シャッキーのバーにて
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「え~~~~~~~~~~~!!?“海賊王”の船にィ~~~~!!?」
シャボンティ諸島16番G、シャッキーのバーに麦わらの一味の船長、ルフィの叫び声が響いた。
ルフィはアゴが外れるのではというくらい驚きの顔をする。そんな顔のルフィにレイリーはああっと頷く。
「副船長をやっていた…シルバーズ・レイリーだ。よろしくな」
「「「副船長~~~~!!?」」」
声を揃えて驚くクルー達。唯一ロビンが涼しい顔でクルーに尋ねた。
「――あら、気づいてなかったの?」
「その名前メチャメチャ知ってる~~~~!!!」
「いろんな本に載ってる~~~~~!!!」
「確かに誰でも一度は聞く名だ」
「………」
ウソップとナミが涙を流す。サンジとフランキーは深刻な顔をしていた。
そんなクルーを尻目に煮豆を食べながらブルックが呟く。
「ゴールド・ロジャー、そういうルーキーが昔いた様ないなかった様な……」
「何でそんな大物とタコが知り合いなんだ?」
一人、入口前のソファに座るゾロがレイリーに尋ねる。
「ハチはな…20年以上前に…私が海で遭難した所を助けてくれた」
「この人の命の恩人なのよ…まだ子供だったけどね」
「――以来コイツが“タイヨウの海賊団”に入るまで仲良くしていた」
レイリーの言葉にサンジはタバコを吸いながら疑問を抱く。
「しかしよ、ゴールド・ロジャーは22年前に処刑されたのに、副船長のあんたが討ち首にならなかったのか…。一味は海軍に捕まったんだろ?」
レイリーは静かに酒を飲む。そして言った。
「捕まったのではない………ロジャーは自首したのだ…」
「「「!!!」」」
「政府としては…力の誇示の為…あいつを捕らえたかの様に公表したかもしれんがな…」
「……“海賊王”が自首!?なんで!!?」
ナミが驚き聞く。
「……我々の旅に…限界が見えたからだ」
レイリーはロジャーについて語り出す。
その話はロジャーの不治の病に始まり、双子岬のクロッカスを仲間にし、グランドライン制覇したこと。
そして“海賊王”の称号を手にしたのは死にゆく直前だったこと。旅を終えたロジャーは海賊団の解散し、海軍本部に自首、そして故郷の海で処刑――――
「あの日の広場には…今海で名を挙げている海賊達の若き日のそうそうたる顔ぶれが並んでいたと聞く…海賊王の処刑に世界が注目していた。
――私は行かなかったよ。あいつの言った最後の言葉はこうだ…」
――おれは“死なねェ”ぜ……?相棒…
「世界政府も海軍も………驚いたろう。他の海賊達への“見せしめ”の為に行った公開処刑の場が、ロジャーの死に際のたった一言で“大海賊時代”の幕開けの式典へと一変したのだからな…!!」
――おれの財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ……探してみろ、この世の全てをそこに置いてきた!!
「残り数秒、僅かに灯った“命の火”を、奴は世界に燃え広がる“業火”に変えた」
レイリーは懐かしむように語る。
「あの日ほど笑った夜はない…!!あの日ほど泣いた夜も…
酒を飲んだ夜もない……!!我が船長ながら…見事な人生だった…………!!!」
「「「………!!」」」
一同息をのむ。シャッキーは目を瞑り、耳を傾ける。
「なんかスゴイ話聞いちゃったみたい…当事者から聞くとまた別の話みたい」
「じゃあ…まるでこの海賊時代は意図してロジャーが作ったみてェだな」
ウソップの言葉にレイリーは口角をあげる。
「……そこは“まだ”…答えかねる…ロジャーは死んだのだ」
レイリーは酒を飲む。
「今の時代を作れるのは、今を生きている人間だけだよ」
「あの日、広場でロジャーから何かを受け取った者達が確かにいるとは思うがね……」
レイリーはルフィに目を向ける。
「キミのよく知るシャンクスもその一人だろう」
「え?おっさん、シャンクス知ってんのか!?」
口一杯にモノを放り込んだルフィがレイリーに聞く。
「“イーストブルー”ならバギーという海賊も知らんか?」
「「バギー」」
バギーと言う言葉にナミとゾロが苦い顔をする。
「アレは二人共、ウチの船で見習いをやっていた」
「えー――――っ!!!シャンクスは海賊王の船にいたのか!!?」
ルフィはびっくりして口のモノが飛び出す。
「何だ…聞いとらんのか……」
レイリーはルフィに目を向ける。
「10年程前か…この島でばったりあいつと会ってな。トレードマークの麦わら帽子と……左腕が失くなってた」
「うっ」
レイリーの言葉がクザッとルフィの胸を突く。ルフィは口を抑え、食べ物を一気に飲み込んだ。
レイリーは続ける。
「理由(ワケ)を聞くと嬉しそうにキミの事を話すんだ………!!」
「?」
――レイリーさん、おれァ本当に驚いたよ!!!“イーストブルー”に……!!
