【過去】吸血鬼と少女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「レニー…!!」
『また主か……』
「へへ。今日はおばさんからケーキもらったんだ!!」
あの出逢いの日以降、ルージュはレニーのいるこの森へほぼ毎日やって来ていた。
『はぁ…(すぐに飽くと思っておったんじゃがな…)』
そんなレニーの目論見は見事に外れてしまっていた。
その証拠が目の前にいるとびきり機嫌の良さそうなルージュの姿。しかも小さな身体には不釣り合いな大きなケーキを嬉しそうにレニーへ見せている。
『デカイのォ…』
「うん! 友達と食べるって言ったらくれたの!!」
レニーの呆れた声もなんのそ、ルージュはケーキを岩の上に置く。
『……我はくわ』
「食べよ!」
『……はあ』
ルージュに言葉を切られレニーはため息をついた。ルージュはレニーの隣に座るとケーキを膝の上にのせる。そして、家から持って来たらしいフォークをレニーに差し出した。
「はい、どうぞ」
レニーはしぶしぶそれを受け取る。
『……』
今から約100年前…自分が引き金となったある惨劇以降、レニーは人間と距離を置くようになっていた。それは惨劇を二度と繰り返さないための自衛の策だったのかもしれない。
しかしこの少女、ルージュはそんなレニーの心境などお構いなしに、隣に座ってくる。
『(妙に度胸があるお嬢ちゃんじゃ)』
レニーはルージュに目を向けた。あの出逢いの日に、“近づいたら喰らうぞ”と脅したのだが、ルージュには一向に効かなかった。
それどころか言った側から隣でお菓子を食べる始末で、吸血鬼である自分がバカにされているのでは、とイライラしたくらいだ。
その後もいくら帰れと言っても帰らず、喰らうと言っても動じないルージュにレニーはとうとう根負けし、好きにしろっと投げやりな言葉を添えた。その結果が今の状態だ。
『(まったく子供というのは、何百年経ってもわからぬものじゃな…)』
心の中で散々悪態をつくレニーだったが、なんだかんだ言ってルージュを邪険 にすることはなかった。
「レニー、食べて!」
『……』
「はやくはやく!」
『ふむ……』
レニーはルージュを見守る中、ケーキを一口食べる。片田舎のケーキにしては上品さを感じさせた。
『……美味いな』
素直な言葉を口にしたレニーにルージュはほほ笑んだ。
「でしょでしょ!! おばさんのケーキはとってもおいしいんだよ!!」
そう言うといただきます!っと手を合わせ、ルージュはケーキをほおばる。ケーキを味わった後、ルージュはいつもの通り自分の日常をありのままに話し始めた。
「あのねレニー、私昨日は森の西の方に行ったの」
『ほう…』
「森の西には大きな木があって、そこにはピカピカの木の実がなってるの」
『ふむ…』
「それでね……!!」
レニーは大して興味も感じないような態度ではあるが、相槌をうつ。以前、相槌を打たなくてルージュに叱られた経験から学んだ行動だった。
「―――で、おうちに帰ったの」
『……ほう』
「私がお家に帰ってから何をしてたと思う?」
『……さぁの。草むしりでもしておったのか』
「ちがうよ…!!」
ルージュは首を横に大きく振る。そしてケーキを膝から岩の上に逃がすと、提げていたバックから何かを取り出した。
「これを作ってたの」
ルージュはそう言うとピカピカの木の実と柔らかい紐で作られた腕輪をレニーに差し出した。
『なんじゃ、これは?』
「レニーへのプレゼント!」
『プレゼント…?』
レニーは首を傾げる。
『なぜ我に??』
「なぜって? 決まってるじゃない。友達になったからだよ…!!」
『……友、達?』
レニーは一瞬目を見張った。久々に聞くなつかしい響きだった。
「つけてあげる! 手を出して」
『……』
「はやくはやく!!」
ルージュに促され、レニーはスッと手を出す。ルージュはレニーの手首に腕輪を巻きつけ始めた。レニーはその姿を静かに見守る。
「はい! 出来たよ!!」
『……』
