己の幕を引く場所
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ルージュと別れた3人は数日の航海を経てシャボンティ諸島のシャッキーのバーを訪れる。
ここでレイリーと別れることになったのだ。
「ここまですんなり来れたんですってね。レイリーがいるのに珍しいわね」
シャッキーはそう言うとバーの外にある樽に腰掛け、紫煙をたてる。ロジャー達が嵐に遭うこともなく、まっすぐシャボンティ諸島に来れたことに素直に驚いているようだ。
『簡単な話じゃ。世界がそれを許しただけのこと』
シャッキーからドアを挟んだ隣の壁にもたれているレニーが言った。今のレニーはフードを取り、銀色の髪を晒している。陽の光を浴びる銀髪はキラキラと光った。
「“世界”が?」
シャッキーが尋ねる。レニーはシャボン玉が浮かぶ空を見上げた。
『そうじゃ。世界が我らの行動に力を貸しておる』
「あなた達の行動……つまりロジャーが自首をすることを?」
『そうであろうな』
「“万物”が言っているのね」
『……さぁな。だが例え万物があやつに囁こうが、それに頷くかどうかはロジャー次第。故にロジャーの考えに万物が賛成したと考える方が容易い』
「フフ…。彼は海だけでなく万物まで味方につけちゃうんだ」
シャッキー目を細める。一方のレニーは表情を変えず、静かに視線を遠くに投げた。
『しかし万物に好かれ過ぎるのは考えものじゃな。それによりあやつは己の生をさらに短くする羽目になった』
「……。さっきの言葉、少し訂正するわ」
『?』
そう言ったシャッキーは2本目のタバコに火を点け、フーッと息を吐く。
「ロジャーは海も万物も…そして“吸血鬼”も味方につけちゃうのね!」
『!』
レニーは目をシャッキーに向ける。レニーの訝しげな視線を気にも止めず、シャッキーは言った。
「レニー、あなたは人間がとても好きなのね」
『……』
「それはルージュちゃんのおかげ?それとも中の2人のおかげかしら??」
『…さァな』
レニーの愛想のない相槌にシャッキーはニコッと笑って返す。そして話題を変えた。
「ところで、レニー。あなたはロジャーの件が終わったらここに帰って来るの?」
シャッキーの言葉にレニーは首を横に振る。
『我は事が終わり次第、航路を迂回をしてあの子の下へ帰る。約束の刻限が迫っておるのでな』
「そう……残念だわ」
シャッキーは素直に言葉を発した。そんな2人の会話を割るようにキィイ…とドアが開く。
「レニー、行くぜ!」
ドアから出てきたのはロジャー。ニンッといつも通りの笑顔だ。
「あら、もう話は終わったの?」
シャッキーがそう尋ねるとロジャーはああ、待たせたなっと軽い調子で答えた。
「レニー」
『!何じゃ?』
バーのカウンターに腰掛けたままのレイリーが、レニーを呼ぶ。そのレイリーの手には酒瓶が掲げられていた。
「おれはここまでだが、ロジャーと…船を頼む。お前に破壊されるならあの船も本望だろう。海軍には渡すなよ」
『……その様なヘマはせぬ。安心しろ』
レニーは頷く。樽の上に座っていたシャッキーは埃を払いながら立ち上がった。
「見送りはここでいい?」
「おう。シャッキー、レイリーを頼むぜ」
「ええ。…また来てね」
ロジャーはその言葉にニンッと笑った。
「じゃあまたな、シャッキー!レイリー!!」
ロジャーは、シャッキーとレイリーに向け手を振る。シャッキーは紫煙をくゆらせながらそれを返した。
「……またな、ロジャー」
バーにいるレイリーはカウンターに向きなおり酒を飲む。去っていく友、ロジャーとは今生の別れだとわかっていたが、それでも彼は振り向くことなくその背で友を見送った。
