舞い降りた昇進
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ここはGLにある海軍本部のある一室。
部屋の至るところには積み上げられた本の山、そしてテーブルには甘いお菓子がたくさん置かれている。
この部屋の住人はノティ・アルト。海軍少将でくせっ毛の強い黒髪に少しばかり目付きの悪い緑の瞳を持つ青年だ。
今日は“初めて出来た友人”の昇進を祝うため、いつもは着ないスーツと“正義”を背負う白いコートという正装に袖を通す。鏡の前で着け慣れないネクタイを結ぶのに悪戦苦闘していた。
プルプルプルプル……
『…なんだ?』
アルトはネクタイを諦め、電伝虫に手を伸ばす。
ガチャ
『……はい。ノティ』
[ノティ少将!! ドレーク少将が!!]
『? ドレーククンがどうしたのかい??』
[ドレーク少将が姿を消しました!!]
『……どういうことか、説明してくれ』
アルトは低い声で咎めるように尋ねた。突然のことで思った以上に混乱している自身の心を必死に抑える。
[はっ、失礼しました。正確に言いますと、ドレーク少将が率いていた小隊の海兵約20人と共に海軍から逃走したと思われます]
『何、だって…。今日はドレーククンの昇進の日じゃないか…主役が…ドレーククンが海軍から消えたなんて…』
[事実です。先程、船で逃亡したのを確認しました]
『……間違いは?…』
[ありません…]
『……』
[ノティ少……]
『悪い、切るよ』
ガチャン
『………』
アルトは電伝虫の受話器を置いた。
『……何かの間違いだろ……くそっ!!』
アルトは力一杯執務机を叩くと、部屋を飛び出す。青キジの下へ向かった。
バンッ!!
荒々しいく開いたドアへ青キジは目を向ける。そこにいたのは珍しく正装したアルト。
「アルト、どうしたの?」
『……ハァ…ハァ。クザンクン。ドレーククンが裏切ったと報告が入った……嘘、だよね?』
アルトの困惑した顔を見て、困ったなぁっと言う顔をする青キジ。
「……残念だが、本当だよ」
『!!?』
「さっき、海軍の船を強奪。逃亡したのを確認した。周到に用意してたんだろうね、すぐに見失ったよ」
『………嘘だ』
ガンッと壁を殴る。珍しく緑の瞳が揺れるのを青キジは見ながら歩み寄った。
「アルト」
『嘘だ…!! ドレーククンが裏切るなんて、何かの間違いだ!!』
「アルト!! 聞きなさい」
ガシッと青キジに肩を捕まれたアルトは驚き、身体の動きを止める。青キジから顔を上げるように言われ、静かに顔をあげた。
「アルト。落ち着いて、事実を受け入れるんだ。ドレーク少将は海軍から海賊になった」
『………』
「アルト。ドレーク少将は何も言ってなかったのか…?」
青キジの問いにアルトは首を横に振る。
『本当に知らない。そんな素振りなかった…』
プルプルプルプル……
『!!?』
「………」
青キジの電伝虫が鳴る。青キジはアルトから離れ受話器を取る。
[青キジ。そっちにアルトはいるかい?]
「ああ…おつるさん。いますよ」
[かわっておくれ]
青キジは受話器をアルトに差し出す。アルトは受け取った。
『……かわったよ…』
アルトは受話器に向けて声を発する。
[状況は把握しているね]
『……ああ』
[じゃあ、今から言うことをよく聞いとくれ]
『………』
[今日の昇進式は中止せず行うことになったよ]
『えっ??』
[そこで、ノティ・アルト少将。本日の昇進式をもって“中将”に昇進してもらうことになった]
『「!!?」』
大参謀つるの言葉にアルトも青キジも驚く。青キジは受話器に向かって話した。
「おつるさんどういうことです? あまりにも急では…」
[上の決定さ。アルト、聞こえたかい?]