レニーは腕輪に視線を注ぐ。その口元には自然と笑みが零れていた。
『!』
自分が笑っていることに気付いたレニーは、バツが悪そうに視線を腕輪から反らす。ふと反らした視線の先を見るとルージュのカバンがあった。その口からはもう一つ腕輪が出ている。
『……。それは主の分か?』
「あ…うん!」
ルージュはカバンからはみ出ている少し小さいサイズの腕輪を取りだした。
「おそろいで作ったの。ダメだったかな…」
『……』
レニーは手を伸ばした。
「?」
『早よう渡さぬか』
「え……?」
レニーはルージュから腕輪を取る。そして驚いているルージュの小さな手に腕輪を添えた。
「レニー…?」
『動くでないぞ。我はこの手の作業は好かぬのじゃ』
そう言うと、レニーは慣れない手つきでルージュの手首に腕輪を巻きつける。その動作はとても優しかった。
『これでよいじゃろ』
少し時間はかかったものの丁寧に巻かれた腕輪。ルージュはその腕輪をじっと凝視する。その姿にレニーは首を傾げた。
「……」
『どうしたのじゃ? 気に入らんのか?』
レニーの言葉にルージュはふるふると首を振る。そしてレニーを見上げた。
「違うよ、レニー」
『?』
「うれしいの……!!」
『……?』
「エヘヘ…!!」
ルージュは笑う。その無邪気な笑顔にレニーは一瞬見惚れた。
『……っ』
レニーはそれを隠すためにルージュの頭をガシガシと撫でる。
「いたた……レニー、痛いよ」
『腕輪くらいで喜ぶでない……』
「だってうれしいんだもん…!!」
ルージュはそう言うとレニーのひざに手を置いた。レニーはルージュの頭を撫でる手をとめる。
「ねェ、レニー。お膝に座っていい?」
『……。ダメだと言ってもどうせ来るのであろう』
ルージュはニコニコと笑顔で頷く。レニーはため息をつきながらも、ルージュを足の間に招いた。ちょこんとレニーの胸に寄り掛かるようにルージュが座る。
『(これだから子供は……)』
「♪」
レニーはそんなルージュにまたため息をひとつつくと、今度は優しくルージュの頭を撫でた。
『(しかしこういうのも悪くはない……)』
『また主か……』
「へへ。今日はおばさんからケーキもらったんだ!!」
あの出逢いの日以降、ルージュはレニーのいるこの森へほぼ毎日やって来ていた。
『はぁ…(すぐに飽くと思っておったんじゃがな…)』
そんなレニーの目論見は見事に外れてしまっていた。
その証拠が目の前にいるとびきり機嫌の良さそうなルージュの姿。しかも小さな身体には不釣り合いな大きなケーキを嬉しそうにレニーへ見せている。
『デカイのォ…』
「うん! 友達と食べるって言ったらくれたの!!」
レニーの呆れた声もなんのそ、ルージュはケーキを岩の上に置く。
『……我はくわ』
「食べよ!」
『……はあ』
ルージュに言葉を切られレニーはため息をついた。ルージュはレニーの隣に座るとケーキを膝の上にのせる。そして、家から持って来たらしいフォークをレニーに差し出した。
「はい、どうぞ」
レニーはしぶしぶそれを受け取る。
『……』
今から約100年前…自分が引き金となったある惨劇以降、レニーは人間と距離を置くようになっていた。それは惨劇を二度と繰り返さないための自衛の策だったのかもしれない。
しかしこの少女、ルージュはそんなレニーの心境などお構いなしに、隣に座ってくる。
『(妙に度胸があるお嬢ちゃんじゃ)』
レニーはルージュに目を向けた。あの出逢いの日に、“近づいたら喰らうぞ”と脅したのだが、ルージュには一向に効かなかった。
それどころか言った側から隣でお菓子を食べる始末で、吸血鬼である自分がバカにされているのでは、とイライラしたくらいだ。
その後もいくら帰れと言っても帰らず、喰らうと言っても動じないルージュにレニーはとうとう根負けし、好きにしろっと投げやりな言葉を添えた。その結果が今の状態だ。
『(まったく子供というのは、何百年経ってもわからぬものじゃな…)』
心の中で散々悪態をつくレニーだったが、なんだかんだ言ってルージュを
