【過去】吸血鬼と少女
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「海賊だァー!!」
「みんな家に避難しろ…!!」
バテリラの街がとある海賊の一団に襲われる。街は悲鳴と怒号に包まれていた。
「こわいよ……」
家の机の下に潜って震えるルージュ。
「助けて……レニー」
―――助けて…!!
『!………』
レニーはゆっくりと目を開ける。
『ルージュ……か?』
身体を起こしてみたものの、周りに人の気配はしない。ややぼやける視界の中で目を凝らすがやはりいなかった。
『いない……? だが、あれは…間違いなくルージュの声……。!』
レニーはふと目に入った右腕を見て眉を潜める。瞬間、ルージュにもらったブレスレットがプチッと切れた。木の実がバラバラと岩のベットに落ちる。
―――助けて!!
『……チッ』
虫の知らせと言うべきか、レニーは重い身体にムチを入れ立ち上がる。愛刀の“陽”を杖代わりに、街へ向かって歩き出した。
*
『我は何をしておるのだろうな……』
レニーはフラフラとおぼつかない足どりで獣道を歩く。
『もう世俗に興味などなくなって、自ら死のうとしている我が……。たかが小娘一人のために…何をしようとしておるんじゃろうな』
――レニーだってひとりは淋しいでしょ?
『……』
ルージュが流す涙は宝石のようにキレイだった。無垢な人間の少女が流す涙に、見惚れてしまった自分に驚いた。吸血鬼である己の心をこれ程までに揺さぶるのかと。
――ひとりは淋しいよ…!!
『……。ああ、そうじゃな。我もひとりは嫌じゃ』
あの時の涙が意味することをレニーは十分理解していた。だからこそ自分と引き離したかった。死を望む自分の姿を見せたくなかった。
――わたしはレニーと居たら淋しくなくなったんだよ
『クク……まったく、あんな十 も生きぬお嬢ちゃんに教えられるとはな。我もまだまだと言うことか……』
目深に被ったフードの下で苦笑したレニーは獣道を抜け、街に降り立つ。街は今まさに海賊に襲われていた。
『海賊か…やはり予感は当たるのじゃな』
*
(ルージュはどこじゃ…?)
レニーはフラフラする身体を倒れないように保ちながら歩く。ルージュの気配を辿って街を進んでいると、海賊の一人がレニーを見つけた。
「おい、そこのローブ野郎。そんな足どり逃げる気か?」
『……』
「あん? 何黙って……」
『仕方あるまい。これも我が選択じゃ』
ボソッとレニーが独り言を言う。海賊はああん?っと怪訝な顔でフードのレニーを見た。紫の瞳と目が合う。
『感謝するがよい。我が血と肉になれることを』
「へ……?」
レニーに絡んでいた1人の海賊がまぬけな言葉だけを残し、パサッと姿を消した。
「お、おい!!」
「き…消えた!!」
『……不味い血でも美味く感じるとは……空腹は最大の調味料とは真 じゃな』
「てめェ!! 何者だ!!」
「何しやがった!!?」
『貴様らに割く口はもう持っておらぬ』
レニーは手を前に、海賊達に向けた。
『その命、有意義に使ってやる。我の糧となれ』
*
街から少し離れた丘の上、ルージュ宅
「お家には何もないもん!!」
ルージュはフライパンを持って海賊達に向かい合う。そんなルージュを見て海賊達はニヤニヤと笑っていた。
「へへ~そうかじゃあ、嬢ちゃんを連れて行くか……っ!?」
「よらないで!!」
ブンブンとフライパンを振り回す。海賊の手に当たった。
「……痛ェ!!何すんだ!! このガキ!!」
「ひっ……」
怒った海賊の一人がルージュに手を伸ばす。ルージュは睨まれたことで足が竦んでしまった。
「おいっ!」
「なんだなんだ!?」
「「「!?」」」
突然部屋が暗闇に包まれる。海賊達が驚きの声を上げた。
