彼は迚も白い人だった
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その光景に敦は目を丸くし、太宰は手を叩いた。
「へっ……!!?」
「お見事!」
「お褒めにあずかり光栄です」
へへっと少年のように笑う心。パンパンと足の塵を払う。
「えっえっ??」
一方敦は頭にたくさん疑問符を浮かべているような声を出した。
「どうしたんですか? 敦さん?」
「心さんって、国木田さんと同じ異能なんですか!!?」
「ん?」
「だって”独歩吟客”って…。それにいつの間に谷崎さんも合流して……」
「? おやおや?」
次に首を傾げたのは心だった。そして視線を太宰に向ける。
「太宰さん。敦さんは僕の異能を知らないのですか?」
「ああ、百聞は一見にしかず、だからね。さて、あとは警察に任せて我々は帰るとしよう」
*
ーーーー探偵社
あれから程なくして、三人は帰路に着いた。事件に巻き込まれたことで敦はどっと疲れを感じつつ、ドアを開く。
「も、戻りました」
「連れて帰ってきたよ〜」
敦に続き太宰が探偵社の外扉から事務所に入ってくる。そして太宰の後ろから、心がヘラヘラと手を振って現れた。
「皆さん只今〜」
心を知る者達はあっと声を上げる。そして口々にお帰りなさいと声がかかる。
「お帰りなさい。お久しぶりですわー」
ナオミも立ち上がり、笑顔で出迎えた。心は久しぶりです〜と笑顔を返す。他の事務員達も続き事務所は少しだけ賑やかになった。
「心、社長が呼んでるよ」
社長室から出てきた乱歩が、まだ外扉前で囲まれている心に声を掛ける。心は、乱歩さんただいま〜と手を振った。乱歩はその手を振り返す。
「あ、乱歩さん。これお土産です。チョコレート」
「善くやった! 早速もらうよ」
「皆さんの分もあるので、どうぞー」
どさっとカバンを開く。するとチョコレートの箱だらけだった。心は一箱手に取る。
「じゃあ、ご自由に。僕は社長の処に行ってきますね」
みんなにそう声をかけ、心は社長室に入って行った。皆は心の言葉に応じ、チョコレートをとり席に戻り仕事を再開する。一連の歓迎ぶりを見ていた敦は、なんだか羨ましいと思えた。
「只今、帰りました」
「戻ったぞ」
数分後、外に出ていた賢治と国木田が戻ってきた。
「太宰、敦、戻っていたか。心とは無事合流したのか?」
「ああ、もちろん。今社長のところだよ。しかも偶々起こった強盗事件も解決してきたし、働いたね。私達!」
「ほう、太宰にして珍しい」
「珍しいとは酷い!!」
「でも、心さんがほとんど片付けちゃいましたけど…」
「む」
国木田は敦の言葉に眉をひそめた。
「おい、太宰。事件を解決したのはいいが、まさかあいつまた俺の異能を…!」
「ああ、使っていたよ。あと谷崎くんの”細雪”も」
「さすが心さん。お兄様の異能のコピーも完璧ですわぁ」
ナオミが嬉しそうにいう。その言葉に敦は首を傾げた。
「コピー?」
「あ! 敦さんはまだ心さんの異能をご存知ないのないのですね」
「一体どんな異能なんですか?」
国木田は自席の椅子を引いて、パソコンを起動しながら、敦に向けて説明する。
「彼奴の異能は……”二次創作”。端的に言うと”他人の異能を真似できる”異能だ」
「へ? 他人の異能を真似?」
「敦くんも見ただろう?」
「はい、本当に谷崎さんと国木田さんの異能そのものでした。あれが本当に真似だなんて…」
「もちろん、あれほどの完成度はひとえに心君の努力による功績さ。心君が真似をするためには、対象をつぶさに観察し、異能を分析する。そして想像するという過程が必要なのだよ」
「なんだか大変そうですね」
「心の異能に対しての観察・分析力は評価できるよ。まぁ、僕には遠く及ばないけどね」
