1000年目の約束
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独壇場―――それはこの吸血鬼のためにある言葉のようだった。
広場に降り立ったレニーに一斉に飛びかかる海賊達。
ある者はロジャー海賊団への恨みを晴らすため。
ある者はレニーを倒すことで得られる栄誉のため。
そして誰もが心に抱く、“ワンピース”のありかを聞き出すため―――数百・数千の刃がレニーへ振り下ろされる。
そんな刃の群れに対するのは細く白い一本の刀。
レニーは白き刀“陽”で風をなでるように薙ぐ。
―――たったそれだけ
たったそれだけで、数百人の鮮血が舞い、雨とともに大地を赤く染める。
「(なんとやわからい太刀筋だ…)」
騒然とする広場で、鷹の目のように鋭い眼光を持つ男、ジュラキュール・ミホークは、レニーの殺陣をじっと見つめていた。
『…歯ごたえがないのォ』
「レニー!!」
『!――』
ドゴーン……!!
空中からガープの拳骨が振り下ろされる。 その拳をレニーはひらりとかわす、拳はそのままの勢いで地面に振り下ろされると、地面には大穴が開いた。
レニーは膝をついているガープを見下ろす。
『遅かったのォ、ガープ。主が遅い故、腑抜けな人間共を粗方片してしもうたではないか』
「……レニー!!貴様!これは何のつもりだ!!!」
地面に突き刺さった拳を抜き、振り返ったガープは怒鳴った。
レニーは先刻までその手で人を殺めていた者とは思えないような静かな顔で言う。
『主を呼ぶための餌巻きじゃ』
「なっ!?」
レニーはそういうと、“陽” の切っ先を地面に軽く刺す。
『主に話がある、付き合え―――“弐匣(ニッコウ)”』
「!」
レニーが言葉を発した瞬間、 レニーとガープを囲うように鏡の箱が形成される。
その鏡の箱は、二人を包むと巨大な造形物と化し、広場の人間達に立ちはだかった。
「……」
鏡の箱に閉じ込められたガープは辺りを見渡した。見えるのは鏡に映る自分のみ。
全面鏡張りのそこにレニーがいないのは、その存在が人外である証拠。
そんなことを考えたガープだったが、それよりも気になることがあった。
「(さっきまで聞こえていた音が…聞こえん)」
広場には海兵・海賊など、何百人もの人間がいた。なのにここでは何も聞こえない。
眉をひそめるガープにレニーは言った。
『音を“反射”しておるのじゃよ』
「!」
『我が“鏡”はただ物を映し、造形するものにあらず。
我が指定した物を“反射”する。それが我が持つ悪魔の実の真(マコト)の能力じゃ。
今は外の面の音を反射するようにしておる故、話の邪魔は入らぬよ』
「!!レニー、てめェ人の頭ん中読みやがったな!!」
ガープが怒鳴る。 レニーは顔をしかめた。
『たわけ。主の考えなど顔を見ればわかるわ』
「チッ…。で、おれに用ってのは何だ?こんな大暴れした後で、ただで済むと思ってんのか!!?」
『ただで済ます気はない。じゃから、あやつの御首(ミシルシ)を“喰うた振り”までしたのじゃ』
「なっ!?」
ガープは驚きの声を上げる。そんなガープに レニーはロジャーの御首を投げ渡した。
慌てて受け取ったガープは御首には白い布がとても丁寧に巻かれているのに気づく。
「レニー…てめェ何でこんなことを…」
『ロジャーの頼み事の件じゃ』
「!!?」
『あやつは主に言うたであろう。“あの子”と“あの子の子”を守れと…』
「!なんでそれをてめェが知ってる…!?」
『―――そのようなことは今、問題ではあるまい。我は主が約束を守る気があるのか問いたいのじゃ』
「……」
威圧的な物言い。海軍の重鎮であるガープさえも、その威圧に押されてしまった。
――ローぐタウン広場内。
「ガープ中将が捕まった!!」
「おい、早くあの箱を壊すんだ!!」
「撃て撃て!!」
ドドン!!ドドン!!
海賊達が見守る中、海兵達は鏡に大砲を撃ち込む。しかし、鏡の箱はビクともしない。
「レニーさん…大丈夫かな」
「あアア!!?何言ってんだ馬鹿シャンクス!!お前見てなかったのか!!?
