“約束”は彼を縛る鎖となる
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「敦が…拐 われただと?」
「は……はい」
「く…選りによって今か」
「何かあったんですか?」
「先刻入った省庁幕僚の護衛依頼のせいで社は上から下への大騒ぎだ。捜索に割ける人手がない」
「……」
「敦の行先は掴めているのか?」
国木田の言葉に谷崎はメモ帳を取り出す。
「目撃者に拠 ると……、白昼の路上で襲われて貨物自動車 に押し込まれ……その後行方は杳 として」
「拙 いな……。連中は独自の密輸ルートを無数に持っている。人一人誰の目にも触れず運ぶくらい造作もない」
「何とか助けないとこのままでは……」
「助ける? なんで?」
焦る2人の会話をけろっとした表情で割り込んだのは乱歩だった。乱歩の言葉に国木田も谷崎も驚きの顔を見せる。
「彼が拐われたのは人虎とか懸賞とか、つまり個人的な問題からでしょ? ウチは彼専用の養護施設でじゃないし、彼も護ってもらうためにウチに入った訳じゃない」
「でも、敦君は探偵社の一員で!!」
「……乱歩さんの云う通りだ。おれたちが動くのは筋が違う」
「……」
国木田の言葉に谷崎は黙り込んだ。3人のやりとりを目にしているナオミは不機嫌な目を見せる。そして、心の服の袖を引っ張った。
「? ナオミちゃん?」
「心さん、協力してください」
心は引っ張られるまま社長室の前に立つ。
「待って、ナオミちゃん。僕…」
しかしナオミは心の言葉を無視してドアをノックする。
「社長、ナオミです」
「入れ」
「失礼します」
「!!」
「どうした?」
「敦さんが拐 われそうです」
「!」
「殿方達が決断を濁してしましたので、社長の指示を仰ぎに来ました」
堂々としたナオミの言葉。心はキョロキョロと目を動かすばかり。
「心。状況を説明しろ」
「!……も、目撃証言によると。敦さんが異能によって貨物自動車 に押し込まれ、そのまま連れ去られたとのことです。共にいた組織 の彼女も一緒にいなくなっていることから組織 の仕業であると……」
「……」
ガタッと音を立て福澤が立ち上がる。そしてナオミを連れ立って事務所へ向かって行った。心はその二人を追う形でついていく。
「警察に通報したら?」
「敦は災害指定獣として手配中です。事態が露見すれば探偵社も側杖 を」
「でも! 何かしかるべき理屈を作れば」
「あのぉー」
3人の会話に間延びしたナオミの声が届く。
「殿方の大好きな『筋』とか『べき』とかを百年議論して決めても良いのですけど……代わりにこの方は如何 ?」
「社長!?」
国木田と谷崎が声を上げる。乱歩も慌てた様子で立ち上がった。国木田は頭を下げる。
「申し訳ありません。業務が終了次第、心と谷崎と情報を集めてーーー」
「必要無い。ーーー全員聞け!!」
「「「!!!」」」
「新人が拐 かされた。全員追躡 に当たれ! 現業務は凍結とする!」
「「「凍結!!?」」」
「しかし幕僚護衛の依頼が……」
「私から連絡を入れる」
国木田の言葉に福澤が答える。不安げな国木田や所員にさらに言葉を付け足す。
「案ずるな。小役人共を待たせる程度の貸しは作ってある」
「社長〜善いのほんとに?」
「……何がだ乱歩」
「何ってそのー……理屈でいけば」
「仲間が窮地。助けねばならんーーーそれ以上に重い理屈がこの世に有るのか?」
福澤の鋭い眼光に、おず…と後ずさりする乱歩。有無を言わせぬ福澤の態度にもう閉口するしかない。
「国木田」
「はい」
「三時間で連れ戻せ」
「はい!」
国木田の返事と共に谷崎・ナオミを含めた所員が皆が一斉に敦の行方捜査に動き出す。心はその光景に一瞬足踏みした。
「心!! 花袋に防犯カメラの確認するよう連絡しろ」
「…え。あ、はい」
「……」
心は携帯を取り出し、花袋に連絡を入れる。その光景を福澤は横目で捉えていた。
*
探偵社員が会議室に集まった。机や黒板には敦誘拐についての資料が揃えらえている。その中の貨物自動車 の写真を見せながら国木田は話す。
「誘拐を目撃した観光客が偶々 撮影したものです」
「有触れた型 だ」
「はい、車台番号 も偽造でした。しかしこの横浜でこの手の偽造業者になると限られます。心当たりの修理業者に賢治が当たった所、快く教えてくれました。
貨物自動車 の所有者は、カルマ・トランジット。密輸業上がりの運び屋です」
「其奴 らに聞けば輸送先が判る、か」
「はい。組織 外で誘拐の全容を知るのは此奴 らしかいません。谷崎が調査中です」
[これから潜入します]
電話越しに谷崎の声が聞こえる。国木田は自身の受話をスピーカーに切り替えると話し始めた。
「様子は?」
[湖の底みたいに静かです。それどころか人の気配ひとつーーー]
そこで、はっと息を飲む谷崎の息遣いが聞こえる。そして砂を蹴る音、走っているようだ。
[……やられた。先手を打たれました!!]