チョコレートを食べながら、乱歩は言った。
「そしてここからが面白いのだけど、彼は自分のものにするまでの過程で”その人その物を真似る”のさ」
「どういうことですか?」
敦はうまく想像出来ないのか、首を傾げた。国木田はキーボードを叩きながら言葉を挟む。
「言葉のままだ。コピーするためにその対象の人間に成りきる」
「姿は心なのに、本物みたいに見えるのが中々面白かったね」
「私はお兄様の真似をする心さんを見て、お兄様の素敵さを再確認できましたわ」
チョコを食べながらケラケラ笑う乱歩と、うっとりするナオミ。一方国木田のタイピングが強くなる。
「俺は思い出したくもない。特に太宰の真似をしているときは酷かった。あの時は苦労が数倍に膨れ上がった」
「おやおや、私としては国木田くんの真似をしているときが苦行だったよ。国木田くんが二人いるかと本気で錯覚しそうになったくらいさ」
国木田、太宰が一様に疲れた顔をする。その時のことを思い出しているのだろうか。
「そんなに似てるんですか!!?」
「皆さん褒めすぎですよ〜」
敦が驚きの声をあげた処に、社長室から心が出て来た。国木田は眼鏡をあげる。
「心、報告は終わったのか?」
「はい、今。 あっ。国木田さんお久しぶりです!」
「ああ、よく戻った。だが、お前また俺の異能を使ったらしいな」
心は、あーと己の指で己の頬を軽く掻く。
「使いました! でも国木田さんの異能、とても重宝するんです。許してください」
「もう、国木田君より扱い上手いんじゃないのー?」
太宰が悪戯顔で、茶々を入れる。国木田は一瞬ムッとしたが、心は首を振った。
「いやいやそれはないですよー、国木田さんだからこそ“独歩吟客”は美しいのです。また国木田さんが異能使うの見たいなぁ」
キラキラした笑顔で国木田の異能について語る心。国木田はパソコンへ顔を反らす。敦からは少し耳が赤いように見えた。
「心さん、お帰りなさいです!」
「賢治さん! お久しぶりです。貴方の異能、今回の遠征で活用させていただきました!! とても素晴らしかったです」
「わー! よかったです」
賢治の手を握り、心は大げさに握手する。二人ともいい笑顔だ。
*
「ふぁ〜。えらく賑やかだねぇ」
ガチャっと医務室の扉があく。その音に、心はいち早く反応した。
「与謝野先生〜!!!」
心は、伸びをしていた与謝野に飛びつく。与謝野は驚きの声をあげた。
「うわっ、って、心かい?」
「そうだよ! 只今!」
「おかえり。今日、戻ったのかい?」
与謝野の腰に抱きつく心の頭をポンポンと撫でた。その光景に敦はポカンとする。太宰はクスクスと笑う。
「心君は与謝野先生が大好きなのさ」
「おや、あんた怪我しているね」
与謝野は心の頬に手を触れる。銀行での大立ち回りの後、彼は頬から血を流していた。拭いはしたが、救急車で手当をという救急隊員の言葉を断り戻ったきたため、血が頬で固まっている状態だった。
「そうなんだ〜。与謝野先生の異能で治して!」
ワクワクと擬音が聞こえてきそうに弾む心の声。与謝野はそれにはぁっとため息をついた。
「全く…。またわざとしたんだろう。谷崎の治療中だから、普通に治療してやるよ」
「ええー…そんなぁ……」
心は心底残念そうな声を上げ、床にへたりこむ。
「相変わらずですわ、心さん」
「あの与謝野先生の治療を嬉々として受けるのは、世界でも彼奴だけだろうな」
そんな心を見て苦笑するナオミとげんなりとした瞳でみる国木田。周りの仕方ないなぁという雰囲気に与謝野の治療方法を“具体的”に知らない敦は首を傾げつつ、心の異能に対して感じたことを呟いた。
「でも、相手の異能をコピーできるなんて。無敵ですよね、そんな異能あるんだ…」
その言葉に地面にヘタリ込む心の肩がピクッと揺れる。
「心?」
