きっと、僕はこの時が一番幸せだったんだと思う。


―――――

――――


「アルト…アルト、起きて！！」

『……っ。―――？』

瞑っていた目を開けると、太い木の梁と白い天井が目に入った。


「やっと起きたね」

声と共に視界に現れたのは“あの人”。体を起こし、“あの人”を見る。
白い肌に月の様なキレイな金髪のふわふわした長い髪と同じ色の瞳をもつ、とても綺麗な人。


「どうしたのぼーっとして。まだ眠い？」

『……』

僕は目をぐいぐい擦ってから、首を横に振った。


「よしよし。アルトは今日も元気だね」

『……』

“あの人”が頭を撫でる。僕はそれを静かに受けた。


「じゃあ、今からご飯を食べに行こう。で、その後は音楽の勉強をしようね」

『……』

ベットから降りた僕の手を取り、“あの人”は笑った。


「アルト、今日は1日快晴だってさ。ソプラが言ってたのよ」

『……』

僕は頷く。そんな話をしながら“あの人”に手を引かれ、僕ら部屋の外へ出た。


「ほらアルト、すごくいい天気！」

天気は雲ひとつない快晴。海の浅瀬みたいな青空が広がっていた。


『……』

僕は空を見上げた後、“あの人”を見る。“あの人”もこちらを向く。陽に当たった金髪はキラキラと光った。


「アルト」

僕の名を呼ぶ“あの人”は晴れた日に外に出るといつも決まって、笑顔でこう言うのだ。


「“今日も世界は綺麗だね”」



不思議だった。



“あの人”の側にいるといつもココロがあたたかくて、

“あの人”の側にはいつもたくさんのキレイな“色”があって

“あの人”の側では自然にキレイな“音”が生まれて……

きっと、“あの人”が“光”という存在なんだと思った。


―――僕らを照らしてくれる“優しい光”


だから、僕はその名を、光を、忘れないように自分に刻みつけたハズだった。


.