幻にしては現実的で、現実にしてはあいまいな…まるで記憶の欠片の様な夢を見た。



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アルトの目の前に一人の女性。アルトはその女性を見た瞬間、心の奥から叫びだしそうになった。


「アルト……！」

『アリ、ア…？』

「アルト！！良かった。無事だったんだね、本当に良かった……」

駆け寄って来た女性、アリアはアルトをギュッと抱き締める。
驚き、目を見開いたアルトの目にはアリアと呼ばれた女性の月の光のような金色の髪を映った。
それは久々に見る、光の色だった。


「アルト…？」

アリアは抱き締める力を緩め、幼いアルトの顔を見る。アルトは恐る恐る尋ねた。


『本当に、アリアなの…？』

「そうだよ、アルト」

ﾌﾜｯとした笑顔を見せるアリアにアルトの人形のようだった表情が一気に幼い子供の、歳相応の表情になった。
しかしその瞳には懺悔の色が浮かぶ。


『僕……僕はずっと、アリアを……アリアを』

「……」

アルトの心は今にも崩れてしまいそうな程怯えていた。アリアはまたアルトを抱き締め、頭を優しく撫でる。


「アルト、落ち着いて。大丈夫だから。ほら、聞こえるでしょ？」

『…！』

アリアに抱き締められたアルトの耳にアリアの心音が届く。
そしてアリアの穏やかな声が降ってくる。


「私は生きてる。キミは…“私を壊してなんか…なかった”んだよ」

『……っ！！』

「辛かったのによく頑張ったね、アルト」

『……アリ…ア』

アリアのそのたった一言でアルトは救われた気がした。
同時にアルトの目に熱いものが込み上げ、体が震える。


「……。アルト、泣いていいよ。我慢なんかしなくていい」

『……っ』

「それは人として当たり前の気持ちなんだから」

『でも僕は……』

「キミは人だよ。私や世界の人と同じ。何も違わない」

『……。アリア…僕』

アルトはぽつりぽつりと話し出す。


『……こわかった』

「うん」

『ずっとずっとアリアを“壊した”と、思って、たから……』

「うん」

『……兄さんが、アリアやみんなの“死”をムダにしないようにって……だから僕、たくさん“壊して”……っ！！』

「……。大丈夫、ゆっくりでいいよ」

アルトはアリアの優しい相づちに、本当の気持ちを吐き出して行く。
アルトの目に溜まった涙はついに溢れ、ポロポロと落ち始めた。


『僕……っ、イヤだった。ほんと…は“壊したくなんか、なかった”。
でも…そうしないと、いけなくて。“終わらせないと、いけなくて”』

「……」

アリアはアルトの悲痛な叫びに奥歯を噛み締める。抱き締める手がギュッと強くなった。


「ごめんね」

『…え』

アリアの謝罪にアルトは驚く。


「アルトもソプラも…こんなに苦しんでたのに、私助けれなかった」

『……？？なんで？アリアの、せいじゃないよ』

そして抱き締める手を緩め、再びアルトの目を見る。


「ねェ、アルト。私の話を聞いてくれる？」


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