『……間に合ったか』
「「「!!!」」」
闇から声が聞えたかと思えば闇を形成していた霧が人形になり、ルージュと海賊の間にレニーが姿を現わす。海賊達は目を大きく見開いた。
「なんだてめェ!」
「レニー…!!」
『ルージュ、目と耳を閉じろ。すぐに終わる』
「……うん!」
『いい子だ』
ルージュは目を瞑り、耳を押さえる。それを背で感じたレニーは微笑んだ。
「何者かは知らねェが、一人で何か出来るとか思うなよ」
『フフ……安心しろ。主らに慈悲など与えぬ。悲鳴すらあげれぬまま朽ちるがいい』
レニーは口元を大きく歪ませる。八重歯が光った。
―――――――
――――
『もう良いぞ』
静かになった部屋で、レニーは膝を折り、ルージュの肩に手を置く。ルージュはゆっくりと目を開けた。
「レニー…!!」
『ルージュ。怪我はないか?』
「うん…。でも、なんで…助けに来てくれたの?」
『主の声が聞こえたのじゃ』
「?」
『主と我はいつから意思の疎通が出来るようになったのじゃ?』
ルージュは首を傾げる。レニーは微笑んだ。
「…! レニー、私のことをキライになったんじゃないの??」
『?? 我がいつ主を嫌いと言うた?』
「でも……!」
うるうると瞳を潤ませるルージュ。レニーは自分の指で零れそうなその涙を優しく拭った。
『ルージュ』
「?」
『我は主に嘘をついていた』
「うそ…?」
『そう。我も独りは嫌じゃ。独りは淋しすぎる……』
「……」
『だが、主がおれば我はもう独りにならずに済むのじゃろう?』
ルージュは目を見張る。泣きそうだった顔ルージュの顔がみるみる笑顔になり、ガバッとレニーの胸に飛び込んだ。レニーは愛おしそうにルージュを抱きしめる。
「――レニー…!!」
『ルージュ、我は死期を逃した。また我を主の話し相手にしておくれ』
「うん…!!」
「みんな家に避難しろ…!!」
バテリラの街がとある海賊の一団に襲われる。街は悲鳴と怒号に包まれていた。
「こわいよ……」
家の机の下に潜って震えるルージュ。
「助けて……レニー」
―――助けて…!!
『!………』
レニーはゆっくりと目を開ける。
『ルージュ……か?』
身体を起こしてみたものの、周りに人の気配はしない。ややぼやける視界の中で目を凝らすがやはりいなかった。
『いない……? だが、あれは…間違いなくルージュの声……。!』
レニーはふと目に入った右腕を見て眉を潜める。瞬間、ルージュにもらったブレスレットがプチッと切れた。木の実がバラバラと岩のベットに落ちる。
―――助けて!!
『……チッ』
虫の知らせと言うべきか、レニーは重い身体にムチを入れ立ち上がる。愛刀の“陽”を杖代わりに、街へ向かって歩き出した。
*
『我は何をしておるのだろうな……』
レニーはフラフラとおぼつかない足どりで獣道を歩く。
『もう世俗に興味などなくなって、自ら死のうとしている我が……。たかが小娘一人のために…何をしようとしておるんじゃろうな』
――レニーだってひとりは淋しいでしょ?
『……』
ルージュが流す涙は宝石のようにキレイだった。無垢な人間の少女が流す涙に、見惚れてしまった自分に驚いた。吸血鬼である己の心をこれ程までに揺さぶるのかと。
――ひとりは淋しいよ…!!
『……。ああ、そうじゃな。我もひとりは嫌じゃ』
あの時の涙が意味することをレニーは十分理解していた。だからこそ自分と引き離したかった。死を望む自分の姿を見せたくなかった。
――わたしはレニーと居たら淋しくなくなったんだよ
『クク……まったく、あんな
目深に被ったフードの下で苦笑したレニーは獣道を抜け、街に降り立つ。街は今まさに海賊に襲われていた。
『海賊か…やはり予感は当たるのじゃな』
*
(ルージュはどこじゃ…?)
