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それから4日後……。
海軍本部アルトの自室。
『…暇だな』
シャボンティ諸島から帰還した日の夜、アルトを待っていたのはセンゴクとつる。
開口一番にセンゴクに思いっきり怒鳴られ、つるには静かに、しかし強めに諌められた。
そこからセンゴクの説教が3時間程続いた後、告げられた処分が“謹慎”。
七武海の担当は一度外れ、次の任務が入るまで部屋の中で大人しくしていろ、と言う内容だった。
アルトはセンゴクの部屋からそのまま自室に向かい、現在まで命令通り部屋に引きこもっていた。
『もう全文覚えたし…』
アルトは自分で入れたホットチョコに口をつけつつ、執務机に置かれた書類を読み直す。
謹慎中とは言え、非常事態である今の状況。つるの配慮で外の情報は書類で知らされてることになり、暇なアルトはそれを何度も読み返していた。
「困ります!!」
『?』
表が騒がしいことに気付き、アルトはドアに目を向ける。表にはアルトの逃亡を見張る海兵がいるはずだが、その海兵と誰かが言い合っている様だ。
「ノティ中将は只今、謹慎中でして!許可された方以外の面会は…!!」
「固ェこと言うなよ。おれは貸したもんを取りに来ただけだ」
『……この声は』
見張りの海兵と問答する人物に思い当たり、アルトはドアが開けた。
ドアが開いたことに見張りの海兵が驚く中、アルトは海兵の胸倉をつかんでいる人物を見て、ああっと言葉をかける。
『やっぱり、スモーカークンか』
「!…やっぱりじゃねェよ。たくっ…」
『ごめんごめん。あれだよね、返すよ。ちょっと待って…』
「中に入れろ…!!」
『えっ?』
そう言うと海兵を離し、スモーカーはズカズカと部屋の中に入る。
アルトと海兵はその行動に呆然とするが、アルトは息をつき見張りの海兵に言った。
『そう言うことらしい。もう入っちゃったし、ちょっとしたら出ると思うから、見張りよろしく』
「中将!!?」
ガチャっとドアをしめ、鍵をかける。部屋を見渡すとスモーカーはすでに部屋の真ん中にあるソファに座っていた。
「雑然とした部屋だな。色気がねェ」
『色気?そんなの部屋に必要なのかい?』
「…さぁな。おい、突っ立ってないで早く茶でも入れろ」
『ああ。ってこの状況なんか……。まぁ、いいか』
アルトはそう呟きながら、ロールが用意していた客人用のお茶を入れる。
そして執務机に置いていたホットチョコ入りのカップとバイクの鍵を持って、ソファに座った。
『どうぞ』
「ああ」
アルトからお茶を受け取り、口につけるスモーカー。アルトは鍵をテーブルの上に置いた。
『これ、バイクの鍵。遅くなってすまない。バイクは…』
「戻って来てる。今はおれの船の中だ」
『そう。よかった』
アルトは安心した声を出し、ホットチョコを飲む。スモーカーが葉巻を取り出し、アルトに吸ってもいいか?と了承を取った。
アルトがカップに口をつけながら頷くと、スモーカーは葉巻に火をつける。
少ししてフゥ―と白い煙を吐いた。
「……“謹慎”か。アンタみたいな階級の野郎でも謹慎にはなるんだな」
『それはそうだよ。元帥ならともかく僕も一介の海兵だしね。それに僕は常習犯だから』
「……。だから外に見張りって訳か」
『いや、見張りは初めてだ』
「初めてだと…?」
『うん。僕、謹慎の時は大人しくしてるからね。いつもは見張りは付かない』
「なんで今回は付いてるんだ?」
『さぁ…。残念だけどわからないな』
そう言い、アルトはホットチョコに口をつける。
「まぁ、いい。そんなことを聞きに来た訳じゃねェんだ」
『?何を聞きに来たの…?』
「……。お前、シャボンティ諸島に何しに行ってた?」
『!……それは』
「結局おれも厄介事に巻き込まれたんだ。それくらい知ってもいいだろ」
『……』
スモーカーは葉巻を吹かす。そしてアルトの目を見て言った。
「てめェが“引き戻されて、謹慎までくらってる理由”を教えろ」
『……はぁ』
アルトはカップを置き、息をつく。肩の力を抜いて切り出した。
『裏切り者に会いに行ってたんだ』
「?裏切り者…?」
『キミは知ってるかな?少将だったんだけど、今は“赤旗”と呼ばれてる。X(ディエス)・ドレークって言う海賊さ』
「海賊としては聞いたことはある名だな。……アンタの“元同僚”か?」