「なぁ、レニー。お前は不老不死なのか??」
『?何を呆けたことを言うておるのだ?主は』
シャボンティ諸島を出航した船の梶を取るレニーはロジャーの質問にそう答えた。ロジャーは首を傾げる。
「ん?違うのか??」
『はぁ…ロジャーよ、この世に無限なものはない。生があるものには必ずその生に期限がある。我ら吸血鬼はただその生が主ら人間より“数百年”長いだけじゃ』
「…数百年か。おれにしたら不老不死だがな。それって長すぎねェか?」
『フン……。我に言わせれば主らの生はあまりにも短い。人間は赤子も同然じゃ。しかも主のように短き生をさらに短くする輩もおるしな』
レニーの皮肉にロジャーは笑った。レニーは舵を取りながら、目の前に見える海へ目をやる。
『だが、それが“人間”じゃと我は思う』
「?」
『人間は他の動物と同じように進化する。じゃが、その進化の度合いが飛びぬけておる。たった一代を跨ぐだけで新しい者が現れ、また進化する。その進化のスピード故に万物が主らに与えた生の時間は我らよりも短いのだ…と我は思おておる』
「……吸血鬼は出来ねェのか?」
『出来ぬ。我らの前提は“不変”じゃ。何も変わらぬが故に、我らが成せるのは“朽ちる”ことだけ。その朽ちるまでの期間がたかだか数百年であると言うことじゃ』
「……」
ロジャーの表情が厳しくなる。レニーは鼻で笑った。
『何をつまらぬ顔をしておる。我は己の境遇を嘆いてはおらんぞ。それ以上に我は自身が“吸血鬼”であることを誇りに思っておるのじゃ』
「誇り…??“朽ちる”ことがか?」
『そう。朽ちることに我は誇りを持つ。まぁ、赤子に満たない主にはわからんじゃろうな』
レニーの口が弧を描く。ロジャーを小馬鹿にしているようだ。ロジャーもわかっているのか、ケッと口を尖らせた。
「へん!!その赤子に驚かせられる日が来るかもしれないぜ」
『フン。今さら主の何に驚くことがある?』
「いつかわかるってことよ!」
『……?』
自信満々のロジャーにレニーは怪訝な顔をする。ロジャーはレニーから目を逸らすと甲板から海を見た。
目的地である海軍本部を肉眼で確認出来る距離まで来ていた。
「見えて来たな。レニー…!!」
『…わかっておる』
レニーはため息まじりに頷くと白い刀“陽”を取り出し、フッと軽く風を薙ぐ。
瞬間、ピッとメインマストにくくりつけていた縄が切れる。布を巻いていた縄だ。縄の制約を逃れた布は、その真っ赤な顔をメインマストいっぱいに広げた。
バサッ……!!
「さあ、これが最後の航海だ!オーロ・ジャクソン号!!」
メインマストに広がった帆はロジャー海賊団のトレードマークの赤、そして自身のジョリーロジャーが描かれたもの。ロジャー海賊団を解体した時に封印した、あの時の旗だ。
まもなく海軍本部から警報が鳴る。見張りをしていた海兵達がロジャーの船を見て飛びあがったのだろう。
ロジャーは手を目に向けた。
「レニー!海軍本部の目の前につけるぞ!!」
『承知』
レニーは舵を海軍本部正面に切る。程なくして本部からは軍艦が数隻こちらに向かって来るのが見えた。
『あれはどうする?』
「まっすぐ海軍本部に行く。進路は曲げねェぞ」
ロジャーはニヤッと悪い笑みを浮かべる。お前なら出来るだろ?と言わんばかりだ。レニーはガチッと舵を固定した。
『…フン。舐められたものじゃ』
レニーはそう言って船首に立つ。ロジャーが後ろで笑顔で見守る中、白刀“陽”を抜いた。
『“覇土歩須人(ハートポスト)”』
ズバババババババー―……ン!!!