「レニー、食べて!」
『……』
「はやくはやく!」
『ふむ……』
レニーはルージュを見守る中、ケーキを一口食べる。片田舎のケーキにしては上品さを感じさせた。
『……美味いな』
素直な言葉を口にしたレニーにルージュはほほ笑んだ。
「でしょでしょ!! おばさんのケーキはとってもおいしいんだよ!!」
そう言うといただきます!っと手を合わせ、ルージュはケーキをほおばる。ケーキを味わった後、ルージュはいつもの通り自分の日常をありのままに話し始めた。
「あのねレニー、私昨日は森の西の方に行ったの」
『ほう…』
「森の西には大きな木があって、そこにはピカピカの木の実がなってるの」
『ふむ…』
「それでね……!!」
レニーは大して興味も感じないような態度ではあるが、相槌をうつ。以前、相槌を打たなくてルージュに叱られた経験から学んだ行動だった。
「―――で、おうちに帰ったの」
『……ほう』
「私がお家に帰ってから何をしてたと思う?」
『……さぁの。草むしりでもしておったのか』
「ちがうよ…!!」
ルージュは首を横に大きく振る。そしてケーキを膝から岩の上に逃がすと、提げていたバックから何かを取り出した。
「これを作ってたの」
ルージュはそう言うとピカピカの木の実と柔らかい紐で作られた腕輪をレニーに差し出した。
『なんじゃ、これは?』
「レニーへのプレゼント!」
『プレゼント…?』
レニーは首を傾げる。
『なぜ我に??』
「なぜって? 決まってるじゃない。友達になったからだよ…!!」
『……友、達?』
レニーは一瞬目を見張った。久々に聞くなつかしい響きだった。
「つけてあげる! 手を出して」
『……』
「はやくはやく!!」
ルージュに促され、レニーはスッと手を出す。ルージュはレニーの手首に腕輪を巻きつけ始めた。レニーはその姿を静かに見守る。
「はい! 出来たよ!!」
『……』
レニーは腕輪に視線を注ぐ。その口元には自然と笑みが零れていた。
『!』
自分が笑っていることに気付いたレニーは、バツが悪そうに視線を腕輪から反らす。ふと反らした視線の先を見るとルージュのカバンがあった。その口からはもう一つ腕輪が出ている。
『……。それは主の分か?』
「あ…うん!」
ルージュはカバンからはみ出ている少し小さいサイズの腕輪を取りだした。
「おそろいで作ったの。ダメだったかな…」
『……』
レニーは手を伸ばした。
「?」
『早よう渡さぬか』
「え……?」
レニーはルージュから腕輪を取る。そして驚いているルージュの小さな手に腕輪を添えた。
「レニー…?」
『動くでないぞ。我はこの手の作業は好かぬのじゃ』
そう言うと、レニーは慣れない手つきでルージュの手首に腕輪を巻きつける。その動作はとても優しかった。
『これでよいじゃろ』
少し時間はかかったものの丁寧に巻かれた腕輪。ルージュはその腕輪をじっと凝視する。その姿にレニーは首を傾げた。
「……」
『どうしたのじゃ? 気に入らんのか?』
レニーの言葉にルージュはふるふると首を振る。そしてレニーを見上げた。
「違うよ、レニー」
『?』
「うれしいの……!!」
『……?』
「エヘヘ…!!」
ルージュは笑う。その無邪気な笑顔にレニーは一瞬見惚れた。
『……っ』
レニーはそれを隠すためにルージュの頭をガシガシと撫でる。
「いたた……レニー、痛いよ」
『腕輪くらいで喜ぶでない……』
「だってうれしいんだもん…!!」
ルージュはそう言うとレニーのひざに手を置いた。レニーはルージュの頭を撫でる手をとめる。
「ねェ、レニー。お膝に座っていい?」
『……。ダメだと言ってもどうせ来るのであろう』
ルージュはニコニコと笑顔で頷く。レニーはため息をつきながらも、ルージュを足の間に招いた。ちょこんとレニーの胸に寄り掛かるようにルージュが座る。
『(これだから子供は……)』
「♪」
レニーはそんなルージュにまたため息をひとつつくと、今度は優しくルージュの頭を撫でた。
『(しかしこういうのも悪くはない……)』