吸血鬼を仲間に
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トコナシ村がある島に到着したロジャー海賊団。森がほとんどを占めているこの島に停泊している船はロジャー達のものだけの様だ。
「船長やめましょうよ~!!」
「諦めろバギー。もう着いちまったんだ」
村に行く獣道を進みながら、挙動不審に辺りを見るバギーにクルーが笑いながら言った。
「なんだ。お前、“吸血鬼”が怖いのか?」
「あんだと!!」
バギーと同じ見習いのシャンクスが平然と言った。バギーはムキー!!と怒る。
「お前らあんまり騒ぐな。村の住人に迷惑をかけない様に少人数で来ている意味がないだろう…!!」
レイリーが騒ぐ二人に釘を刺した。ロジャーは笑う。
「いいじゃねェか、レイリー。ガキは騒ぐもんだ」
「お前がそんなんだから…」
「!!」
獣道を抜け、村に出たロジャー達。レイリーは村の様子を見て言葉を止めた。
「ロジャー、これは……」
「襲撃されたみてェだな」
レイリーの言葉にロジャーが答える。その声に先程の和気あいあいとした様子はない。それもそのはず、村は窓ガラスが割れたり、ドアが壊れたりと明らかに人の手で荒らされたことが分かる状況だったからだ。
しかもこの状況になったのはロジャー達が来るほんの少し前だったことが窺える。その証拠に傍らでは白い白衣を着た町医者らしい男がせわしなく走っていた。
「船長!」
「怪我人がいるみてェだな。てめェらはクロッカス達を呼んでこい」
ロジャーはクルーに指示を出す。側にいた3人程のクルーが駆け足で船に引き返して行った。
「おれ達も行くぞ!」
「おう!」
「待て」
「「??」」
駆け出そうとしたシャンクスとバギーをロジャーが止める。
「クロッカス達を連れて来んのにそんな人数はいらねェよ。おめェらはおれ達と一緒に来い」
ロジャーはそう言うと歩き出した。レイリーはその横を歩く。
「「………」」
シャンクスとバギーは互いに顔を見合せた首を傾げたが、それに従った。
ロジャー達は近くの村人に医者を呼んだ事を伝え、村で何があったか尋ねる。
「……なるほど。やはり海賊に襲われたのか」
話を聞いたレイリーが頷きながら言う。
「まだいるのかな?」
シャンクスが辺りを見渡す。ロジャーとレイリーは首を横に振った。
「もういねェよ」
「ああ、上陸する時に辺りに船も見当たらなかったしな。で、被害は…?」
「家が少し壊されたのと怪我人が出ただけで、死人も取られた物もありません」
「何も…?? 金なり貴重品なり取られてないのか?」
レイリーが不思議そうに尋ねる。村人は首を大きく縦に振った。
「はい…!! あの人が守って下さったので、被害は最小限で済みました」
「あの人ォ??」
村人の言葉にバギーが首を傾げる。嬉しそうにバギーの問いに答える村人の言葉にロジャーはニィっと口角を上げた。
「なァ、アンタ。悪いが、そいつの居場所を教えてくれねェか?」
村外れの森に、小屋が見える。その小屋は元々物置小屋だったのを村人達が例の“吸血鬼”のために改装した…らしい。
「ロジャー、あの小屋だ」
「とうとうご対面か」
嬉しそうに笑うロジャー。レイリーはいつも通り冷静、シャンクスは好奇心旺盛に瞳をキラキラさせている。
「(化物を仲間になんか…ちっとも嬉しくねェよ……)」
そんな一行の中にいるバギーは必死の説得すらも投げ出し、ため息をついていた。一行が小屋の前に着く。ロジャーがドアに歩み寄り、ノックしようと手を出す。
『我に何の用じゃ、小僧共』