スモーカーの問いに、アルトは静かに首を縦に振る。
『うん。そして僕の“初めての友人“だった』
「!」
アルトはドレークとの関係を淡々と話す。昔の話も少し織り交ぜながら。
『でね、本当は彼が中将に昇進するハズだったんだけど、式当日にドレーククンが裏切ってね。だから代わりに僕が中将になったのさ』
「……」
『それからは新聞でたまに見る程度だったんだけど、たまたま見た報告書にシャボンティ諸島にいるって報告があって…』
「捕まえに行ったって訳か」
『うん』
「で、見つけたのか?」
『見つけたよ……でも』
アルトはドレークと再会したあの一瞬を思い出す。互いに互いを認知したあの瞬間を。
『その直後に黄猿サンに見つかってあえなくゲームオーバー。センゴクサンに説教されて今に至るって感じだね』
「……」
アルトは肩を竦め、軽い調子で言った。
「そのドレークって奴の生存確認は取ったのか?」
『いや……。聞いても教えてはくれないよ。それに黄猿サンが相手じゃ、結果は目に見えてる様なものさ』
スモーカーは眉を顰める。
「あっさりしてるな。お前は、自分の手で捕まえたいと思って行った…って訳じゃねェのか?」
『別に。そうは思ってないよ。僕も仕事があるしね』
平然と答えるアルト。スモーカーは息をつくと同時に葉巻を吹かした。部屋に白い煙が舞う。
「……よくわかんねェな。結局アンタはそいつに会って何をしたかったんだ?」
『何を……?』
「……。まさか考えてなかったのか?」
『……ああ、そう言えば』
アルトはスモーカーに問われ、初めてちゃんと考え始めた。
あの時、自分は何がしたかったのか。
ドレークを捕まえたいと、もちろん思っていた。
しかしそれとは違う感情の方が強かった気がした。その感情は…何だ?
『……ドレーククンに会ったら、僕は何をするつもりだったんだろう…?』
首を傾げて言うアルト。何か引っかかる感覚はするが、上手く言葉に出来ない。
スモーカーはそんなアルトを見ながら、頭を2・3回掻き、呆れた様に言った。
「だからそんな情けねェ顔してんのか」
『え…?』
アルトは驚きスモーカーを見る。
『情けない顔…?誰が?』
「バカか。てめェだよ」
『僕?』
「ああ。鏡見たか?いつものてめェらしくねェ、みっともない顔だ」
『……』
スモーカーは鍵を取り、立ち上がる。アルトはただそれを見上げた。
「裏切られて悔しいなら、悔しいって顔して、そのドレークって奴を一発本気で殴ってやればいいじゃねェか」
『殴る…!?』
「何もしないよりはなんかあんだろ。その後捕まえりゃいい。そしたらアンタの気も晴れんじゃねェのか」
『……』
スモーカーはボーっと自分を見るアルトに眉を寄せる。
「何だ?」
『……。スモーカークン、もしかして励ましてくれてるのかい?』
「!バカ言うな…」
スモーカーは一瞬言葉につまるが、すぐにアルトに背を向け、ドアの前に立ち鍵を開ける。
そしてドアノブに手をかけながら言った。
「おれはそんないい奴じゃねェよ。ただでさえ、てめェみたいなガキが上司だってのが気に入らねェんだ。
その上、そんなしけた面されたらこれからの作戦の邪魔になるから言ったまでだ」
そう言うとスモーカーはアルトの言葉も聞かず、出て行った。ガチャン!っと少し乱暴にドアが閉まる。
『………素直じゃないなぁ』
アルトはスモーカーが出て行ったドアを見ながら呟いた。
それからソファに座りなおし、ホットチョコを口につける。
そしてスモーカーの言葉を反芻しながら、納得したように頷いた。
『殴るってのは意外に名案だな。もし…ドレーククンが生きてて、会うことがあるなら……』
ズキンッ!!
『ぐっ!!!!』
アルトは突然鈍器で殴られた様な、ひどい頭痛に襲われる。はずみでカップをテーブルに手放した。
カップはテーブルの上でコツンッと倒れ、まだカップに残っていたホットチョコがこぼれる。
『……ハァ…ハァ』
アルトはそれを気にすることも出来ず、目をきつく瞑る。そして頭を正常に戻すため、酸素を脳に送り込もうと大きく呼吸をした。
さらに荒く深呼吸を繰り返しながら、目を開ける。
しかし視界はぼやけ、目が回る。脳が揺れる感覚になり、体のバランスがまったく取れる気がしない。
『……っ。なに、これ…』
そう言うのとほぼ同時にアルトは、ソファとテーブルの間に倒れこんだ。
.