『………わかった。僕、昇進式に出るよ』
「アルト!?」
アルトの返答に青キジは驚く。
[そう言って貰えると助かるよ。式は1時間後だ。30分までには会場に向かっておくれ]
『わかった…』
ガチャッと電伝虫が切れ静かになった。青キジはため息をつき、壁にもたれる。
「なんでOKしたの? アルトらしくないじゃないか」
『わからない。ただ……』
「ただ?」
『……いや、何にもない。僕、行くよ』
「アルト!!」
アルトは青キジの制止も聞かず部屋から出て行った。
「はぁ……どうしちまったんだろうな、アルトは」
とある岬。
ここは一度だけドレークに連れて来られた所。
『………ドレーククン。いるんだろ?』
アルトは願いにも似た声を出す。
「よく、わかったな」
アルトは振り返る。そこにはドレークがいた。
『……ドレーククン』
「アルトのそういう姿は初めてみたな。似合うじゃないか」
アルトの正装を見て、ドレークは素直に感想を言う。
『そんな答えはいらない』
アルトはかぶりを振る。
『なんで、黙ってた』
「……すまない。アルトには話せなかった。青キジが探っていたから」
その言葉にアルトは拳を握った。
『…ドレーククンは…クザンクンが僕を使ってキミ達の動向を探ってたと言うのかい…?』
「確証はない……それにアルトを巻き込みたくなかっ…」
『もういい』
アルトはドレークの言葉を切る。
「………アルト、すまない」
『謝罪なんかいらない。欲しくない』
「……アルト」
ドレークはアルトの表情が変わるのがわかった。澄んだ緑の目がドレークを捉える。
『ドレーククン。後数分したら出発しなよ』
「?」
『昇進式は予定通り行われるんだ』
「なんだと…誰が昇進するんだ!!?」
ドレークは驚く。中止になるものだと思っていたからだ。
『僕が“中将”になるんだよ』
「アルトが!!?」
『さっき決まったんだ。大出世だろ』
「……なぜ、受けた」
『気分だよ。なってもいいって思っただけ』
アルトは、んっと背筋を伸ばす。そしてはぁっと肩の力を抜いた。
『昇進式が始まったら逃げた方がいいよ。出て行く方なら手薄だろうし。海軍はまだキミ達を探してるからね』
「アルト、まさかおれ達を逃がすために…」
『そんな訳ないだろ。僕のはいつだって気まぐれさ』
アルトはクスクス笑う。
「………アルトは他人思いだよ」
アルトはドレークの言葉を聞き流す様に背を向ける。
『今日は見逃してあげるよ』
「………」
『友人として最後の容赦ってやつかな。でも次に、逢うときは一切容赦はしない。もうキミを友だとも思わない…』
そう言うと、アルトはドレークに背を向け歩き出す。
「アルト!!」
『さよなら、ドレーククン』
部屋の至るところには積み上げられた本の山、そしてテーブルには甘いお菓子がたくさん置かれている。
この部屋の住人はノティ・アルト。海軍少将でくせっ毛の強い黒髪に少しばかり目付きの悪い緑の瞳を持つ青年だ。
今日は“初めて出来た友人”の昇進を祝うため、いつもは着ないスーツと“正義”を背負う白いコートという正装に袖を通す。鏡の前で着け慣れないネクタイを結ぶのに悪戦苦闘していた。
プルプルプルプル……
『…なんだ?』
アルトはネクタイを諦め、電伝虫に手を伸ばす。
ガチャ
『……はい。ノティ』
[ノティ少将!! ドレーク少将が!!]
『? ドレーククンがどうしたのかい??』
[ドレーク少将が姿を消しました!!]
『……どういうことか、説明してくれ』
アルトは低い声で咎めるように尋ねた。突然のことで思った以上に混乱している自身の心を必死に抑える。
[はっ、失礼しました。正確に言いますと、ドレーク少将が率いていた小隊の海兵約20人と共に海軍から逃走したと思われます]
『何、だって…。今日はドレーククンの昇進の日じゃないか…主役が…ドレーククンが海軍から消えたなんて…』
[事実です。先程、船で逃亡したのを確認しました]
『……間違いは?…』
[ありません…]
『……』
[ノティ少……]
『悪い、切るよ』
ガチャン
『………』
アルトは電伝虫の受話器を置いた。
『……何かの間違いだろ……くそっ!!』
アルトは力一杯執務机を叩くと、部屋を飛び出す。青キジの下へ向かった。
バンッ!!