「「「!!」」」
4人の頭上から声が降ってきた。各々が上を見上げると小屋の近くの大きな木の上から黒いフードを目深にかぶった吸血鬼が見下ろしていた。
「で、出た~~~!!! “吸血鬼”!!?」
「!!」
バギーは腰を抜かす。隣のシャンクスもとっさに腰のナイフに手を伸ばすが、ロジャーはそれを手で制し、そのまま木の上にいる吸血鬼に話しかけた。
「……てめェがこの小屋にいるっていう“吸血鬼”か?」
『如何にも。その小屋を寝床にしておる“吸血鬼”は我じゃ。海賊が何か用か?』
ロジャーはニカッと笑う。
「おれ達が海賊だとよくわかったな」
『その身なりじゃ、わからん訳あるまい。しかし…先の海賊の仲間ではない様じゃが』
「おれ達はむやみやたらに村を襲ったりしねェよ!! そんな奴らと一緒にすんな!」
『ほう…』
「!」
シャンクスが怒鳴った。そんなシャンクスを吸血鬼は見下す様に笑う。一瞬見えた鋭い八重歯にシャンクスの背筋がゾクッとした。
『まぁ、あやつらはノックなどしそうな輩ではなかったからな。―――何よりあやつらと主らとでは“血と生気”の質が違うようじゃ』
「ち…“血と生気”……!?」
バギーがいまだに腰を抜かしながら叫ぶ。吸血鬼はそれをおもしろがって脅す様に言った。
『フフ…。特に手前の二人。主らは美味そうじゃ。腹が減っておれば、喰らってやりたいところじゃが…』
名指しされたロジャーはその言葉に笑い、同じく名指しされたレイリーはため息をついて吸血鬼を見上げる。
「ダハハハ。なら喰ってみたらいいじゃねェか」
「簡単に喰われる気はないがな」
『脅しは効かぬか。まぁ…喰らう気なら話し等せず、さっさ喰らっておるからなぁ』
「「?」」
シャンクスとバギーは首を傾げる。吸血鬼はその無言の疑問に答える様に言った。
『我は必要以上の食事は取らぬと決めておる。今は“もう食事は済んだ“故、主らを喰らう気はないということじゃ』
「……。“吸血鬼”にしては“菜食主義者 ”なんだな。そう言うことには貪欲だと思ったが…」
レイリーが言う。吸血鬼は笑った。
『クッ、ハハハ…!! “菜食主義者 ”か。なかなか面白いことを言うな、若僧。なぁに惚れた弱味という奴じゃ』
吸血鬼が笑うのを見てロジャーもニィと口角をあげる。
『して、我に何用じゃ? その様子からすると、名声欲しさに我を狩りに来た訳ではあるまい』
「ああ、違うぜ!」
ロジャーは力強い声で木の上にいる吸血鬼に言った。
「お前、おれの仲間になれ……!!」
『……はぁ?』
吸血鬼はつい間の抜けた声を出した。
「おれはお前を気に入った! おれと海に出ようぜ!!」
『……』
吸血鬼はレイリーを見る。
『こやつは主らの船長 か?』
「そうだが」
『いつもこんな調子なのか?』
「……まぁな。ほしい奴は仲間にってのがロジャーだ」
レイリーが答える。吸血鬼は息をついた。
『なるほどな。ロジャーとやら…なぜ主は我を仲間にしたい?』
「お前だからだ!!」
『?』
「“吸血鬼”ってのはどんな野郎かと思ったが、てめェはなかなか面白くていい奴だ」
『……』
「だから仲間になれ!!」
『……理由になっておらんぞ』
「いいだろ? 一緒に海に出て世界を巡ろうぜ!」
吸血鬼は木の上からフッと地面に降り立つ。ロジャー達からは未だに口元しか見えない。
『断る。我は人間のままごとに興味はない』
「ままごとだと!!?」
「な、舐めんな!!」
シャクスと立ち上がったバギーがカッと怒鳴った。吸血鬼は吐き捨てる様に言う。
『小僧共、口の聞き方に気をつけよ。四半世紀も生きぬ小僧の戯れ言に付き合う程、我は寛容でない』