ロジャー船長と同じ事を言うガキがいたんだ………!!
船長の“あの言葉”を……!!!
「まぁ、シャンクスが君に話していない事まで、私がべらべら喋るわけにはいかんのでな…。
――とにかくここまでよくたどり着いた………!!“新世界”であいつはキミを待ち詫びているだろう」
「………そうか!!…そうかな!!……おれも会いてェなァ~~~~!!!」
ルフィはシャンクスの再会を楽しみ思い、笑顔を浮かべた。
「――さて、状況も状況。船のコーティングの依頼だったな。私も今の本職を果たすとしよう……」
レイリーは立ち上がる。手当てを受けたハチが申し訳なさそうにレイリーに尋ねる。
「ニュ~~そういやコーティングって、すげェ金かかるんだけど」
「いやァいいんだ。ハチ、お前の友達から金は取らん」
「よかった…ありがとうレイリー」
「うぉー――っ!!何か知らねェがタダでいいんだと!!」
「ありがてェなそりゃ、さすが太っ腹だ」
ウソップやサンジ、ナミが笑顔で喜ぶ。ロビンが神妙な顔で立ち上がった。
「レイリーさん……質問が……!!」
「!」
「“Dの意志”って……一体何…??」
「……!!」
「空島で見た“ポーネグリフ”に古代文字を使って、ロジャーの名が刻まれていた。
彼はなぜあの文字を操れたの……!?」
ロビンの声に焦りを感じる。声が大きくなった。
「……あなた達は900年前に始まる“空白の100年”に世界に何が起きたのかを知ってるの!?」
「…………。……ああ、知っている」
「!!?」
「我々は…歴史の全てを知った…」
「…………!!!」
ロビンは心臓が高鳴るのを感じながらレイリーを見つめる。
「……――だが、お嬢さん。慌ててはいけない……。キミ達の船で…一歩ずつ進みなさい。
我々もまた……“オハラ”もまた…」
「!」
「少々…急ぎすぎたのかもしれん…」
「……」
「キミ達に今ここで…歴史の全てを私が話しても、今のキミらには…何もできやしない……!!
……ゆっくりと世界を見渡してその後、導き出す答えが我々と同じとも限らない…!!」
レイリーは静かにロビンに問う。
「――それでも聞きたいと言うならば、この世界の全てを今、話そう」
「………」
ロビンはレイリーの言葉の意味を噛み締める、そして首を横に振った。
「いいえ、やめておくわ…。旅を続ける…」
「いずれ全てが見えて来る…キミの故郷“オハラ”の事は気の毒だったな…。
――だがロジャーはあの文字を解読できたわけじゃない」
「?」
「我々は海賊。天才クローバーやオハラの学者の頭脳に敵うハズがない…」
レイリーは微笑む。
「“あいつ”はな…“万物”の声を聞けた……それだけの事…」
「………」
「だが…そうだな。もし、“あいつ”に会えることがあれば、同じことを聞いてみるといい」
「?あいつ」
「レニー・レニゲイド。我がロジャー海賊団にいた“吸血鬼”だ」
「「「吸血鬼!!?」」」
「きゅ…吸血鬼!お化けよりコワイ!!」
「ガイコツのお前が言うな!!」
「ヨホホホー!!」
「吸血鬼なんて本当に居たの!!?」
ブルックにつっこみを入れるウソップ。ナミはそれらをすべて無視し、レイリーに尋ねた。
「ああ。本人曰く、最後の“吸血鬼”だそうだが…。あいつもまた、ロジャーの最後の旅に同行してくれた大切な仲間だった」
「すげーな!!吸血鬼がいたのか!!かっくいーな!!」
ルフィが目をキラキラさせる。
「銀色の長い髪に紫の瞳。人が惹かれるであろう要素をすべて備えた美しい男だったわ」
「会ったことあるのか?」
「ええ。レイリーがよく連れてきてくれたから」
シャッキーがグラスを拭きながら、柔らかい笑顔で言った。レイリーは笑う。
「とても傲慢な奴だったがな」
「なんか…悪女を絵に描いたような奴だな」
ウソップがそういいながら隣にいるオレンジの髪に目を向ける。
「誰を見てんのよ!!」
そんなウソップの視線が刺さったのかナミが小突いた。
「はは…そうだな。女性であれば絶世の美女と言われていただろう」
