【過去】吸血鬼と少女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――――――――
――――――
『なんじゃ、まだ起きておったのか』
「あ、レニー! おかえり」
食事を終え帰宅したレニーの驚きを余所に、ルージュは笑顔でレニーを迎える。ルージュのいるキッチンに目をやると空になった酒瓶が幾つか並んでいた。
『酒盛りでもしておったのか?』
「うん♪」
『ふむ……あやつらは?』
「レイリーさんはまだ飲み足りないって外に飲みに行ってる。ロジャーさんは一足先に休んでるわ」
『……。すっかり馴染んでおるのォ』
自由人な二人の顔を思い出しながら、レニーは呆れた表情を浮かべた。ルージュは笑う。
「フフ……二人が来てからだいぶ経つもの。馴染んでもおかしくないわ」
『そう言うものかのォ』
レニーはそう言いながらテーブルについた。ルージュは向かいのキッチンから酒を取り出す。
「レニー、お酒飲む?」
『そうじゃな。一杯もらおう』
「はぁい」
ルージュは明るく返事を返すとキッチンでグラスに酒を注ぎ、差し出した。 レニーはその酒を一口飲むとグラスを机に置き、キッチンに戻ったルージュに尋ねる。
『あやつらに苦労はしておらぬか?』
「うん。それどころか毎日がとっても楽しいわ」
『そうか……。ならよい』
「ロジャーさん達と一緒に過ごしてると、レニーがロジャーさん達の仲間になった気持ちがわかる気がするの」
『……』
レニーはバツが悪そうに視線を反らし、酒に口をつけた。ルージュはそんなレニーの反応に笑みを零す。
「そうそう。今日ね、ロジャーさんとレイリーさんに私とレニーの出会った時の話をしたの」
『ほう…。えらく懐かしい話じゃな』
「レニーも覚えてるの?」
その言葉にレニーは目を細める。
『ああ、覚えておるよ。あの時のルージュはなかなか可愛げのあるお嬢ちゃんじゃったからな』
「あら、悪かったわね。今は可愛げがなくて」
頬を膨らますルージュ。レニーはそんなルージュにニヤリと口角を上げた。
『ククッ…!! 相も変わらず、からかい甲斐がある嬢ちゃんじゃ』
「もう!」
『怒るな』
「怒ってないわ」
『フッ…。主は綺麗な嬢ちゃんになったが中身は可愛らしいままじゃな』
「!」
ルージュは頬を赤く染める。レニーは笑った。
『人間の男はほっとくまい。おらぬのか、そのような男は』
「!!……いるって言ったらどうするの?」
ルージュはレニーを試すように尋ね返す。レニーは至って自然に答えた。
『良いのではないか、人間は他者を好いて生きる生き物じゃ。なにより…――我は主が幸せならばそれで良い』
「……レニー……」
『だが、会うてはみたいの。主の心を射止めた男を』
「……じゃあ、いつか会わせてあげるね」
『ああ。だが、そやつが我のような存在を拒むのであれば会う必要はない』
「え?」
『我は吸血鬼。不変の生き物じゃ。不気味に思う奴もおるじゃろう』
レニーは先程の笑顔とは対照的に静かに微笑んだ。
「そんな人、選んだりしない」
『!』
ルージュは言葉の語尾を強く、レニーの言葉を否定する。
「レニーは私の家族だよ。家族を拒む人を私は好きにならないわ!」
『……ルージュ。嬉しい言葉じゃが、我の事は気にするな。我は主が主らしく生きることを望んでおる』
ルージュは目を伏せる。そして呟いた。
「……ズルイよ。私だってレニーに幸せになってほしいのに」
『?』
呟いたその言葉はレニーには届かないくらい小さかった。ルージュは顔をあげると眉をひそめているレニーの名を呼んだ。
「レニー」
『なんじゃ?』
「さっきの話の続き。私ね、思い出したことがあったの」
『??』
レニーは首を傾げる。ルージュはキッチンを出て、レニーの正面に立った。
「あの頃、私…神様に会ってたんだよ」
『ほう…。我は会わんかったな。どんな奴じゃった?』
「……うん。私が見た神様はね。傲慢で子供にも妥協がなくて…」
『?』
―――これなぁに?
――こんなことも知らんのか。主は無知だな
―――むー。
「でも、子供からもらったプレゼントは大切にずっと持っててね」
―――今日もつけてくれてるんだね!
――フン。着けなければ主の機嫌が悪くなるじゃろうが
『……』
「本当は、すごくすごく優しくて淋しがり屋なの。……だからこんな小娘のために投げ出しかけた命をまた伸ばしてくれた」
『……。待てルージュ、それは』
レニーはルージュの言葉を遮ろうと声を発する。しかしルージュは自分の唇に人差し指をおき静かにっと言うジェスチャーを取った。
それを受けレニーは口を閉じる。ルージュはキレイな笑顔でレニーに笑いかけると、明るい声で言った。
「私が初めて出会った神様はレニー、あなただよ」
【吸血鬼と少女】
あの日…洞窟を抜けた先にいたのは、輝く銀髪に引き込まれそうな紫の瞳、人形の様な整った顔を持つ美しい人。神と言う者がこの世界にいて目に見えるのなら、きっとこんな感じなのだとルージュは無意識に思った。
だから尋ねたのだ。
―――あなたが神様?