「あんだとー!!」
「おい、やめとけ。お前らじゃ勝てない」
レイリーが今にも掴みかかりそうな二人の頭を抑える。吸血鬼は余裕の笑みを浮かべた。
『そうじゃ、やめておけ。他人の力量すら測れぬうちは大人しくしておくものじゃ。でなければさっさと死ぬぞ…』
「やっぱりいいな、お前!」
『……我は物分かりの悪い奴は好かんぞ』
吸血鬼はロジャーがニコニコしている顔を見て、ふと尋ねる。
『主はなぜ海に出る?』
「決まってんだろ! “海賊王”になるためだ」
『“海賊王”……?? なんじゃ主はこの海を“支配”する気か?』
「“支配”なんて興味ねェよ!! おれは“自由”に海を駆けれたらいい」
『…そうか、ならばその短き命で好き駆ければよい。我を巻き込むな』
吸血鬼は“話は終わった”と言わんばかりに、ロジャー達に背を向ける。ロジャーはその背中に向けて言った。
「おめェ、“ラフテル”に興味はねェか?」
『!?……“ラフテル”じゃと…?』
吸血鬼はロジャーの言葉に踏み出そうとした足を止める。
「やっぱり知ってんだな、“ラフテル”を」
『フン。我がそれを知らぬ訳あるまい……。だが場所は知らぬ』
「いや、知らなくていいんだよ!! 宝の場所がわかってるなんて面白くねェ! 一緒に旅しながら探しゃあいいんだ」
『主らが“ラフテル”を見つけるとでもいうのか?』
「ああ、そうだ。なんたっておれ達は“ワンピース”を見つけるんだからな…!」
『……。それで主の船に乗れと言うのか? 馬鹿馬鹿しい』
「馬鹿馬鹿しくていいじゃねェか! おれ達は必ず見つける!! その気持ちさえありゃなんだって出来る!」
『……昔、ラフテルに行く事は我の一つの目的であった。だが、今やラフテルに興味はない』
「そうなのか?」
『ああ。我にとっては一つの事を除き、全ての事象がただの余興に過ぎぬのじゃよ』
「余興…」
『だから我が主らと共に行く理由はない。これで分かったか?』
「(ふむ。なかなか手強い相手のようだ)どうするロジャー?」
レイリーがロジャーに尋ねる。ロジャーはニヤッと笑った。
「ああ、考えはある」
「ほう」
『用はそれだけか? ならば……』
「おい、吸血鬼! 約束するぜ!おれ達との旅はお前が生きて来た何百年の人生ん中で一番面白い時間になる!! だからおれと来い!」
「「「!!!」」」
『何を言うて』
「お前にとって全てが余興なんだろ? なら、つまらねェ余興よりも面白い余興の方がいいじゃねェか。おれ達がお前の人生を面白くしてやるよ!!」
『っ……クククク』
吸血鬼は肩を揺らす。
『ハハハハハ…!!』
吸血鬼は大きな笑い声を出す。腹の底から笑っている様だ。吸血鬼はロジャー達の方へ振り返る。
『クク…面白い。久々に面白い人間に逢うたな』
吸血鬼は笑いを抑え、ロジャーを指差す。
『主、名を申してみよ』
「おれか? おれはゴール・D・ロジャーだ!!」
『“D”……!? なるほどな、得心したわ』
吸血鬼はそう言うとフードを脱いだ。フードの下から銀色の長い髪に色白の肌、サファイアの瞳が現れる。その人間離れした美しさにみんな一瞬目を奪われる。吸血鬼は優雅に笑った。
『よかろう…。“D”の者、よく聞け。我が名はレニー・レニゲイド。主の誘いに乗ってやる』
「本当か!」
喜ぶロジャーにレニーは、ただし…と付け加える。
『つまらぬ旅をすれば我はその代償として主らを我の血と肉の糧とする。心せよ』
「おう!」
「船長ー!! 何二つ返事でOKしてんすかぁー!!」
「いいじゃねェか! つまらん旅にはならねェからな」