「そんなに!!!」
「でも男だろ」
目をハートにしたサンジの妄想に、ゾロがボソッと釘をさす。
「それにしても傲慢ってのが引っ掛かるな。性格悪そうだぜ」
「あいつの傲慢は“誇り”に近いものだ。―――誰よりも誇りを大切にし、誰よりも仲間思いだった」
「…そのレニー・レニゲイドがロジャーの秘密を知っているの…?」
ロビンが尋ねる。レイリーは少し間をおいて答えた。
「それはわからない」
「!?」
「…ともかくレニーという奴は我々人間のあずかり知らないことを知っているのは確かだ。
そしてロジャーとも他のクルーにはわからない何かのつながりを持っていた。
ならば、さっきのキミの質問に対して私とは違う形で答えてくれるかもしれない」
「……彼はこの海にいるの?」
「ああ、たぶんな」
「たぶん?」
「そういや、仲間の消息はわからないんだっけか」
ゾロが付け加える。
「いえ。彼の消息は直前まではわかってるの」
「?」
「レニーはロジャーの自首に付き添った最後の人だから」
「「「!!!」」」
「彼と私達はここで別れたの。彼はロジャーを海軍本部へ導き、ロジャーの処刑の日もローグタウンに現れたそうよ」
「処刑の日に?」
ナミが目を見張る。シャッキーは頷くと続けた。
「ローグタウンに現れたレニーは処刑されたロジャーの首を大衆の前で喰らい、ガープと一戦を交え…その後の消息を絶っている」
「じいちゃんと…!?」
「「「……」」」
ゴクッ…と皆が息を飲む。
「そんなことがあったの…?まるで聞いたことがないわ」
「あの日の事実として世界に語られなかったことの一つさ。私もシャンクスから聞いただけだ」
「“喰った”って何だよ!!?自分の船長を食ったのか!!?」
「チョーこえー奴じゃねェかァアア!!!」
「イヤァァァァ…!!!」
「うるさーい!!!」
ナミがゴツン!!!とウソップ・チョッパー・ブルックを3人を殴った。3人の頭には大きなたんこぶができる。
サンジはタバコを灰皿に押し付けると、尋ねた。
「そこは確かに気になるな。本当に喰ったのか??」
「……真実はわからない。シャンクはレニーがそう言ったと言っていただけだからな」
「―――おっさんもシャンクスも思ってねェんだな」
「「「!」」」
「……」
ルフィの言葉に、レイリーは目を見張る。口に頬張った肉はどこへ行ったのかすっきりした顔立ちだった。
「だって、仲間思いのその吸血鬼が、船長を食うなんてことないだろ?」
「でもよ、相手は吸血鬼だぞ…!!」
「吸血鬼って人間の血を吸うって言ってたじゃねェか!!だからその吸血鬼も…」
「違う!!」
「「!?」」
「吸血鬼でもなんでもいい。でも、そいつは海賊王のクルーだったんだ。仲間だったんだ!!だろ、おっさん!!」
「…ああ、その通りだ。私もシャンクスもあのレニーがそんなことをするとは思っていない」
レイリーはルフィの言葉に静かに口を開いた。
「「「……」」」
「でも、じゃあ…なんで?」
「それはわからない。でもロジャーとレニーとの間でなにかしらの話があったのだと私達は思っているわ」
シャッキーが言う、ルフィは微笑む。
「シシシシ…!!おれ、会いてェな。その吸血鬼に」
その言葉にレイリーは酒を回しながら微笑んだ。
【16番G、シャッキーのバーにて】終
シャボンティ諸島16番G、シャッキーのバーに麦わらの一味の船長、ルフィの叫び声が響いた。
ルフィはアゴが外れるのではというくらい驚きの顔をする。そんな顔のルフィにレイリーはああっと頷く。
「副船長をやっていた…シルバーズ・レイリーだ。よろしくな」
「「「副船長~~~~!!?」」」
声を揃えて驚くクルー達。唯一ロビンが涼しい顔でクルーに尋ねた。
「――あら、気づいてなかったの?」
「その名前メチャメチャ知ってる~~~~!!!」
「いろんな本に載ってる~~~~~!!!」
「確かに誰でも一度は聞く名だ」
「………」
ウソップとナミが涙を流す。サンジとフランキーは深刻な顔をしていた。