レニーはフラフラする身体を倒れないように保ちながら歩く。ルージュの気配を辿って街を進んでいると、海賊の一人がレニーを見つけた。
「おい、そこのローブ野郎。そんな足どり逃げる気か?」
『……』
「あん? 何黙って……」
『仕方あるまい。これも我が選択じゃ』
ボソッとレニーが独り言を言う。海賊はああん?っと怪訝な顔でフードのレニーを見た。紫の瞳と目が合う。
『感謝するがよい。我が血と肉になれることを』
「へ……?」
レニーに絡んでいた1人の海賊がまぬけな言葉だけを残し、パサッと姿を消した。
「お、おい!!」
「き…消えた!!」
『……不味い血でも美味く感じるとは……空腹は最大の調味料とは
「てめェ!! 何者だ!!」
「何しやがった!!?」
『貴様らに割く口はもう持っておらぬ』
レニーは手を前に、海賊達に向けた。
『その命、有意義に使ってやる。我の糧となれ』
*
街から少し離れた丘の上、ルージュ宅
「お家には何もないもん!!」
ルージュはフライパンを持って海賊達に向かい合う。そんなルージュを見て海賊達はニヤニヤと笑っていた。
「へへ~そうかじゃあ、嬢ちゃんを連れて行くか……っ!?」
「よらないで!!」
ブンブンとフライパンを振り回す。海賊の手に当たった。
「……痛ェ!!何すんだ!! このガキ!!」
「ひっ……」
怒った海賊の一人がルージュに手を伸ばす。ルージュは睨まれたことで足が竦んでしまった。
「おいっ!」
「なんだなんだ!?」
「「「!?」」」
突然部屋が暗闇に包まれる。海賊達が驚きの声を上げた。
『……間に合ったか』
「「「!!!」」」
闇から声が聞えたかと思えば闇を形成していた霧が人形になり、ルージュと海賊の間にレニーが姿を現わす。海賊達は目を大きく見開いた。
「なんだてめェ!」
「レニー…!!」
『ルージュ、目と耳を閉じろ。すぐに終わる』
「……うん!」
『いい子だ』
ルージュは目を瞑り、耳を押さえる。それを背で感じたレニーは微笑んだ。
「何者かは知らねェが、一人で何か出来るとか思うなよ」
『フフ……安心しろ。主らに慈悲など与えぬ。悲鳴すらあげれぬまま朽ちるがいい』
レニーは口元を大きく歪ませる。八重歯が光った。
―――――――
――――
『もう良いぞ』
静かになった部屋で、レニーは膝を折り、ルージュの肩に手を置く。ルージュはゆっくりと目を開けた。
「レニー…!!」
『ルージュ。怪我はないか?』
「うん…。でも、なんで…助けに来てくれたの?」
『主の声が聞こえたのじゃ』
「?」
『主と我はいつから意思の疎通が出来るようになったのじゃ?』
ルージュは首を傾げる。レニーは微笑んだ。
「…! レニー、私のことをキライになったんじゃないの??」
『?? 我がいつ主を嫌いと言うた?』
「でも……!」
うるうると瞳を潤ませるルージュ。レニーは自分の指で零れそうなその涙を優しく拭った。
『ルージュ』
「?」
『我は主に嘘をついていた』
「うそ…?」
『そう。我も独りは嫌じゃ。独りは淋しすぎる……』
「……」
『だが、主がおれば我はもう独りにならずに済むのじゃろう?』
ルージュは目を見張る。泣きそうだった顔ルージュの顔がみるみる笑顔になり、ガバッとレニーの胸に飛び込んだ。レニーは愛おしそうにルージュを抱きしめる。
「――レニー…!!」
『ルージュ、我は死期を逃した。また我を主の話し相手にしておくれ』
「うん…!!」