バギーが叫ぶ。しかしロジャーは腹の底から大笑いしていた。
こうして“吸血鬼”レニー・レニゲイドは未来の“海賊王”と共に旅に出る。
これが伝説の始まりとも知らずに……
【吸血鬼を仲間に】終
「船長やめましょうよ~!!」
「諦めろバギー。もう着いちまったんだ」
村に行く獣道を進みながら、挙動不審に辺りを見るバギーにクルーが笑いながら言った。
「なんだ。お前、“吸血鬼”が怖いのか?」
「あんだと!!」
バギーと同じ見習いのシャンクスが平然と言った。バギーはムキー!!と怒る。
「お前らあんまり騒ぐな。村の住人に迷惑をかけない様に少人数で来ている意味がないだろう…!!」
レイリーが騒ぐ二人に釘を刺した。ロジャーは笑う。
「いいじゃねェか、レイリー。ガキは騒ぐもんだ」
「お前がそんなんだから…」
「!!」
獣道を抜け、村に出たロジャー達。レイリーは村の様子を見て言葉を止めた。
「ロジャー、これは……」
「襲撃されたみてェだな」
レイリーの言葉にロジャーが答える。その声に先程の和気あいあいとした様子はない。それもそのはず、村は窓ガラスが割れたり、ドアが壊れたりと明らかに人の手で荒らされたことが分かる状況だったからだ。
しかもこの状況になったのはロジャー達が来るほんの少し前だったことが窺える。その証拠に傍らでは白い白衣を着た町医者らしい男がせわしなく走っていた。
「船長!」
「怪我人がいるみてェだな。てめェらはクロッカス達を呼んでこい」
ロジャーはクルーに指示を出す。側にいた3人程のクルーが駆け足で船に引き返して行った。
「おれ達も行くぞ!」
「おう!」
「待て」
「「??」」
駆け出そうとしたシャンクスとバギーをロジャーが止める。
「クロッカス達を連れて来んのにそんな人数はいらねェよ。おめェらはおれ達と一緒に来い」
ロジャーはそう言うと歩き出した。レイリーはその横を歩く。
「「………」」
シャンクスとバギーは互いに顔を見合せた首を傾げたが、それに従った。
ロジャー達は近くの村人に医者を呼んだ事を伝え、村で何があったか尋ねる。
「……なるほど。やはり海賊に襲われたのか」
話を聞いたレイリーが頷きながら言う。
「まだいるのかな?」
シャンクスが辺りを見渡す。ロジャーとレイリーは首を横に振った。
「もういねェよ」
「ああ、上陸する時に辺りに船も見当たらなかったしな。で、被害は…?」
「家が少し壊されたのと怪我人が出ただけで、死人も取られた物もありません」
「何も…?? 金なり貴重品なり取られてないのか?」
レイリーが不思議そうに尋ねる。村人は首を大きく縦に振った。
「はい…!! あの人が守って下さったので、被害は最小限で済みました」
「あの人ォ??」
村人の言葉にバギーが首を傾げる。嬉しそうにバギーの問いに答える村人の言葉にロジャーはニィっと口角を上げた。
「なァ、アンタ。悪いが、そいつの居場所を教えてくれねェか?」
村外れの森に、小屋が見える。その小屋は元々物置小屋だったのを村人達が例の“吸血鬼”のために改装した…らしい。
「ロジャー、あの小屋だ」
「とうとうご対面か」
嬉しそうに笑うロジャー。レイリーはいつも通り冷静、シャンクスは好奇心旺盛に瞳をキラキラさせている。
「(化物を仲間になんか…ちっとも嬉しくねェよ……)」
そんな一行の中にいるバギーは必死の説得すらも投げ出し、ため息をついていた。一行が小屋の前に着く。ロジャーがドアに歩み寄り、ノックしようと手を出す。
『我に何の用じゃ、小僧共』
「「「!!」」」