与謝野はその様子を見て声をかける。心はふるふると首を横に振り、立ち上がった。少し困ったような顔をしている。
「無敵ではないですよ」
「え? どうしてですか?」
「んー……だっていうでしょ? “偽物は本物に勝てない”って」
「え!?」
「僕の異能はあくまでも物真似。“偽物”ですから」
心は軽口でニコニコと笑みを浮かべるが、敦の目には少し辛そうにも見えた。
「お前達いつまで騒いでいる、いい加減に仕事に戻れ」
「……。心、医務室行くよ」
「あ、はーい」
国木田は話を切った。同時に与謝野に呼ばれ、心は慌てた様子で、与謝野へ着いて医務室へ入っていった。話はお開きと言わんばかりに、打ち切られてしまった。
*
「さて、今日は帰ろうかなー」
んーっと伸びをする心。その声に太宰が反応する。
「あ、心君出るのかい? じゃあ、私も帰ろっ」
「太宰! 貴様はまだ仕事があるだろう」
「いいじゃないか。久々に心君が帰ってきたのに、夜誘わないのは可哀想だろう」
「! ごはんですか?」
「そう。結局、土産話を聞きそびれてしまったからね」
「わーい。行きます! 国木田さん、お願いしますー」
「……勝手にしろ」
「よーし、じゃあ行こうか」
「はーい。じゃあ、皆さんお疲れ様です」
元気よく手を振って扉を出て行った心と太宰。その様子を見ていた敦が驚いた顔をする。
「お二人とも仲がいいんですね」
「お前も近いうちに誘われるだろう」
「? 僕もですか?」
「今回は太宰が誘っていたが、いつもは心が誘う。そういう時は其奴を研究したい時だ。まぁ、質問責めにされるとかじゃなく、本当に普通に食べて飲むだけだが」
「異能のため……ってことですか?」
「嫌か? だがそんな心持ちだと彼奴と付き合うのは辛いぞ」
「?」
「彼奴は徹底的に“異能が中心”の生活をしている。彼奴の側にいればそれに付き合うことになる」
「…心さんはなんでそんなに異能が好きなんですか?」
「そんなこと知らん。本人に聞いてみろ」
「へっ……!!?」
「お見事!」
「お褒めにあずかり光栄です」
へへっと少年のように笑う心。パンパンと足の塵を払う。
「えっえっ??」
一方敦は頭にたくさん疑問符を浮かべているような声を出した。
「どうしたんですか? 敦さん?」
「心さんって、国木田さんと同じ異能なんですか!!?」
「ん?」
「だって”独歩吟客”って…。それにいつの間に谷崎さんも合流して……」
「? おやおや?」
次に首を傾げたのは心だった。そして視線を太宰に向ける。
「太宰さん。敦さんは僕の異能を知らないのですか?」
「ああ、百聞は一見にしかず、だからね。さて、あとは警察に任せて我々は帰るとしよう」
*
ーーーー探偵社
あれから程なくして、三人は帰路に着いた。事件に巻き込まれたことで敦はどっと疲れを感じつつ、ドアを開く。
「も、戻りました」
「連れて帰ってきたよ〜」
敦に続き太宰が探偵社の外扉から事務所に入ってくる。そして太宰の後ろから、心がヘラヘラと手を振って現れた。
「皆さん只今〜」
心を知る者達はあっと声を上げる。そして口々にお帰りなさいと声がかかる。
「お帰りなさい。お久しぶりですわー」
ナオミも立ち上がり、笑顔で出迎えた。心は久しぶりです〜と笑顔を返す。他の事務員達も続き事務所は少しだけ賑やかになった。
「心、社長が呼んでるよ」
社長室から出てきた乱歩が、まだ外扉前で囲まれている心に声を掛ける。心は、乱歩さんただいま〜と手を振った。乱歩はその手を振り返す。
「あ、乱歩さん。これお土産です。チョコレート」
「善くやった! 早速もらうよ」
「皆さんの分もあるので、どうぞー」
どさっとカバンを開く。するとチョコレートの箱だらけだった。心は一箱手に取る。
「じゃあ、ご自由に。僕は社長の処に行ってきますね」
