「毎度あり～！！」

次の日、宿を後にしたアルトは、お菓子屋でアメやチョコレートを買い漁り店を出た。

『……あ、電伝虫借りるの忘れてた』

アルトはチョコレートを食べながら呟く。まぁ、仕方ないかと、他に借りれそうな所を探しつつ街を歩くことにした。


「と、盗賊だ！！」

『？』

街の真ん中。十字路にさし掛かった時、右の道からそんな声が聞こえてきた。アルトは自然と歩をそちらに進める。

「やめてくれ！！　孫には手を出すな！！！」

問題の通りでは、白い髪に丸い眼鏡をかけたおじいさんが他の住人に阻まれながらも、その手を伸ばす。手の先には一人の少女。男にナイフを突き付けられていた。

『5人か…』

後4人程、ナイフを構えている様子から盗賊は5人組だとわかる。

「ジジイ！　金と金になりそうなブツ全部出しな！　てめえらもだ！！！」

周りの人々にも声を荒げる盗賊達。

『………』

アルトはペースを崩さず歩く。

「おっとヘタな動きはすんなよ。ガキが死ぬぜ！！」

「アニキは1000万ベリーの賞金首だ！　下手に逆らえばてめェらの命もねェぞ！！」

少女にナイフを突きつけている男が賞金首の様だ。賞金首の男はニタニタと笑いながらナイフを少女に向け、残りの男達が金品を巻き上げていた。
周りの人々は恐怖で震え上がっている。





「…ガはァ！！」

「「「！！？」」」

突然、少女にナイフを突き付けていた賞金首の男が昏倒した。

『…なんだ、1000万ってこの程度なのか』

「！！！」

アルトはつまらなさそうに言う。盗賊達、そして周りにいる一般市民の目の前には少女を抱えたアルトが立っていた。
皆、突然のアルトの登場に驚き、目を見開く。アルトに視線が集まるが、アルトはそれを気にも留めず、一人ため息混じりに呟いた。

『まぁ、悪党らしいのは助かる……か。麦わらクンみたいなのばかりじゃ、やりづらいしね』

アルトが少女を降ろすと少女はダッとおじいさんの所へ駆けて行った。盗賊達は昏倒している賞金首を見てアルトに怒鳴る。

「「アニキ！！」」

「てめェ、アニキになんてことを！！　何者だ！！？」

『僕は海軍だよ。ここに書いてるじゃないか』

アルトは“正義”の文字がある左足をポンポンと叩く。

「「「海軍！！？」」」

男達だけでなく周りの市民も驚いた。

「か、海軍だと……！！」

「くそ！！　いつの間に……！！？」

『来たのは今さっきだよ』

「！？　そう言う意味じゃねェ！！　この島になんで海軍が居やがるだって意味だ！！」

一人の男が怒鳴る。アルトは、言葉の意味を理解した。

『ああ、そう言うことか。たまたま昨日この島に着いたんだ』

「「………」」

アルトのマイペースな解答に、呆れる盗賊達。アルトは腕を組み考える。

『さて…こう言う場合も一応勧告するべきなのかな』

「「「？」」」

何やら呟いているアルトに怪訝な顔をする盗賊達。アルトは、一応しておくかと言う結論に至り、盗賊達に視線を向けた。

『えっと……“ここで死ぬ”か“大人しく大監獄に行く”か、好きな方選んでいいよ』

「「「！！！！」」」

アルトはどうかな？っと尋ねる。盗賊達は怒鳴った。

「「「どっちも飲める訳ねェだろ！！！！」」」

アルトは首を傾げる。

『それは困ったなぁ、キミ達にこれ以上“優しい”条件はないんだけど』

その言葉に盗賊達はカチンッと顔を引きつらせ、ナイフを振り上げた。

「舐めてんじゃねぇぞ！！」

「やっちまえ！！」

「「「おおー――！！」」」

『来るの？　じゃあ、“死ななかったら大監獄”でいいか』

アルトはそうに言うと前から斬りかかって来た2人の男達の首元を手刀で正確に殴り、昏倒させる。そして後ろから斬りかかって来た残りの2人には右足を軸に左足を上げた。

「「？？」」

それを飛び込んで来た1人の顔にスッと添え、そのまま顔の横から蹴りを入れる。蹴られた男はもう1人をも巻き込み、2人で吹っ飛んだ。

『あ…』

アルトが気付いた時にはすでに遅く、骨董屋と看板が掲げてある店の壁に盗賊達は激突する。その際、ガシャン！！っと引き戸のガラスが衝撃で割れてしまった。

「「「……」」」

盗賊達は全員が見事に昏倒する。一瞬だった。周りにいた市民達は呆気に取られていたが、すぐに歓声があがった。