そんなクルーを尻目に煮豆を食べながらブルックが呟く。
「ゴールド・ロジャー、そういうルーキーが昔いた様ないなかった様な……」
「何でそんな大物とタコが知り合いなんだ?」
一人、入口前のソファに座るゾロがレイリーに尋ねる。
「ハチはな…20年以上前に…私が海で遭難した所を助けてくれた」
「この人の命の恩人なのよ…まだ子供だったけどね」
「――以来コイツが“タイヨウの海賊団”に入るまで仲良くしていた」
レイリーの言葉にサンジはタバコを吸いながら疑問を抱く。
「しかしよ、ゴールド・ロジャーは22年前に処刑されたのに、副船長のあんたが討ち首にならなかったのか…。一味は海軍に捕まったんだろ?」
レイリーは静かに酒を飲む。そして言った。
「捕まったのではない………ロジャーは自首したのだ…」
「「「!!!」」」
「政府としては…力の誇示の為…あいつを捕らえたかの様に公表したかもしれんがな…」
「……“海賊王”が自首!?なんで!!?」
ナミが驚き聞く。
「……我々の旅に…限界が見えたからだ」
レイリーはロジャーについて語り出す。
その話はロジャーの不治の病に始まり、双子岬のクロッカスを仲間にし、グランドライン制覇したこと。
そして“海賊王”の称号を手にしたのは死にゆく直前だったこと。旅を終えたロジャーは海賊団の解散し、海軍本部に自首、そして故郷の海で処刑――――
「あの日の広場には…今海で名を挙げている海賊達の若き日のそうそうたる顔ぶれが並んでいたと聞く…海賊王の処刑に世界が注目していた。
――私は行かなかったよ。あいつの言った最後の言葉はこうだ…」
――おれは“死なねェ”ぜ……?相棒…
「世界政府も海軍も………驚いたろう。他の海賊達への“見せしめ”の為に行った公開処刑の場が、ロジャーの死に際のたった一言で“大海賊時代”の幕開けの式典へと一変したのだからな…!!」
――おれの財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ……探してみろ、この世の全てをそこに置いてきた!!
「残り数秒、僅かに灯った“命の火”を、奴は世界に燃え広がる“業火”に変えた」
レイリーは懐かしむように語る。
「あの日ほど笑った夜はない…!!あの日ほど泣いた夜も…
酒を飲んだ夜もない……!!我が船長ながら…見事な人生だった…………!!!」
「「「………!!」」」
一同息をのむ。シャッキーは目を瞑り、耳を傾ける。
「なんかスゴイ話聞いちゃったみたい…当事者から聞くとまた別の話みたい」
「じゃあ…まるでこの海賊時代は意図してロジャーが作ったみてェだな」
ウソップの言葉にレイリーは口角をあげる。
「……そこは“まだ”…答えかねる…ロジャーは死んだのだ」
レイリーは酒を飲む。
「今の時代を作れるのは、今を生きている人間だけだよ」
「あの日、広場でロジャーから何かを受け取った者達が確かにいるとは思うがね……」
レイリーはルフィに目を向ける。
「キミのよく知るシャンクスもその一人だろう」
「え?おっさん、シャンクス知ってんのか!?」
口一杯にモノを放り込んだルフィがレイリーに聞く。
「“イーストブルー”ならバギーという海賊も知らんか?」
「「バギー」」
バギーと言う言葉にナミとゾロが苦い顔をする。
「アレは二人共、ウチの船で見習いをやっていた」
「えー――――っ!!!シャンクスは海賊王の船にいたのか!!?」
ルフィはびっくりして口のモノが飛び出す。
「何だ…聞いとらんのか……」
レイリーはルフィに目を向ける。
「10年程前か…この島でばったりあいつと会ってな。トレードマークの麦わら帽子と……左腕が失くなってた」
「うっ」
レイリーの言葉がクザッとルフィの胸を突く。ルフィは口を抑え、食べ物を一気に飲み込んだ。
レイリーは続ける。
「理由(ワケ)を聞くと嬉しそうにキミの事を話すんだ………!!」
「?」
――レイリーさん、おれァ本当に驚いたよ!!!“イーストブルー”に……!!