「おい、如何 した!?」
谷崎の言動に国木田は声を荒げた。谷崎は目の前の状況に息を詰まらせつつ、なるべく冷静に努めて言葉を発する。
[口封じにーーー、全員殺されています]
「!!!」
「芥川だ……糞っ」
「どうすンだい? 唯一の手掛かりが」
与謝野の言葉をきっかけに国木田と論争が起こった。その脇を福澤が資料を手に通り過ぎる。福澤が向かったのは乱歩が座る席。
「乱歩、」
「?」
「出番だ」
乱歩は福澤が机に落とした資料を横目に不満げに言葉を発する。
「……やんないと駄目?」
「乱歩さんここはどうか……」
国木田も説得に入るが、乱歩は相変わらずやる気が出ない表情を浮かべる。
「乱歩。もし恙 なく新人を連れ戻せたらーー」
「特別賞与? 昇進? 結構ですよ。どうせ……」
「褒めてやる」
福澤はいつもの毅然とした表情を崩さないまま、そう言った。乱歩はその言葉に一瞬呆気に取られたが、すぐに笑顔になった。
「……そ、そこまで云われちゃしょーがないなぁー!」
乱歩は素早く資料の写真を手に取ると、眼鏡を掛け【超推理】を始める。答えはすぐに出た。
「……敦君が今いる場所はーーー」
乱歩は地図のとある場所に指をおいた
「「「海!!?」」」
「速度は東南東に20節 。公海に向けて進んで居る。死んではいない、今はね」
「! 船かーー!」
「輸送先は外国 か」
「拙い……。国外に運ばれたら手の出しようがない」
「港に社の高速艇が有る。今出せば間に合う」
福澤は高速艇の鍵を取り出すと国木田に投げた。国木田はそれを無言で受け取ると会議室から駆け出して行った。
「は……はい」
「く…選りによって今か」
「何かあったんですか?」
「先刻入った省庁幕僚の護衛依頼のせいで社は上から下への大騒ぎだ。捜索に割ける人手がない」
「……」
「敦の行先は掴めているのか?」
国木田の言葉に谷崎はメモ帳を取り出す。
「目撃者に
「
「何とか助けないとこのままでは……」
「助ける? なんで?」
焦る2人の会話をけろっとした表情で割り込んだのは乱歩だった。乱歩の言葉に国木田も谷崎も驚きの顔を見せる。
「彼が拐われたのは人虎とか懸賞とか、つまり個人的な問題からでしょ? ウチは彼専用の養護施設でじゃないし、彼も護ってもらうためにウチに入った訳じゃない」
「でも、敦君は探偵社の一員で!!」
「……乱歩さんの云う通りだ。おれたちが動くのは筋が違う」
「……」
国木田の言葉に谷崎は黙り込んだ。3人のやりとりを目にしているナオミは不機嫌な目を見せる。そして、心の服の袖を引っ張った。
「? ナオミちゃん?」
「心さん、協力してください」
心は引っ張られるまま社長室の前に立つ。
「待って、ナオミちゃん。僕…」
しかしナオミは心の言葉を無視してドアをノックする。
「社長、ナオミです」
「入れ」
「失礼します」
「!!」
「どうした?」
「敦さんが
「!」
「殿方達が決断を濁してしましたので、社長の指示を仰ぎに来ました」
堂々としたナオミの言葉。心はキョロキョロと目を動かすばかり。
「心。状況を説明しろ」
「!……も、目撃証言によると。敦さんが異能によって
「……」
ガタッと音を立て福澤が立ち上がる。そしてナオミを連れ立って事務所へ向かって行った。心はその二人を追う形でついていく。
「警察に通報したら?」
「敦は災害指定獣として手配中です。事態が露見すれば探偵社も
「でも! 何かしかるべき理屈を作れば」