荒々しいく開いたドアへ青キジは目を向ける。そこにいたのは珍しく正装したアルト。
「アルト、どうしたの?」
『……ハァ…ハァ。クザンクン。ドレーククンが裏切ったと報告が入った……嘘、だよね?』
アルトの困惑した顔を見て、困ったなぁっと言う顔をする青キジ。
「……残念だが、本当だよ」
『!!?』
「さっき、海軍の船を強奪。逃亡したのを確認した。周到に用意してたんだろうね、すぐに見失ったよ」
『………嘘だ』
ガンッと壁を殴る。珍しく緑の瞳が揺れるのを青キジは見ながら歩み寄った。
「アルト」
『嘘だ…!! ドレーククンが裏切るなんて、何かの間違いだ!!』
「アルト!! 聞きなさい」
ガシッと青キジに肩を捕まれたアルトは驚き、身体の動きを止める。青キジから顔を上げるように言われ、静かに顔をあげた。
「アルト。落ち着いて、事実を受け入れるんだ。ドレーク少将は海軍から海賊になった」
『………』
「アルト。ドレーク少将は何も言ってなかったのか…?」
青キジの問いにアルトは首を横に振る。
『本当に知らない。そんな素振りなかった…』
プルプルプルプル……
『!!?』
「………」
青キジの電伝虫が鳴る。青キジはアルトから離れ受話器を取る。
[青キジ。そっちにアルトはいるかい?]
「ああ…おつるさん。いますよ」
[かわっておくれ]
青キジは受話器をアルトに差し出す。アルトは受け取った。
『……かわったよ…』
アルトは受話器に向けて声を発する。
[状況は把握しているね]
『……ああ』
[じゃあ、今から言うことをよく聞いとくれ]
『………』
[今日の昇進式は中止せず行うことになったよ]
『えっ??』
[そこで、ノティ・アルト少将。本日の昇進式をもって“中将”に昇進してもらうことになった]
『「!!?」』
大参謀つるの言葉にアルトも青キジも驚く。青キジは受話器に向かって話した。
「おつるさんどういうことです? あまりにも急では…」
[上の決定さ。アルト、聞こえたかい?]
『………わかった。僕、昇進式に出るよ』
「アルト!?」
アルトの返答に青キジは驚く。
[そう言って貰えると助かるよ。式は1時間後だ。30分までには会場に向かっておくれ]
『わかった…』
ガチャッと電伝虫が切れ静かになった。青キジはため息をつき、壁にもたれる。
「なんでOKしたの? アルトらしくないじゃないか」
『わからない。ただ……』
「ただ?」
『……いや、何にもない。僕、行くよ』
「アルト!!」
アルトは青キジの制止も聞かず部屋から出て行った。
「はぁ……どうしちまったんだろうな、アルトは」
とある岬。
ここは一度だけドレークに連れて来られた所。
『………ドレーククン。いるんだろ?』
アルトは願いにも似た声を出す。
「よく、わかったな」
アルトは振り返る。そこにはドレークがいた。
『……ドレーククン』
「アルトのそういう姿は初めてみたな。似合うじゃないか」
アルトの正装を見て、ドレークは素直に感想を言う。
『そんな答えはいらない』
アルトはかぶりを振る。
『なんで、黙ってた』
「……すまない。アルトには話せなかった。青キジが探っていたから」
その言葉にアルトは拳を握った。
『…ドレーククンは…クザンクンが僕を使ってキミ達の動向を探ってたと言うのかい…?』
「確証はない……それにアルトを巻き込みたくなかっ…」
『もういい』
アルトはドレークの言葉を切る。
「………アルト、すまない」
『謝罪なんかいらない。欲しくない』
「……アルト」
ドレークはアルトの表情が変わるのがわかった。澄んだ緑の目がドレークを捉える。
『ドレーククン。後数分したら出発しなよ』
「?」
『昇進式は予定通り行われるんだ』
「なんだと…誰が昇進するんだ!!?」
ドレークは驚く。中止になるものだと思っていたからだ。
『僕が“中将”になるんだよ』
「アルトが!!?」
『さっき決まったんだ。大出世だろ』
「……なぜ、受けた」
『気分だよ。なってもいいって思っただけ』
アルトは、んっと背筋を伸ばす。そしてはぁっと肩の力を抜いた。
『昇進式が始まったら逃げた方がいいよ。出て行く方なら手薄だろうし。海軍はまだキミ達を探してるからね』
「アルト、まさかおれ達を逃がすために…」
『そんな訳ないだろ。僕のはいつだって気まぐれさ』
アルトはクスクス笑う。
「………アルトは他人思いだよ」
アルトはドレークの言葉を聞き流す様に背を向ける。
『今日は見逃してあげるよ』
「………」
『友人として最後の容赦ってやつかな。でも次に、逢うときは一切容赦はしない。もうキミを友だとも思わない…』
そう言うと、アルトはドレークに背を向け歩き出す。
「アルト!!」
『さよなら、ドレーククン』