4人の頭上から声が降ってきた。各々が上を見上げると小屋の近くの大きな木の上から黒いフードを目深にかぶった吸血鬼が見下ろしていた。
「で、出た~~~!!! “吸血鬼”!!?」
「!!」
バギーは腰を抜かす。隣のシャンクスもとっさに腰のナイフに手を伸ばすが、ロジャーはそれを手で制し、そのまま木の上にいる吸血鬼に話しかけた。
「……てめェがこの小屋にいるっていう“吸血鬼”か?」
『如何にも。その小屋を寝床にしておる“吸血鬼”は我じゃ。海賊が何か用か?』
ロジャーはニカッと笑う。
「おれ達が海賊だとよくわかったな」
『その身なりじゃ、わからん訳あるまい。しかし…先の海賊の仲間ではない様じゃが』
「おれ達はむやみやたらに村を襲ったりしねェよ!! そんな奴らと一緒にすんな!」
『ほう…』
「!」
シャンクスが怒鳴った。そんなシャンクスを吸血鬼は見下す様に笑う。一瞬見えた鋭い八重歯にシャンクスの背筋がゾクッとした。
『まぁ、あやつらはノックなどしそうな輩ではなかったからな。―――何よりあやつらと主らとでは“血と生気”の質が違うようじゃ』
「ち…“血と生気”……!?」
バギーがいまだに腰を抜かしながら叫ぶ。吸血鬼はそれをおもしろがって脅す様に言った。
『フフ…。特に手前の二人。主らは美味そうじゃ。腹が減っておれば、喰らってやりたいところじゃが…』
名指しされたロジャーはその言葉に笑い、同じく名指しされたレイリーはため息をついて吸血鬼を見上げる。
「ダハハハ。なら喰ってみたらいいじゃねェか」
「簡単に喰われる気はないがな」
『脅しは効かぬか。まぁ…喰らう気なら話し等せず、さっさ喰らっておるからなぁ』
「「?」」
シャンクスとバギーは首を傾げる。吸血鬼はその無言の疑問に答える様に言った。
『我は必要以上の食事は取らぬと決めておる。今は“もう食事は済んだ“故、主らを喰らう気はないということじゃ』
「……。“吸血鬼”にしては“
レイリーが言う。吸血鬼は笑った。
『クッ、ハハハ…!! “
吸血鬼が笑うのを見てロジャーもニィと口角をあげる。
『して、我に何用じゃ? その様子からすると、名声欲しさに我を狩りに来た訳ではあるまい』
「ああ、違うぜ!」
ロジャーは力強い声で木の上にいる吸血鬼に言った。
「お前、おれの仲間になれ……!!」
『……はぁ?』
吸血鬼はつい間の抜けた声を出した。
「おれはお前を気に入った! おれと海に出ようぜ!!」
『……』
吸血鬼はレイリーを見る。
『こやつは主らの
「そうだが」
『いつもこんな調子なのか?』
「……まぁな。ほしい奴は仲間にってのがロジャーだ」
レイリーが答える。吸血鬼は息をついた。
『なるほどな。ロジャーとやら…なぜ主は我を仲間にしたい?』
「お前だからだ!!」
『?』
「“吸血鬼”ってのはどんな野郎かと思ったが、てめェはなかなか面白くていい奴だ」
『……』
「だから仲間になれ!!」
『……理由になっておらんぞ』
「いいだろ? 一緒に海に出て世界を巡ろうぜ!」
吸血鬼は木の上からフッと地面に降り立つ。ロジャー達からは未だに口元しか見えない。
『断る。我は人間のままごとに興味はない』
「ままごとだと!!?」
「な、舐めんな!!」
シャクスと立ち上がったバギーがカッと怒鳴った。吸血鬼は吐き捨てる様に言う。
『小僧共、口の聞き方に気をつけよ。四半世紀も生きぬ小僧の戯れ言に付き合う程、我は寛容でない』
「あんだとー!!」
「おい、やめとけ。お前らじゃ勝てない」
レイリーが今にも掴みかかりそうな二人の頭を抑える。吸血鬼は余裕の笑みを浮かべた。