海軍本部アルトの自室。
『…暇だな』
シャボンティ諸島から帰還した日の夜、アルトを待っていたのはセンゴクとつる。
開口一番にセンゴクに思いっきり怒鳴られ、つるには静かに、しかし強めに諌められた。
そこからセンゴクの説教が3時間程続いた後、告げられた処分が“謹慎”。
七武海の担当は一度外れ、次の任務が入るまで部屋の中で大人しくしていろ、と言う内容だった。
アルトはセンゴクの部屋からそのまま自室に向かい、現在まで命令通り部屋に引きこもっていた。
『もう全文覚えたし…』
アルトは自分で入れたホットチョコに口をつけつつ、執務机に置かれた書類を読み直す。
謹慎中とは言え、非常事態である今の状況。つるの配慮で外の情報は書類で知らされてることになり、暇なアルトはそれを何度も読み返していた。
「困ります!!」
『?』
表が騒がしいことに気付き、アルトはドアに目を向ける。表にはアルトの逃亡を見張る海兵がいるはずだが、その海兵と誰かが言い合っている様だ。
「ノティ中将は只今、謹慎中でして!許可された方以外の面会は…!!」
「固ェこと言うなよ。おれは貸したもんを取りに来ただけだ」
『……この声は』
見張りの海兵と問答する人物に思い当たり、アルトはドアが開けた。
ドアが開いたことに見張りの海兵が驚く中、アルトは海兵の胸倉をつかんでいる人物を見て、ああっと言葉をかける。
『やっぱり、スモーカークンか』
「!…やっぱりじゃねェよ。たくっ…」
『ごめんごめん。あれだよね、返すよ。ちょっと待って…』
「中に入れろ…!!」
『えっ?』
そう言うと海兵を離し、スモーカーはズカズカと部屋の中に入る。
アルトと海兵はその行動に呆然とするが、アルトは息をつき見張りの海兵に言った。
『そう言うことらしい。もう入っちゃったし、ちょっとしたら出ると思うから、見張りよろしく』
「中将!!?」
ガチャっとドアをしめ、鍵をかける。部屋を見渡すとスモーカーはすでに部屋の真ん中にあるソファに座っていた。
「雑然とした部屋だな。色気がねェ」
『色気?そんなの部屋に必要なのかい?』
「…さぁな。おい、突っ立ってないで早く茶でも入れろ」
『ああ。ってこの状況なんか……。まぁ、いいか』
アルトはそう呟きながら、ロールが用意していた客人用のお茶を入れる。
そして執務机に置いていたホットチョコ入りのカップとバイクの鍵を持って、ソファに座った。
『どうぞ』
「ああ」
アルトからお茶を受け取り、口につけるスモーカー。アルトは鍵をテーブルの上に置いた。
『これ、バイクの鍵。遅くなってすまない。バイクは…』
「戻って来てる。今はおれの船の中だ」
『そう。よかった』
アルトは安心した声を出し、ホットチョコを飲む。スモーカーが葉巻を取り出し、アルトに吸ってもいいか?と了承を取った。
アルトがカップに口をつけながら頷くと、スモーカーは葉巻に火をつける。
少ししてフゥ―と白い煙を吐いた。
「……“謹慎”か。アンタみたいな階級の野郎でも謹慎にはなるんだな」
『それはそうだよ。元帥ならともかく僕も一介の海兵だしね。それに僕は常習犯だから』
「……。だから外に見張りって訳か」
『いや、見張りは初めてだ』
「初めてだと…?」
『うん。僕、謹慎の時は大人しくしてるからね。いつもは見張りは付かない』
「なんで今回は付いてるんだ?」
『さぁ…。残念だけどわからないな』
そう言い、アルトはホットチョコに口をつける。
「まぁ、いい。そんなことを聞きに来た訳じゃねェんだ」
『?何を聞きに来たの…?』
「……。お前、シャボンティ諸島に何しに行ってた?」
『!……それは』
「結局おれも厄介事に巻き込まれたんだ。それくらい知ってもいいだろ」
『……』
スモーカーは葉巻を吹かす。そしてアルトの目を見て言った。
「てめェが“引き戻されて、謹慎までくらってる理由”を教えろ」
『……はぁ』
アルトはカップを置き、息をつく。肩の力を抜いて切り出した。
『裏切り者に会いに行ってたんだ』
「?裏切り者…?」
『キミは知ってるかな?少将だったんだけど、今は“赤旗”と呼ばれてる。X(ディエス)・ドレークって言う海賊さ』
「海賊としては聞いたことはある名だな。……アンタの“元同僚”か?」
スモーカーの問いに、アルトは静かに首を縦に振る。
『うん。そして僕の“初めての友人“だった』
「!」