レニーさん、船長の首を喰いやがったんだぞ!!!船長の首を!!!」
広場の中腹で目を見開き驚いているのは、シャンクスとバギー。バギーは身体をバラバラにしながら叫んでいる。
「レニーさんはそんなことしねェよ。お前だって知ってんだろ!」
「この馬鹿シャンクス!!今まさに見たじゃねェか!!船長の首が消えた!あれは喰ったに決まってんだろうが!!」
「あんなの嘘に決まってるだろ!!」
「嘘じゃねェだろう!!!さっき自分で“この首をもらい受けた”って言ってたじゃねェか!!あの人!!船長が言ってた通り喰いに来たんだよ!!」
「違う!」
「だー!!この分からず屋ァァア!!お前とこんなことで揉めてる場合じゃねェ!!
おれ達も喰われるかもしれねェんだ!!この混乱に乗じて逃げねェと…」
「……」
「おい聞いてんのか!!馬鹿シャンクス!!!」
シャンクスは鏡の箱の先にいるレニーに視線を送る。
「(レニーさん、アンタは一体何を考えてるんだ…??)」
――鏡の中。
「勝手にされた約束だ!何で海兵のおれがロジャーのガキを守らねェといけねェ!!」
『主の言う通りじゃ』
「は!?」
『我もあやつにそれを問うた。さすれば“ガープは信用できる”と馬鹿の一つ覚えのように言うのじゃ』
「!」
『主とロジャーの間にどのようなものがあるかは、我には関係ない…というか興味がない』
「……」
『だがな、彼女のことが絡むのであれば我は黙っていられぬのじゃよ』
「彼女…?ロジャーの女か?」
『そう、ロジャーの子を宿す女子(おなご)じゃ』
「!」
そう言うとレニーはガープの下に行き、“膝をついた”。
ガープは息をのむ。
レニーの行為は政府に、海軍に、もっと言うと人間に屈することを示している。
この自尊心が高い吸血鬼がそんなことをするなんて夢にも思わない。
膝を折り、頭を下げるレニーはガープの足元に白刀“陽”を置く。
『先に渡したロジャーの首と』
「?」
『我が首を主に捧げる』
「!?」
『この二つであの子と…腹の子を守ってはもらえんか?』
「!」
ガープは目を見張った。自分を見上げるレニーの瞳は懇願の色をしていた。さっきまでの余裕も威圧もない。
まるでただの人間が命乞いするかのように紫の瞳をガープに向けていた。
「なんでそこまで…」
『あの子は我を家族だと言ってくれた』
「!?」
『人間とは交ることのない吸血鬼…我の様な化け物をあの子は家族だと言ってくれた』
「……」
『故に我も家族を…あの子を守りたいのじゃ』
「…レニー、お前」
『ククッ…我のような化け物にも心はあるのじゃよ』
「!…」
ガープはたじろいだ。この吸血鬼がこれほど人間のように感情を見せることは今までなかったからだ。
『ガープ。ロジャーは主を信じだからこそ彼女のことを話した』
「……」
『ロジャーが主を信じるならば我も主を信じよう』
ガープは眉をひそめる。そして白い布に包まれた首を見た。
「…ロジャーの首はさっきてめェが喰ったんじゃ…」
『処刑台で喰ったのはロジャーではない。処刑人の一人じゃ』
「!!?」
『あやつは喰らってもよいと言っていっておったのじゃが…我には喰えぬよ』
「…?」
『わからぬか?あの子の愛する人間の血肉を我が喰える訳があるまい』
「レニー…お前そこまで…そこまでしてロジャーの女を守りたいのか…!!」
ガープは声を荒げたがレニーは静かに言う。
『いつからかなど覚えていないが、我は人間が好きでな。彼らと長く生きることを考えていた』
「……」
『しかしそれは叶わんかった。人間の“生”は我から見れば等しく短い。皆、出会った傍からその命を終えてゆく。
どれだけ力を尽くしても、逝ってしまう…』
レニーの人生観に初めて触れたガープはただただそれを聞き入る事しかできない。
『数百年生き、何も出来ぬことを思い知った。ある事を起こした時には全てを捨ててしまおうと思うた。
―――じゃが、そんな時にあの子に会ったのじゃ』
「……」
『我は所詮吸血鬼でしかない。彼女に“未来”を与えられぬのじゃ。
―――だが、“今”ならば、我にも何かできよう』
「!」
レニーはまっすぐガープを見た。
『ガープ。我は彼女の“今”を守りたい』
「……っ」
ガープは息を飲んだ。真っ直ぐな紫の瞳に言葉が出ない。
レニーはまた頭を垂れた。
『ここからは主の心に任せる。ロジャーの命、そして我が命に拠り所を与えてくれ』
.