水上を斬撃が駆け抜ける。2線の斬撃はオーロ・ジャクソン号を左右から狙う軍艦を次々破壊した。
『これでよいのであろう、ロジャー』
「シシシ…!!さすがだな」
左右に立ち上がる巨大な水しぶき。オーロ・ジャクソン号はその間の道の様にまっすぐ本部に伸びる海を悠然と走る。
そして……ロジャー達は堂々と海軍本部の正面に乗りつけた。
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ここでレイリーと別れることになったのだ。
「ここまですんなり来れたんですってね。レイリーがいるのに珍しいわね」
シャッキーはそう言うとバーの外にある樽に腰掛け、紫煙をたてる。ロジャー達が嵐に遭うこともなく、まっすぐシャボンティ諸島に来れたことに素直に驚いているようだ。
『簡単な話じゃ。世界がそれを許しただけのこと』
シャッキーからドアを挟んだ隣の壁にもたれているレニーが言った。今のレニーはフードを取り、銀色の髪を晒している。陽の光を浴びる銀髪はキラキラと光った。
「“世界”が?」
シャッキーが尋ねる。レニーはシャボン玉が浮かぶ空を見上げた。
『そうじゃ。世界が我らの行動に力を貸しておる』
「あなた達の行動……つまりロジャーが自首をすることを?」
『そうであろうな』
「“万物”が言っているのね」
『……さぁな。だが例え万物があやつに囁こうが、それに頷くかどうかはロジャー次第。故にロジャーの考えに万物が賛成したと考える方が容易い』
「フフ…。彼は海だけでなく万物まで味方につけちゃうんだ」
シャッキー目を細める。一方のレニーは表情を変えず、静かに視線を遠くに投げた。
『しかし万物に好かれ過ぎるのは考えものじゃな。それによりあやつは己の生をさらに短くする羽目になった』
「……。さっきの言葉、少し訂正するわ」
『?』
そう言ったシャッキーは2本目のタバコに火を点け、フーッと息を吐く。
「ロジャーは海も万物も…そして“吸血鬼”も味方につけちゃうのね!」
『!』
レニーは目をシャッキーに向ける。レニーの訝しげな視線を気にも止めず、シャッキーは言った。
「レニー、あなたは人間がとても好きなのね」
『……』
「それはルージュちゃんのおかげ?それとも中の2人のおかげかしら??」
『…さァな』
レニーの愛想のない相槌にシャッキーはニコッと笑って返す。そして話題を変えた。
「ところで、レニー。あなたはロジャーの件が終わったらここに帰って来るの?」
シャッキーの言葉にレニーは首を横に振る。
『我は事が終わり次第、航路を迂回をしてあの子の下へ帰る。約束の刻限が迫っておるのでな』
「そう……残念だわ」
シャッキーは素直に言葉を発した。そんな2人の会話を割るようにキィイ…とドアが開く。
「レニー、行くぜ!」
ドアから出てきたのはロジャー。ニンッといつも通りの笑顔だ。
「あら、もう話は終わったの?」
シャッキーがそう尋ねるとロジャーはああ、待たせたなっと軽い調子で答えた。
「レニー」
『!何じゃ?』
バーのカウンターに腰掛けたままのレイリーが、レニーを呼ぶ。そのレイリーの手には酒瓶が掲げられていた。
「おれはここまでだが、ロジャーと…船を頼む。お前に破壊されるならあの船も本望だろう。海軍には渡すなよ」
『……その様なヘマはせぬ。安心しろ』
レニーは頷く。樽の上に座っていたシャッキーは埃を払いながら立ち上がった。
「見送りはここでいい?」
「おう。シャッキー、レイリーを頼むぜ」
「ええ。…また来てね」
ロジャーはその言葉にニンッと笑った。
「じゃあまたな、シャッキー!レイリー!!」
ロジャーは、シャッキーとレイリーに向け手を振る。シャッキーは紫煙をくゆらせながらそれを返した。
「……またな、ロジャー」
バーにいるレイリーはカウンターに向きなおり酒を飲む。去っていく友、ロジャーとは今生の別れだとわかっていたが、それでも彼は振り向くことなくその背で友を見送った。
「なぁ、レニー。お前は不老不死なのか??」