アルトはドレークとの関係を淡々と話す。昔の話も少し織り交ぜながら。
『でね、本当は彼が中将に昇進するハズだったんだけど、式当日にドレーククンが裏切ってね。だから代わりに僕が中将になったのさ』
「……」
『それからは新聞でたまに見る程度だったんだけど、たまたま見た報告書にシャボンティ諸島にいるって報告があって…』
「捕まえに行ったって訳か」
『うん』
「で、見つけたのか?」
『見つけたよ……でも』
アルトはドレークと再会したあの一瞬を思い出す。互いに互いを認知したあの瞬間を。
『その直後に黄猿サンに見つかってあえなくゲームオーバー。センゴクサンに説教されて今に至るって感じだね』
「……」
アルトは肩を竦め、軽い調子で言った。
「そのドレークって奴の生存確認は取ったのか?」
『いや……。聞いても教えてはくれないよ。それに黄猿サンが相手じゃ、結果は目に見えてる様なものさ』
スモーカーは眉を顰める。
「あっさりしてるな。お前は、自分の手で捕まえたいと思って行った…って訳じゃねェのか?」
『別に。そうは思ってないよ。僕も仕事があるしね』
平然と答えるアルト。スモーカーは息をつくと同時に葉巻を吹かした。部屋に白い煙が舞う。
「……よくわかんねェな。結局アンタはそいつに会って何をしたかったんだ?」
『何を……?』
「……。まさか考えてなかったのか?」
『……ああ、そう言えば』
アルトはスモーカーに問われ、初めてちゃんと考え始めた。
あの時、自分は何がしたかったのか。
ドレークを捕まえたいと、もちろん思っていた。
しかしそれとは違う感情の方が強かった気がした。その感情は…何だ?
『……ドレーククンに会ったら、僕は何をするつもりだったんだろう…?』
首を傾げて言うアルト。何か引っかかる感覚はするが、上手く言葉に出来ない。
スモーカーはそんなアルトを見ながら、頭を2・3回掻き、呆れた様に言った。
「だからそんな情けねェ顔してんのか」
『え…?』
アルトは驚きスモーカーを見る。
『情けない顔…?誰が?』
「バカか。てめェだよ」
『僕?』
「ああ。鏡見たか?いつものてめェらしくねェ、みっともない顔だ」
『……』
スモーカーは鍵を取り、立ち上がる。アルトはただそれを見上げた。
「裏切られて悔しいなら、悔しいって顔して、そのドレークって奴を一発本気で殴ってやればいいじゃねェか」
『殴る…!?』
「何もしないよりはなんかあんだろ。その後捕まえりゃいい。そしたらアンタの気も晴れんじゃねェのか」
『……』
スモーカーはボーっと自分を見るアルトに眉を寄せる。
「何だ?」
『……。スモーカークン、もしかして励ましてくれてるのかい?』
「!バカ言うな…」
スモーカーは一瞬言葉につまるが、すぐにアルトに背を向け、ドアの前に立ち鍵を開ける。
そしてドアノブに手をかけながら言った。
「おれはそんないい奴じゃねェよ。ただでさえ、てめェみたいなガキが上司だってのが気に入らねェんだ。
その上、そんなしけた面されたらこれからの作戦の邪魔になるから言ったまでだ」
そう言うとスモーカーはアルトの言葉も聞かず、出て行った。ガチャン!っと少し乱暴にドアが閉まる。
『………素直じゃないなぁ』
アルトはスモーカーが出て行ったドアを見ながら呟いた。
それからソファに座りなおし、ホットチョコを口につける。
そしてスモーカーの言葉を反芻しながら、納得したように頷いた。
『殴るってのは意外に名案だな。もし…ドレーククンが生きてて、会うことがあるなら……』
ズキンッ!!
『ぐっ!!!!』
アルトは突然鈍器で殴られた様な、ひどい頭痛に襲われる。はずみでカップをテーブルに手放した。
カップはテーブルの上でコツンッと倒れ、まだカップに残っていたホットチョコがこぼれる。
『……ハァ…ハァ』
アルトはそれを気にすることも出来ず、目をきつく瞑る。そして頭を正常に戻すため、酸素を脳に送り込もうと大きく呼吸をした。
さらに荒く深呼吸を繰り返しながら、目を開ける。
しかし視界はぼやけ、目が回る。脳が揺れる感覚になり、体のバランスがまったく取れる気がしない。
『……っ。なに、これ…』
そう言うのとほぼ同時にアルトは、ソファとテーブルの間に倒れこんだ。
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