みんなにそう声をかけ、心は社長室に入って行った。皆は心の言葉に応じ、チョコレートをとり席に戻り仕事を再開する。一連の歓迎ぶりを見ていた敦は、なんだか羨ましいと思えた。
「只今、帰りました」
「戻ったぞ」
数分後、外に出ていた賢治と国木田が戻ってきた。
「太宰、敦、戻っていたか。心とは無事合流したのか?」
「ああ、もちろん。今社長のところだよ。しかも偶々起こった強盗事件も解決してきたし、働いたね。私達!」
「ほう、太宰にして珍しい」
「珍しいとは酷い!!」
「でも、心さんがほとんど片付けちゃいましたけど…」
「む」
国木田は敦の言葉に眉をひそめた。
「おい、太宰。事件を解決したのはいいが、まさかあいつまた俺の異能を…!」
「ああ、使っていたよ。あと谷崎くんの”細雪”も」
「さすが心さん。お兄様の異能のコピーも完璧ですわぁ」
ナオミが嬉しそうにいう。その言葉に敦は首を傾げた。
「コピー?」
「あ! 敦さんはまだ心さんの異能をご存知ないのないのですね」
「一体どんな異能なんですか?」
国木田は自席の椅子を引いて、パソコンを起動しながら、敦に向けて説明する。
「彼奴の異能は……”二次創作”。端的に言うと”他人の異能を真似できる”異能だ」
「へ? 他人の異能を真似?」
「敦くんも見ただろう?」
「はい、本当に谷崎さんと国木田さんの異能そのものでした。あれが本当に真似だなんて…」
「もちろん、あれほどの完成度はひとえに心君の努力による功績さ。心君が真似をするためには、対象をつぶさに観察し、異能を分析する。そして想像するという過程が必要なのだよ」
「なんだか大変そうですね」
「心の異能に対しての観察・分析力は評価できるよ。まぁ、僕には遠く及ばないけどね」
チョコレートを食べながら、乱歩は言った。
「そしてここからが面白いのだけど、彼は自分のものにするまでの過程で”その人その物を真似る”のさ」
「どういうことですか?」
敦はうまく想像出来ないのか、首を傾げた。国木田はキーボードを叩きながら言葉を挟む。
「言葉のままだ。コピーするためにその対象の人間に成りきる」
「姿は心なのに、本物みたいに見えるのが中々面白かったね」
「私はお兄様の真似をする心さんを見て、お兄様の素敵さを再確認できましたわ」
チョコを食べながらケラケラ笑う乱歩と、うっとりするナオミ。一方国木田のタイピングが強くなる。
「俺は思い出したくもない。特に太宰の真似をしているときは酷かった。あの時は苦労が数倍に膨れ上がった」
「おやおや、私としては国木田くんの真似をしているときが苦行だったよ。国木田くんが二人いるかと本気で錯覚しそうになったくらいさ」
国木田、太宰が一様に疲れた顔をする。その時のことを思い出しているのだろうか。
「そんなに似てるんですか!!?」
「皆さん褒めすぎですよ〜」
敦が驚きの声をあげた処に、社長室から心が出て来た。国木田は眼鏡をあげる。
「心、報告は終わったのか?」
「はい、今。 あっ。国木田さんお久しぶりです!」
「ああ、よく戻った。だが、お前また俺の異能を使ったらしいな」
心は、あーと己の指で己の頬を軽く掻く。
「使いました! でも国木田さんの異能、とても重宝するんです。許してください」
「もう、国木田君より扱い上手いんじゃないのー?」
太宰が悪戯顔で、茶々を入れる。国木田は一瞬ムッとしたが、心は首を振った。
「いやいやそれはないですよー、国木田さんだからこそ“独歩吟客”は美しいのです。また国木田さんが異能使うの見たいなぁ」
キラキラした笑顔で国木田の異能について語る心。国木田はパソコンへ顔を反らす。敦からは少し耳が赤いように見えた。
「心さん、お帰りなさいです!」