『?何を呆けたことを言うておるのだ?主は』
シャボンティ諸島を出航した船の梶を取るレニーはロジャーの質問にそう答えた。ロジャーは首を傾げる。
「ん?違うのか??」
『はぁ…ロジャーよ、この世に無限なものはない。生があるものには必ずその生に期限がある。我ら吸血鬼はただその生が主ら人間より“数百年”長いだけじゃ』
「…数百年か。おれにしたら不老不死だがな。それって長すぎねェか?」
『フン……。我に言わせれば主らの生はあまりにも短い。人間は赤子も同然じゃ。しかも主のように短き生をさらに短くする輩もおるしな』
レニーの皮肉にロジャーは笑った。レニーは舵を取りながら、目の前に見える海へ目をやる。
『だが、それが“人間”じゃと我は思う』
「?」
『人間は他の動物と同じように進化する。じゃが、その進化の度合いが飛びぬけておる。たった一代を跨ぐだけで新しい者が現れ、また進化する。その進化のスピード故に万物が主らに与えた生の時間は我らよりも短いのだ…と我は思おておる』
「……吸血鬼は出来ねェのか?」
『出来ぬ。我らの前提は“不変”じゃ。何も変わらぬが故に、我らが成せるのは“朽ちる”ことだけ。その朽ちるまでの期間がたかだか数百年であると言うことじゃ』
「……」
ロジャーの表情が厳しくなる。レニーは鼻で笑った。
『何をつまらぬ顔をしておる。我は己の境遇を嘆いてはおらんぞ。それ以上に我は自身が“吸血鬼”であることを誇りに思っておるのじゃ』
「誇り…??“朽ちる”ことがか?」
『そう。朽ちることに我は誇りを持つ。まぁ、赤子に満たない主にはわからんじゃろうな』
レニーの口が弧を描く。ロジャーを小馬鹿にしているようだ。ロジャーもわかっているのか、ケッと口を尖らせた。
「へん!!その赤子に驚かせられる日が来るかもしれないぜ」
『フン。今さら主の何に驚くことがある?』
「いつかわかるってことよ!」
『……?』
自信満々のロジャーにレニーは怪訝な顔をする。ロジャーはレニーから目を逸らすと甲板から海を見た。
目的地である海軍本部を肉眼で確認出来る距離まで来ていた。
「見えて来たな。レニー…!!」
『…わかっておる』
レニーはため息まじりに頷くと白い刀“陽”を取り出し、フッと軽く風を薙ぐ。
瞬間、ピッとメインマストにくくりつけていた縄が切れる。布を巻いていた縄だ。縄の制約を逃れた布は、その真っ赤な顔をメインマストいっぱいに広げた。
バサッ……!!
「さあ、これが最後の航海だ!オーロ・ジャクソン号!!」
メインマストに広がった帆はロジャー海賊団のトレードマークの赤、そして自身のジョリーロジャーが描かれたもの。ロジャー海賊団を解体した時に封印した、あの時の旗だ。
まもなく海軍本部から警報が鳴る。見張りをしていた海兵達がロジャーの船を見て飛びあがったのだろう。
ロジャーは手を目に向けた。
「レニー!海軍本部の目の前につけるぞ!!」
『承知』
レニーは舵を海軍本部正面に切る。程なくして本部からは軍艦が数隻こちらに向かって来るのが見えた。
『あれはどうする?』
「まっすぐ海軍本部に行く。進路は曲げねェぞ」
ロジャーはニヤッと悪い笑みを浮かべる。お前なら出来るだろ?と言わんばかりだ。レニーはガチッと舵を固定した。
『…フン。舐められたものじゃ』
レニーはそう言って船首に立つ。ロジャーが後ろで笑顔で見守る中、白刀“陽”を抜いた。
『“覇土歩須人(ハートポスト)”』
ズバババババババー―……ン!!!
水上を斬撃が駆け抜ける。2線の斬撃はオーロ・ジャクソン号を左右から狙う軍艦を次々破壊した。
『これでよいのであろう、ロジャー』
「シシシ…!!さすがだな」
左右に立ち上がる巨大な水しぶき。オーロ・ジャクソン号はその間の道の様にまっすぐ本部に伸びる海を悠然と走る。
そして……ロジャー達は堂々と海軍本部の正面に乗りつけた。
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