広場に降り立ったレニーに一斉に飛びかかる海賊達。
ある者はロジャー海賊団への恨みを晴らすため。
ある者はレニーを倒すことで得られる栄誉のため。
そして誰もが心に抱く、“ワンピース”のありかを聞き出すため―――数百・数千の刃がレニーへ振り下ろされる。
そんな刃の群れに対するのは細く白い一本の刀。
レニーは白き刀“陽”で風をなでるように薙ぐ。
―――たったそれだけ
たったそれだけで、数百人の鮮血が舞い、雨とともに大地を赤く染める。
「(なんとやわからい太刀筋だ…)」
騒然とする広場で、鷹の目のように鋭い眼光を持つ男、ジュラキュール・ミホークは、レニーの殺陣をじっと見つめていた。
『…歯ごたえがないのォ』
「レニー!!」
『!――』
ドゴーン……!!
空中からガープの拳骨が振り下ろされる。 その拳をレニーはひらりとかわす、拳はそのままの勢いで地面に振り下ろされると、地面には大穴が開いた。
レニーは膝をついているガープを見下ろす。
『遅かったのォ、ガープ。主が遅い故、腑抜けな人間共を粗方片してしもうたではないか』
「……レニー!!貴様!これは何のつもりだ!!!」
地面に突き刺さった拳を抜き、振り返ったガープは怒鳴った。
レニーは先刻までその手で人を殺めていた者とは思えないような静かな顔で言う。
『主を呼ぶための餌巻きじゃ』
「なっ!?」
レニーはそういうと、“陽” の切っ先を地面に軽く刺す。
『主に話がある、付き合え―――“弐匣(ニッコウ)”』
「!」
レニーが言葉を発した瞬間、 レニーとガープを囲うように鏡の箱が形成される。
その鏡の箱は、二人を包むと巨大な造形物と化し、広場の人間達に立ちはだかった。
「……」
鏡の箱に閉じ込められたガープは辺りを見渡した。見えるのは鏡に映る自分のみ。
全面鏡張りのそこにレニーがいないのは、その存在が人外である証拠。
そんなことを考えたガープだったが、それよりも気になることがあった。
「(さっきまで聞こえていた音が…聞こえん)」
広場には海兵・海賊など、何百人もの人間がいた。なのにここでは何も聞こえない。
眉をひそめるガープにレニーは言った。
『音を“反射”しておるのじゃよ』
「!」
『我が“鏡”はただ物を映し、造形するものにあらず。
我が指定した物を“反射”する。それが我が持つ悪魔の実の真(マコト)の能力じゃ。
今は外の面の音を反射するようにしておる故、話の邪魔は入らぬよ』
「!!レニー、てめェ人の頭ん中読みやがったな!!」
ガープが怒鳴る。 レニーは顔をしかめた。
『たわけ。主の考えなど顔を見ればわかるわ』
「チッ…。で、おれに用ってのは何だ?こんな大暴れした後で、ただで済むと思ってんのか!!?」
『ただで済ます気はない。じゃから、あやつの御首(ミシルシ)を“喰うた振り”までしたのじゃ』
「なっ!?」
ガープは驚きの声を上げる。そんなガープに レニーはロジャーの御首を投げ渡した。
慌てて受け取ったガープは御首には白い布がとても丁寧に巻かれているのに気づく。
「レニー…てめェ何でこんなことを…」
『ロジャーの頼み事の件じゃ』
「!!?」
『あやつは主に言うたであろう。“あの子”と“あの子の子”を守れと…』
「!なんでそれをてめェが知ってる…!?」
『―――そのようなことは今、問題ではあるまい。我は主が約束を守る気があるのか問いたいのじゃ』
「……」
威圧的な物言い。海軍の重鎮であるガープさえも、その威圧に押されてしまった。
――ローぐタウン広場内。
「ガープ中将が捕まった!!」
「おい、早くあの箱を壊すんだ!!」
「撃て撃て!!」
ドドン!!ドドン!!
海賊達が見守る中、海兵達は鏡に大砲を撃ち込む。しかし、鏡の箱はビクともしない。
「レニーさん…大丈夫かな」
「あアア!!?何言ってんだ馬鹿シャンクス!!お前見てなかったのか!!?