ロジャー船長と同じ事を言うガキがいたんだ………!!
船長の“あの言葉”を……!!!
「まぁ、シャンクスが君に話していない事まで、私がべらべら喋るわけにはいかんのでな…。
――とにかくここまでよくたどり着いた………!!“新世界”であいつはキミを待ち詫びているだろう」
「………そうか!!…そうかな!!……おれも会いてェなァ~~~~!!!」
ルフィはシャンクスの再会を楽しみ思い、笑顔を浮かべた。
「――さて、状況も状況。船のコーティングの依頼だったな。私も今の本職を果たすとしよう……」
レイリーは立ち上がる。手当てを受けたハチが申し訳なさそうにレイリーに尋ねる。
「ニュ~~そういやコーティングって、すげェ金かかるんだけど」
「いやァいいんだ。ハチ、お前の友達から金は取らん」
「よかった…ありがとうレイリー」
「うぉー――っ!!何か知らねェがタダでいいんだと!!」
「ありがてェなそりゃ、さすが太っ腹だ」
ウソップやサンジ、ナミが笑顔で喜ぶ。ロビンが神妙な顔で立ち上がった。
「レイリーさん……質問が……!!」
「!」
「“Dの意志”って……一体何…??」
「……!!」
「空島で見た“ポーネグリフ”に古代文字を使って、ロジャーの名が刻まれていた。
彼はなぜあの文字を操れたの……!?」
ロビンの声に焦りを感じる。声が大きくなった。
「……あなた達は900年前に始まる“空白の100年”に世界に何が起きたのかを知ってるの!?」
「…………。……ああ、知っている」
「!!?」
「我々は…歴史の全てを知った…」
「…………!!!」
ロビンは心臓が高鳴るのを感じながらレイリーを見つめる。
「……――だが、お嬢さん。慌ててはいけない……。キミ達の船で…一歩ずつ進みなさい。
我々もまた……“オハラ”もまた…」
「!」
「少々…急ぎすぎたのかもしれん…」
「……」
「キミ達に今ここで…歴史の全てを私が話しても、今のキミらには…何もできやしない……!!
……ゆっくりと世界を見渡してその後、導き出す答えが我々と同じとも限らない…!!」
レイリーは静かにロビンに問う。
「――それでも聞きたいと言うならば、この世界の全てを今、話そう」
「………」
ロビンはレイリーの言葉の意味を噛み締める、そして首を横に振った。
「いいえ、やめておくわ…。旅を続ける…」
「いずれ全てが見えて来る…キミの故郷“オハラ”の事は気の毒だったな…。
――だがロジャーはあの文字を解読できたわけじゃない」
「?」
「我々は海賊。天才クローバーやオハラの学者の頭脳に敵うハズがない…」
レイリーは微笑む。
「“あいつ”はな…“万物”の声を聞けた……それだけの事…」
「………」
「だが…そうだな。もし、“あいつ”に会えることがあれば、同じことを聞いてみるといい」
「?あいつ」
「レニー・レニゲイド。我がロジャー海賊団にいた“吸血鬼”だ」
「「「吸血鬼!!?」」」
「きゅ…吸血鬼!お化けよりコワイ!!」
「ガイコツのお前が言うな!!」
「ヨホホホー!!」
「吸血鬼なんて本当に居たの!!?」
ブルックにつっこみを入れるウソップ。ナミはそれらをすべて無視し、レイリーに尋ねた。
「ああ。本人曰く、最後の“吸血鬼”だそうだが…。あいつもまた、ロジャーの最後の旅に同行してくれた大切な仲間だった」
「すげーな!!吸血鬼がいたのか!!かっくいーな!!」
ルフィが目をキラキラさせる。
「銀色の長い髪に紫の瞳。人が惹かれるであろう要素をすべて備えた美しい男だったわ」
「会ったことあるのか?」
「ええ。レイリーがよく連れてきてくれたから」
シャッキーがグラスを拭きながら、柔らかい笑顔で言った。レイリーは笑う。
