たったひとつの選択

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「話すよ。でもな、アルト。お前が知りたい“それは”おれでさえ、まだ確信がない」

青キジの声色が一変、真剣なものになる。


『……』

「それにおれはその“可能性の話”を否定したかった。だが……実際、お前の対応の方が大人だったみたいだな」

青キジはそう言うとアルトに紙の束を差し出した。


「これなんだかわかるよな?」

『……“譜面”だね』

アルトは紙の束を受け取る。その紙には五本線に黒い丸や白い丸などの記号が並んでいた。
何の曲かと思考を巡らせようとした時、ふとその譜面に違和感を感じた。


『……ん?これ…』

アルトは自分が知っているあの譜面の暗号を試しにあててみた。そしてその暗号から出た言葉を口に出す。


『《潜入報告書》……!?』

言葉に青キジは相づちを打った。


「忘れてたよ。あいつは“暗号オタク”だったのを」

アルトはその言葉に息を飲んだ。青キジは話し出す。


「アリアはCP1でな。潜入任務でよく外に出ていた」

『……』

「だが“ある任務”に5年程携わっていたアリアはその任務終了を告げられた後、失踪したんだ」

『失踪…!?』

「ああ。失踪後、2・3年後くらいか?ちょっと交流があったおれにこの大量の“譜面”と“報告書”、それに“手紙”が添えられて送られて来た」


『……』

「本部の監査が入って、結局おれの手元に来たのは手紙とその譜面。報告書は本部で見たが、よくある任務の報告書だったよ」

『……』

「で、アイツからの手紙に“この譜面は大切なものだから持っていてほしい”と書かれていた。
おれにはなんのことやらさっぱりだったから、とりあえず保存していたんだ」

『……でも、これは』

青キジは頷き、ポリポリと頭をかく。


「そう。全部は読んでいないが、その譜面に書かれていた事こそが“本当の報告書”だったんだ」

『わざと隠した…ってことだよね』

「ああ。まったく困った奴だよ。譜面にすればおれや軍が調べないのを視野に入れてた訳だ」

アルトは首を傾げる。


『??なんで、彼女は暗号のプロだったんだろ?それが有名だったんならすべての書類が対象になりそうだけど…』

「確かにアリアは暗号作りのプロだったから、軍は怪しんだ。でも偽りの報告書自体がまず暗号化されていたし、何よりこれが暗号と思うか?」

『いや……。普通は思わないだろうね。僕はこういう暗号があると知っていたから、判断出来た』

「そ。実際おれはお前に教わるまでわからなかったしな。
しかも偽の報告書の中身を見て、軍が時間をかける価値はないと判断した。そういう理由で今まで眠ってた」

アルトは譜面に目を落とす。


『……。これ、本当に読んでいいの?』

「――お前が知りたいのなら…な。
ただ、そこに書いてることが全部真実とは言わねェ。結局……」

『“本当のことは当人にしかわからない”だろ?』

「その通りだ」

青キジの言葉に続くようにアルトは言った。青キジは頷く。アルトは譜面に再び視線を落とすと、暗号を読み始めた。



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