「あのぉー」
3人の会話に間延びしたナオミの声が届く。
「殿方の大好きな『筋』とか『べき』とかを百年議論して決めても良いのですけど……代わりにこの方は
「社長!?」
国木田と谷崎が声を上げる。乱歩も慌てた様子で立ち上がった。国木田は頭を下げる。
「申し訳ありません。業務が終了次第、心と谷崎と情報を集めてーーー」
「必要無い。ーーー全員聞け!!」
「「「!!!」」」
「新人が
「「「凍結!!?」」」
「しかし幕僚護衛の依頼が……」
「私から連絡を入れる」
国木田の言葉に福澤が答える。不安げな国木田や所員にさらに言葉を付け足す。
「案ずるな。小役人共を待たせる程度の貸しは作ってある」
「社長〜善いのほんとに?」
「……何がだ乱歩」
「何ってそのー……理屈でいけば」
「仲間が窮地。助けねばならんーーーそれ以上に重い理屈がこの世に有るのか?」
福澤の鋭い眼光に、おず…と後ずさりする乱歩。有無を言わせぬ福澤の態度にもう閉口するしかない。
「国木田」
「はい」
「三時間で連れ戻せ」
「はい!」
国木田の返事と共に谷崎・ナオミを含めた所員が皆が一斉に敦の行方捜査に動き出す。心はその光景に一瞬足踏みした。
「心!! 花袋に防犯カメラの確認するよう連絡しろ」
「…え。あ、はい」
「……」
心は携帯を取り出し、花袋に連絡を入れる。その光景を福澤は横目で捉えていた。
*
探偵社員が会議室に集まった。机や黒板には敦誘拐についての資料が揃えらえている。その中の
「誘拐を目撃した観光客が
「有触れた
「はい、
「
「はい。
[これから潜入します]
電話越しに谷崎の声が聞こえる。国木田は自身の受話をスピーカーに切り替えると話し始めた。
「様子は?」
[湖の底みたいに静かです。それどころか人の気配ひとつーーー]
そこで、はっと息を飲む谷崎の息遣いが聞こえる。そして砂を蹴る音、走っているようだ。
[……やられた。先手を打たれました!!]
「おい、
谷崎の言動に国木田は声を荒げた。谷崎は目の前の状況に息を詰まらせつつ、なるべく冷静に努めて言葉を発する。
[口封じにーーー、全員殺されています]
「!!!」
「芥川だ……糞っ」
「どうすンだい? 唯一の手掛かりが」
与謝野の言葉をきっかけに国木田と論争が起こった。その脇を福澤が資料を手に通り過ぎる。福澤が向かったのは乱歩が座る席。
「乱歩、」
「?」
「出番だ」
乱歩は福澤が机に落とした資料を横目に不満げに言葉を発する。
「……やんないと駄目?」
「乱歩さんここはどうか……」
国木田も説得に入るが、乱歩は相変わらずやる気が出ない表情を浮かべる。
「乱歩。もし
「特別賞与? 昇進? 結構ですよ。どうせ……」
「褒めてやる」
福澤はいつもの毅然とした表情を崩さないまま、そう言った。乱歩はその言葉に一瞬呆気に取られたが、すぐに笑顔になった。
「……そ、そこまで云われちゃしょーがないなぁー!」
乱歩は素早く資料の写真を手に取ると、眼鏡を掛け【超推理】を始める。答えはすぐに出た。
「……敦君が今いる場所はーーー」
乱歩は地図のとある場所に指をおいた
「「「海!!?」」」
「速度は東南東に20
「! 船かーー!」
「輸送先は
「拙い……。国外に運ばれたら手の出しようがない」
「港に社の高速艇が有る。今出せば間に合う」
福澤は高速艇の鍵を取り出すと国木田に投げた。国木田はそれを無言で受け取ると会議室から駆け出して行った。