「賢治さん! お久しぶりです。貴方の異能、今回の遠征で活用させていただきました!! とても素晴らしかったです」
「わー! よかったです」
賢治の手を握り、心は大げさに握手する。二人ともいい笑顔だ。
*
「ふぁ〜。えらく賑やかだねぇ」
ガチャっと医務室の扉があく。その音に、心はいち早く反応した。
「与謝野先生〜!!!」
心は、伸びをしていた与謝野に飛びつく。与謝野は驚きの声をあげた。
「うわっ、って、心かい?」
「そうだよ! 只今!」
「おかえり。今日、戻ったのかい?」
与謝野の腰に抱きつく心の頭をポンポンと撫でた。その光景に敦はポカンとする。太宰はクスクスと笑う。
「心君は与謝野先生が大好きなのさ」
「おや、あんた怪我しているね」
与謝野は心の頬に手を触れる。銀行での大立ち回りの後、彼は頬から血を流していた。拭いはしたが、救急車で手当をという救急隊員の言葉を断り戻ったきたため、血が頬で固まっている状態だった。
「そうなんだ〜。与謝野先生の異能で治して!」
ワクワクと擬音が聞こえてきそうに弾む心の声。与謝野はそれにはぁっとため息をついた。
「全く…。またわざとしたんだろう。谷崎の治療中だから、普通に治療してやるよ」
「ええー…そんなぁ……」
心は心底残念そうな声を上げ、床にへたりこむ。
「相変わらずですわ、心さん」
「あの与謝野先生の治療を嬉々として受けるのは、世界でも彼奴だけだろうな」
そんな心を見て苦笑するナオミとげんなりとした瞳でみる国木田。周りの仕方ないなぁという雰囲気に与謝野の治療方法を“具体的”に知らない敦は首を傾げつつ、心の異能に対して感じたことを呟いた。
「でも、相手の異能をコピーできるなんて。無敵ですよね、そんな異能あるんだ…」
その言葉に地面にヘタリ込む心の肩がピクッと揺れる。
「心?」
与謝野はその様子を見て声をかける。心はふるふると首を横に振り、立ち上がった。少し困ったような顔をしている。
「無敵ではないですよ」
「え? どうしてですか?」
「んー……だっていうでしょ? “偽物は本物に勝てない”って」
「え!?」
「僕の異能はあくまでも物真似。“偽物”ですから」
心は軽口でニコニコと笑みを浮かべるが、敦の目には少し辛そうにも見えた。
「お前達いつまで騒いでいる、いい加減に仕事に戻れ」
「……。心、医務室行くよ」
「あ、はーい」
国木田は話を切った。同時に与謝野に呼ばれ、心は慌てた様子で、与謝野へ着いて医務室へ入っていった。話はお開きと言わんばかりに、打ち切られてしまった。
*
「さて、今日は帰ろうかなー」
んーっと伸びをする心。その声に太宰が反応する。
「あ、心君出るのかい? じゃあ、私も帰ろっ」
「太宰! 貴様はまだ仕事があるだろう」
「いいじゃないか。久々に心君が帰ってきたのに、夜誘わないのは可哀想だろう」
「! ごはんですか?」
「そう。結局、土産話を聞きそびれてしまったからね」
「わーい。行きます! 国木田さん、お願いしますー」
「……勝手にしろ」
「よーし、じゃあ行こうか」
「はーい。じゃあ、皆さんお疲れ様です」
元気よく手を振って扉を出て行った心と太宰。その様子を見ていた敦が驚いた顔をする。
「お二人とも仲がいいんですね」
「お前も近いうちに誘われるだろう」
「? 僕もですか?」
「今回は太宰が誘っていたが、いつもは心が誘う。そういう時は其奴を研究したい時だ。まぁ、質問責めにされるとかじゃなく、本当に普通に食べて飲むだけだが」
「異能のため……ってことですか?」
「嫌か? だがそんな心持ちだと彼奴と付き合うのは辛いぞ」
「?」
「彼奴は徹底的に“異能が中心”の生活をしている。彼奴の側にいればそれに付き合うことになる」
「…心さんはなんでそんなに異能が好きなんですか?」
「そんなこと知らん。本人に聞いてみろ」