「とても傲慢な奴だったがな」
「なんか…悪女を絵に描いたような奴だな」
ウソップがそういいながら隣にいるオレンジの髪に目を向ける。
「誰を見てんのよ!!」
そんなウソップの視線が刺さったのかナミが小突いた。
「はは…そうだな。女性であれば絶世の美女と言われていただろう」
「そんなに!!!」
「でも男だろ」
目をハートにしたサンジの妄想に、ゾロがボソッと釘をさす。
「それにしても傲慢ってのが引っ掛かるな。性格悪そうだぜ」
「あいつの傲慢は“誇り”に近いものだ。―――誰よりも誇りを大切にし、誰よりも仲間思いだった」
「…そのレニー・レニゲイドがロジャーの秘密を知っているの…?」
ロビンが尋ねる。レイリーは少し間をおいて答えた。
「それはわからない」
「!?」
「…ともかくレニーという奴は我々人間のあずかり知らないことを知っているのは確かだ。
そしてロジャーとも他のクルーにはわからない何かのつながりを持っていた。
ならば、さっきのキミの質問に対して私とは違う形で答えてくれるかもしれない」
「……彼はこの海にいるの?」
「ああ、たぶんな」
「たぶん?」
「そういや、仲間の消息はわからないんだっけか」
ゾロが付け加える。
「いえ。彼の消息は直前まではわかってるの」
「?」
「レニーはロジャーの自首に付き添った最後の人だから」
「「「!!!」」」
「彼と私達はここで別れたの。彼はロジャーを海軍本部へ導き、ロジャーの処刑の日もローグタウンに現れたそうよ」
「処刑の日に?」
ナミが目を見張る。シャッキーは頷くと続けた。
「ローグタウンに現れたレニーは処刑されたロジャーの首を大衆の前で喰らい、ガープと一戦を交え…その後の消息を絶っている」
「じいちゃんと…!?」
「「「……」」」
ゴクッ…と皆が息を飲む。
「そんなことがあったの…?まるで聞いたことがないわ」
「あの日の事実として世界に語られなかったことの一つさ。私もシャンクスから聞いただけだ」
「“喰った”って何だよ!!?自分の船長を食ったのか!!?」
「チョーこえー奴じゃねェかァアア!!!」
「イヤァァァァ…!!!」
「うるさーい!!!」
ナミがゴツン!!!とウソップ・チョッパー・ブルックを3人を殴った。3人の頭には大きなたんこぶができる。
サンジはタバコを灰皿に押し付けると、尋ねた。
「そこは確かに気になるな。本当に喰ったのか??」
「……真実はわからない。シャンクはレニーがそう言ったと言っていただけだからな」
「―――おっさんもシャンクスも思ってねェんだな」
「「「!」」」
「……」
ルフィの言葉に、レイリーは目を見張る。口に頬張った肉はどこへ行ったのかすっきりした顔立ちだった。
「だって、仲間思いのその吸血鬼が、船長を食うなんてことないだろ?」
「でもよ、相手は吸血鬼だぞ…!!」
「吸血鬼って人間の血を吸うって言ってたじゃねェか!!だからその吸血鬼も…」
「違う!!」
「「!?」」
「吸血鬼でもなんでもいい。でも、そいつは海賊王のクルーだったんだ。仲間だったんだ!!だろ、おっさん!!」
「…ああ、その通りだ。私もシャンクスもあのレニーがそんなことをするとは思っていない」
レイリーはルフィの言葉に静かに口を開いた。
「「「……」」」
「でも、じゃあ…なんで?」
「それはわからない。でもロジャーとレニーとの間でなにかしらの話があったのだと私達は思っているわ」
シャッキーが言う、ルフィは微笑む。
「シシシシ…!!おれ、会いてェな。その吸血鬼に」
その言葉にレイリーは酒を回しながら微笑んだ。
【16番G、シャッキーのバーにて】終