『そうじゃ、やめておけ。他人の力量すら測れぬうちは大人しくしておくものじゃ。でなければさっさと死ぬぞ…』
「やっぱりいいな、お前!」
『……我は物分かりの悪い奴は好かんぞ』
吸血鬼はロジャーがニコニコしている顔を見て、ふと尋ねる。
『主はなぜ海に出る?』
「決まってんだろ! “海賊王”になるためだ」
『“海賊王”……?? なんじゃ主はこの海を“支配”する気か?』
「“支配”なんて興味ねェよ!! おれは“自由”に海を駆けれたらいい」
『…そうか、ならばその短き命で好き駆ければよい。我を巻き込むな』
吸血鬼は“話は終わった”と言わんばかりに、ロジャー達に背を向ける。ロジャーはその背中に向けて言った。
「おめェ、“ラフテル”に興味はねェか?」
『!?……“ラフテル”じゃと…?』
吸血鬼はロジャーの言葉に踏み出そうとした足を止める。
「やっぱり知ってんだな、“ラフテル”を」
『フン。我がそれを知らぬ訳あるまい……。だが場所は知らぬ』
「いや、知らなくていいんだよ!! 宝の場所がわかってるなんて面白くねェ! 一緒に旅しながら探しゃあいいんだ」
『主らが“ラフテル”を見つけるとでもいうのか?』
「ああ、そうだ。なんたっておれ達は“ワンピース”を見つけるんだからな…!」
『……。それで主の船に乗れと言うのか? 馬鹿馬鹿しい』
「馬鹿馬鹿しくていいじゃねェか! おれ達は必ず見つける!! その気持ちさえありゃなんだって出来る!」
『……昔、ラフテルに行く事は我の一つの目的であった。だが、今やラフテルに興味はない』
「そうなのか?」
『ああ。我にとっては一つの事を除き、全ての事象がただの余興に過ぎぬのじゃよ』
「余興…」
『だから我が主らと共に行く理由はない。これで分かったか?』
「(ふむ。なかなか手強い相手のようだ)どうするロジャー?」
レイリーがロジャーに尋ねる。ロジャーはニヤッと笑った。
「ああ、考えはある」
「ほう」
『用はそれだけか? ならば……』
「おい、吸血鬼! 約束するぜ!おれ達との旅はお前が生きて来た何百年の人生ん中で一番面白い時間になる!! だからおれと来い!」
「「「!!!」」」
『何を言うて』
「お前にとって全てが余興なんだろ? なら、つまらねェ余興よりも面白い余興の方がいいじゃねェか。おれ達がお前の人生を面白くしてやるよ!!」
『っ……クククク』
吸血鬼は肩を揺らす。
『ハハハハハ…!!』
吸血鬼は大きな笑い声を出す。腹の底から笑っている様だ。吸血鬼はロジャー達の方へ振り返る。
『クク…面白い。久々に面白い人間に逢うたな』
吸血鬼は笑いを抑え、ロジャーを指差す。
『主、名を申してみよ』
「おれか? おれはゴール・D・ロジャーだ!!」
『“D”……!? なるほどな、得心したわ』
吸血鬼はそう言うとフードを脱いだ。フードの下から銀色の長い髪に色白の肌、サファイアの瞳が現れる。その人間離れした美しさにみんな一瞬目を奪われる。吸血鬼は優雅に笑った。
『よかろう…。“D”の者、よく聞け。我が名はレニー・レニゲイド。主の誘いに乗ってやる』
「本当か!」
喜ぶロジャーにレニーは、ただし…と付け加える。
『つまらぬ旅をすれば我はその代償として主らを我の血と肉の糧とする。心せよ』
「おう!」
「船長ー!! 何二つ返事でOKしてんすかぁー!!」
「いいじゃねェか! つまらん旅にはならねェからな」
バギーが叫ぶ。しかしロジャーは腹の底から大笑いしていた。
こうして“吸血鬼”レニー・レニゲイドは未来の“海賊王”と共に旅に出る。
これが伝説の始まりとも知らずに……
【吸血鬼を仲間に】終