの“約束”ですから」
心の言葉に太宰はふふっと微笑んだ。
続く
「心君。今回は思ったより早かったね」
「あ、はい。もう少しいる予定だったのですが、急遽社長から戻ってこいとのお達しがありましたので、繰り上げて戻ってきました」
「ああ、それは彼のことで?」
「ええ」
「早速観察開始かな?」
「はい。社長にもお伝えしましたが、敦さんの異能を真似るため明後日からなるべく敦さんの側にいることをお伝えしました」
「明後日?」
「明日は休めと言われました。働き詰めだったのだろうと」
「なるほど。確かに君は働き者だ」
「そんなことありませんよ。海外遠征させていただいているのに、任務をこなせないのは忍びないです」
「君らしい。そうそう心君は敦君の異能どう見てるんだい?」
「そうですね異能は太宰さんから頂いたあの映像しか見ていませんが、まさに虎ですよね。己の姿を大きく変える異能というのはとても貴重です。海外でも滅多にお目にかかれません。まぁ、見れる機会がないのもありますが。ただ……」
「?」
「彼の異能に関してはなんだか、異質に感じます」
「!」
「別に貴重であれど、僕は変身するタイプの異能は見ています。今もなんとなくですがどう想像すべきかは予測も立ててはいるんです」
「へぇ、さすがだね」
「異能を考えることは苦になりませんから。もちろん今でも太宰さんの異能は断トツで異質ですが、敦さんの異能も計り知れない何かがある。そんな気がします。だから本物を早く見たいです…」
心は遠い目をしながらカクテルを飲む。
「ふふ。ところで私の異能は真似できそうかい?」
「はぁー……。残念ながら、まだ叶いません」
「そうか、それは残念だなぁ。できたら私が楽できるのに」
「それは誰も許してくれないと思いますが…」
「ちぇー」
口を尖らせ、ウイスキーを飲む太宰。心はカクテルのグラスを眺める。
「それに、所詮は“偽物”です。本家の太宰さんを超えることはできやしない」
「本当にそうなのかい?」
「?……そうですよ?」
「そうか…。それであの件はどうだったのかな?」
「はい。残念ながら情報にあったロシアの寝ぐらはすでにカラでした。他にも僕なりに該当しそうな場所はなるべく探りましたが、本拠地は並の深さではないようで…足取りは掴めていません」
「そうかい」
「ただ、そのカラの寝ぐらから太宰さんの仰った通り、日本に定期的に入り込んでいる形跡は確認できました」
心は、太宰に紙を差し出す。太宰はそれを受け取り手元で眺めた。
「ふむ…ここ最近は頻繁だな」
「あと“70億の件”ですが、闇市でも大きな話題になっていました。ただ元々特定の相手を狙った交渉のようで、その全貌は伏せられ、噂として闇市を駆け抜けていたようです。もちろん依頼者も分かりません。ただこんな大金を積める組織は限られますので探れば出るかと」
「特定の相手とは?」
「“70億円の虎”がいるこのヨコハマの闇を牛耳っている組織ーーーーーポートマフィアです」
「まぁ、そうでなければ、今頃大勢の人間が来ているだろうね」
「ええ。それだけでこのヨコハマが火の海になりかねません。ポートマフィアを詳しくたどったことはありませんが、潜入した方がいいですか?」
「いや、今はいいよ。そろそろ“君を勝手に動かしていること”が乱歩さんあたりにバレそうだし」
「あーそうですね、僕もさすがに乱歩さんは騙せません」
「だろうね。敦君の件は僕からも探ってみるよ。あと頼んでおいてなんだけど、“ロシアの彼”にはあまり近づいて欲しくないというのが、本音だよ」
「そこまで注意を払うべき相手の異能…気になります」
「でもとても危険なものだ。一人で近づいてはダメだよ」
「はい。それが太宰さんとの“約束”ですから」
心の言葉に太宰はふふっと微笑んだ。
続く