レニーさん、船長の首を喰いやがったんだぞ!!!船長の首を!!!」
広場の中腹で目を見開き驚いているのは、シャンクスとバギー。バギーは身体をバラバラにしながら叫んでいる。
「レニーさんはそんなことしねェよ。お前だって知ってんだろ!」
「この馬鹿シャンクス!!今まさに見たじゃねェか!!船長の首が消えた!あれは喰ったに決まってんだろうが!!」
「あんなの嘘に決まってるだろ!!」
「嘘じゃねェだろう!!!さっき自分で“この首をもらい受けた”って言ってたじゃねェか!!あの人!!船長が言ってた通り喰いに来たんだよ!!」
「違う!」
「だー!!この分からず屋ァァア!!お前とこんなことで揉めてる場合じゃねェ!!
おれ達も喰われるかもしれねェんだ!!この混乱に乗じて逃げねェと…」
「……」
「おい聞いてんのか!!馬鹿シャンクス!!!」
シャンクスは鏡の箱の先にいるレニーに視線を送る。
「(レニーさん、アンタは一体何を考えてるんだ…??)」
――鏡の中。
「勝手にされた約束だ!何で海兵のおれがロジャーのガキを守らねェといけねェ!!」
『主の言う通りじゃ』
「は!?」
『我もあやつにそれを問うた。さすれば“ガープは信用できる”と馬鹿の一つ覚えのように言うのじゃ』
「!」
『主とロジャーの間にどのようなものがあるかは、我には関係ない…というか興味がない』
「……」
『だがな、彼女のことが絡むのであれば我は黙っていられぬのじゃよ』
「彼女…?ロジャーの女か?」
『そう、ロジャーの子を宿す女子(おなご)じゃ』
「!」
そう言うとレニーはガープの下に行き、“膝をついた”。
ガープは息をのむ。
レニーの行為は政府に、海軍に、もっと言うと人間に屈することを示している。
この自尊心が高い吸血鬼がそんなことをするなんて夢にも思わない。
膝を折り、頭を下げるレニーはガープの足元に白刀“陽”を置く。
『先に渡したロジャーの首と』
「?」
『我が首を主に捧げる』
「!?」
『この二つであの子と…腹の子を守ってはもらえんか?』
「!」
ガープは目を見張った。自分を見上げるレニーの瞳は懇願の色をしていた。さっきまでの余裕も威圧もない。
まるでただの人間が命乞いするかのように紫の瞳をガープに向けていた。
「なんでそこまで…」
『あの子は我を家族だと言ってくれた』
「!?」
『人間とは交ることのない吸血鬼…我の様な化け物をあの子は家族だと言ってくれた』
「……」
『故に我も家族を…あの子を守りたいのじゃ』
「…レニー、お前」
『ククッ…我のような化け物にも心はあるのじゃよ』
「!…」
ガープはたじろいだ。この吸血鬼がこれほど人間のように感情を見せることは今までなかったからだ。
『ガープ。ロジャーは主を信じだからこそ彼女のことを話した』
「……」
『ロジャーが主を信じるならば我も主を信じよう』
ガープは眉をひそめる。そして白い布に包まれた首を見た。
「…ロジャーの首はさっきてめェが喰ったんじゃ…」
『処刑台で喰ったのはロジャーではない。処刑人の一人じゃ』
「!!?」
『あやつは喰らってもよいと言っていっておったのじゃが…我には喰えぬよ』
「…?」
『わからぬか?あの子の愛する人間の血肉を我が喰える訳があるまい』
「レニー…お前そこまで…そこまでしてロジャーの女を守りたいのか…!!」
ガープは声を荒げたがレニーは静かに言う。
『いつからかなど覚えていないが、我は人間が好きでな。彼らと長く生きることを考えていた』
「……」
『しかしそれは叶わんかった。人間の“生”は我から見れば等しく短い。皆、出会った傍からその命を終えてゆく。
どれだけ力を尽くしても、逝ってしまう…』
レニーの人生観に初めて触れたガープはただただそれを聞き入る事しかできない。
『数百年生き、何も出来ぬことを思い知った。ある事を起こした時には全てを捨ててしまおうと思うた。
―――じゃが、そんな時にあの子に会ったのじゃ』
「……」
『我は所詮吸血鬼でしかない。彼女に“未来”を与えられぬのじゃ。
―――だが、“今”ならば、我にも何かできよう』
「!」
レニーはまっすぐガープを見た。
『ガープ。我は彼女の“今”を守りたい』
「……っ」
ガープは息を飲んだ。真っ直ぐな紫の瞳に言葉が出ない。
レニーはまた頭を垂れた。
『ここからは主の心に任せる。ロジャーの命、そして我が命に拠り所を与えてくれ』
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