『あまり年長者をからかうではない』
立ち上がり、照れ隠しに頭を撫でるレニー。ルージュはそんな優しい吸血鬼にまた綺麗な笑みを見せた。
【吸血鬼と少女】終
――――――
『なんじゃ、まだ起きておったのか』
「あ、レニー! おかえり」
食事を終え帰宅したレニーの驚きを余所に、ルージュは笑顔でレニーを迎える。ルージュのいるキッチンに目をやると空になった酒瓶が幾つか並んでいた。
『酒盛りでもしておったのか?』
「うん♪」
『ふむ……あやつらは?』
「レイリーさんはまだ飲み足りないって外に飲みに行ってる。ロジャーさんは一足先に休んでるわ」
『……。すっかり馴染んでおるのォ』
自由人な二人の顔を思い出しながら、レニーは呆れた表情を浮かべた。ルージュは笑う。
「フフ……二人が来てからだいぶ経つもの。馴染んでもおかしくないわ」
『そう言うものかのォ』
レニーはそう言いながらテーブルについた。ルージュは向かいのキッチンから酒を取り出す。
「レニー、お酒飲む?」
『そうじゃな。一杯もらおう』
「はぁい」
ルージュは明るく返事を返すとキッチンでグラスに酒を注ぎ、差し出した。 レニーはその酒を一口飲むとグラスを机に置き、キッチンに戻ったルージュに尋ねる。
『あやつらに苦労はしておらぬか?』
「うん。それどころか毎日がとっても楽しいわ」
『そうか……。ならよい』
「ロジャーさん達と一緒に過ごしてると、レニーがロジャーさん達の仲間になった気持ちがわかる気がするの」
『……』
レニーはバツが悪そうに視線を反らし、酒に口をつけた。ルージュはそんなレニーの反応に笑みを零す。
「そうそう。今日ね、ロジャーさんとレイリーさんに私とレニーの出会った時の話をしたの」
『ほう…。えらく懐かしい話じゃな』
「レニーも覚えてるの?」
その言葉にレニーは目を細める。
『ああ、覚えておるよ。あの時のルージュはなかなか可愛げのあるお嬢ちゃんじゃったからな』
「あら、悪かったわね。今は可愛げがなくて」
頬を膨らますルージュ。レニーはそんなルージュにニヤリと口角を上げた。
『ククッ…!! 相も変わらず、からかい甲斐がある嬢ちゃんじゃ』
「もう!」
『怒るな』
「怒ってないわ」
『フッ…。主は綺麗な嬢ちゃんになったが中身は可愛らしいままじゃな』
「!」
ルージュは頬を赤く染める。レニーは笑った。
『人間の男はほっとくまい。おらぬのか、そのような男は』
「!!……いるって言ったらどうするの?」
ルージュはレニーを試すように尋ね返す。レニーは至って自然に答えた。
『良いのではないか、人間は他者を好いて生きる生き物じゃ。なにより…――我は主が幸せならばそれで良い』
「……レニー……」
『だが、会うてはみたいの。主の心を射止めた男を』
「……じゃあ、いつか会わせてあげるね」
『ああ。だが、そやつが我のような存在を拒むのであれば会う必要はない』
「え?」
『我は吸血鬼。不変の生き物じゃ。不気味に思う奴もおるじゃろう』
レニーは先程の笑顔とは対照的に静かに微笑んだ。
「そんな人、選んだりしない」
『!』
ルージュは言葉の語尾を強く、レニーの言葉を否定する。
「レニーは私の家族だよ。家族を拒む人を私は好きにならないわ!」
『……ルージュ。嬉しい言葉じゃが、我の事は気にするな。我は主が主らしく生きることを望んでおる』
ルージュは目を伏せる。そして呟いた。
「……ズルイよ。私だってレニーに幸せになってほしいのに」
『?』
呟いたその言葉はレニーには届かないくらい小さかった。ルージュは顔をあげると眉をひそめているレニーの名を呼んだ。
「レニー」
『なんじゃ?』
「さっきの話の続き。私ね、思い出したことがあったの」
『??』
レニーは首を傾げる。ルージュはキッチンを出て、レニーの正面に立った。
「あの頃、私…神様に会ってたんだよ」
『ほう…。我は会わんかったな。どんな奴じゃった?』
「……うん。私が見た神様はね。傲慢で子供にも妥協がなくて…」
『?』
―――これなぁに?
――こんなことも知らんのか。主は無知だな
―――むー。
「でも、子供からもらったプレゼントは大切にずっと持っててね」
―――今日もつけてくれてるんだね!
――フン。着けなければ主の機嫌が悪くなるじゃろうが
『……』
「本当は、すごくすごく優しくて淋しがり屋なの。……だからこんな小娘のために投げ出しかけた命をまた伸ばしてくれた」
『……。待てルージュ、それは』
レニーはルージュの言葉を遮ろうと声を発する。しかしルージュは自分の唇に人差し指をおき静かにっと言うジェスチャーを取った。
それを受けレニーは口を閉じる。ルージュはキレイな笑顔でレニーに笑いかけると、明るい声で言った。
「私が初めて出会った神様はレニー、あなただよ」
【吸血鬼と少女】
あの日…洞窟を抜けた先にいたのは、輝く銀髪に引き込まれそうな紫の瞳、人形の様な整った顔を持つ美しい人。神と言う者がこの世界にいて目に見えるのなら、きっとこんな感じなのだとルージュは無意識に思った。
だから尋ねたのだ。
―――あなたが神様?
『あまり年長者をからかうではない』
立ち上がり、照れ隠しに頭を撫でるレニー。ルージュはそんな優しい吸血鬼にまた綺麗な笑みを見せた。
【吸血鬼と少女】終