謀られた正義[後編]
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海軍本部医務室。
アルトが眠りについて半日、医務室の個室にいた。
『……んっ……』
アルトはゆっくりと目を開ける。 目に入ったのは白い天井。
『ここは……?』
「病院だよ」
『えっ…クザン、クン…?』
アルトは声の主を確めるため体を起こす。
『痛っ…!!』
「手、怪我してんだから無理しないの」
青キジはアルトの体を支え、座らせる。
『僕…手、怪我したんだ』
アルトの両手には包帯がしっかりと巻かれていた。
「武器をだいぶ強く握ってたみたいだ」
『……そんなつもりなかったけど』
「まぁ、無事で良かった」
青キジはアルトの頭を撫でる。
『クザンクン、ずっと居たの……?』
「まぁ、“おれは”サボリのついでかな」
『そうか。……みんなはどうしてる?』
「……ああ。ちょっと待ってな」
『……?』
青キジは部屋のドアを引く。
「「「うわぁぁぁ!!!」」」
突然開いたドアにバランスを崩し、人がたくさん部屋になだれ込んで来る、アルトの部下達だった。
『……』
「痛ッー…!!?」
「大将…急に開けないで下さいよォ」
「待ってなさいっとは言ったけど、ドアに張り付けとは言ってないじゃない」
「でも!! 心配じゃないですか」
「「「そうですよ!!!」」」
「あっ、中将が起きてる!!」
「「「!!!」」」
その声に部下達は一斉にアルトを見る。アルトが手を挙げると、部下達は立ち上がり、アルトに駆け寄った。
「中将!! 大丈夫ですか!!?」
「中将、すいませんでした!!おれ達が不甲斐ないばっかりに……」
「でも助けに来てくれて本当に感動しました!!」
「おれも!」
「おれもです!」
「おい、通せ!! 中将!お菓子持ってきましたよ!!」
わいわいと騒ぐ部下達。アルトはその光景にポカンとしていた。
「お前達!!! 中将は目を覚まされたばかりだ! そんなに騒ぐな!」
遅れて入って来たロールが怒る。しかし部下からは笑いを交えて返される。
「何言ってんですか少将!!」
「一番早く中将の側に来れなくて悔しいんでしょう!」
「報告書と始末書病室の前で仕上げてずっと待ってましたもんね」
「しょうがないから空けますよ。来てください!」
「シュフォン! お、お前らー――!!!」
部下達の言葉にロールは顔が赤くなる。
『………フッ、ハハ』
ロールと部下達のやり取りを静かに見ていたアルトは、次第に笑いが込み上げてきた。
「「「……?」」」
『アハハハハッ……ハハハ……!!!』
アルトは腹を抱え、大笑いする。その表情は自然な“笑顔”だった。いつも人形のように表情が動かないアルトからは想像できない無邪気な笑顔。笑うアルトを見たロール達は驚きの顔だ。
「中将が……あの無表情の中将が」
「「「笑った……!!!」」」
「おれ……初めて見た。中将の笑顔」
「おれも……」
アルトは笑いを抑え、肩でハアハアと息をする。
『…ハァ……ハァ、笑いすぎて苦しい…。キミ達は相変わらず、騒ぎすぎだよ』
「ちゅ、中将……」
『………ん?? どうかしたかい??』
アルトはびっくりした顔の部下達に笑いかける。ドアの付近に居た青キジはびっくりした表情を隠すため口元を抑えていた。
同時にその光景を見ながら笑った。
「(あんな笑顔久しぶりに見た。そうか……判断は間違ってなかったんだな)」
青キジは嬉しそうだった。そして、邪魔にならないよう静かに部屋を後にした。
場がなごみ。少しの間またワイワイとしていた病室。ロールがアルトの側に行く。表情は真剣だった。
「ノティ中将……」
『どうした、ロールクン?』
「私に退艦の許可を頂けないでしょうか」
ロールの言葉にしーんっと病室が静まった。
『理由は……??』
アルトは静かに聞く。ロールは、頭を下げた。
「私は、一度“寝返り”ました」
『………』
「それは、おれ達のためでしょう、少将!!」
シュフォンが言う。ロールは頭を下げたまま、続ける。
「例えそうであったとしても、私は上官のあなたに銃を向けました。これは規律違反です。私の浅はかな判断の結果…。ですからその責任を取って……」
『必要ない。ロールクン、頭を上げるんだ』
ロールの言葉をアルトは切った。ロールは申し訳なさそうに頭を上げる。
『キミが責任取る必要はない』
「しかし…!!」
『僕は命令しただろ? “撃て”と。キミは上官からの命令に従っただけだ。何も問題はない』
「!!!」
『それに言っただろう。僕らは隊にとって“最良”を取ると。キミはそれをしたんだろう?』
「………はい」
『なら、何の責もない。キミは隊のために損な役割に回っただけだ』
「………」
アルトはロールの目を見た。
『僕にはキミの力が必要だ。そして隊のみんなの力も。だから誰一人、艦から離れることは認めない。―――これは“中将命令”だよ』
「「「………」」」
ロールをはじめ、部下達はアルトに視線を集中する。アルトは皆を見渡しながら話した。
『“無事で良かった”……今回の件で僕が言いたいのはこれだけだよ。みんな、次の任務に備えて今はゆっくり休養してくれ。……そして、これからもよろしく頼む』
「「「はっ!!!」」」
その言葉に部下達は皆、敬礼し、大きな声で返事をする。アルトはその声にまた笑顔をみせた。
⇒あとがき
アルトが眠りについて半日、医務室の個室にいた。
『……んっ……』
アルトはゆっくりと目を開ける。 目に入ったのは白い天井。
『ここは……?』
「病院だよ」
『えっ…クザン、クン…?』
アルトは声の主を確めるため体を起こす。
『痛っ…!!』
「手、怪我してんだから無理しないの」
青キジはアルトの体を支え、座らせる。
『僕…手、怪我したんだ』
アルトの両手には包帯がしっかりと巻かれていた。
「武器をだいぶ強く握ってたみたいだ」
『……そんなつもりなかったけど』
「まぁ、無事で良かった」
青キジはアルトの頭を撫でる。
『クザンクン、ずっと居たの……?』
「まぁ、“おれは”サボリのついでかな」
『そうか。……みんなはどうしてる?』
「……ああ。ちょっと待ってな」
『……?』
青キジは部屋のドアを引く。
「「「うわぁぁぁ!!!」」」
突然開いたドアにバランスを崩し、人がたくさん部屋になだれ込んで来る、アルトの部下達だった。
『……』
「痛ッー…!!?」
「大将…急に開けないで下さいよォ」
「待ってなさいっとは言ったけど、ドアに張り付けとは言ってないじゃない」
「でも!! 心配じゃないですか」
「「「そうですよ!!!」」」
「あっ、中将が起きてる!!」
「「「!!!」」」
その声に部下達は一斉にアルトを見る。アルトが手を挙げると、部下達は立ち上がり、アルトに駆け寄った。
「中将!! 大丈夫ですか!!?」
「中将、すいませんでした!!おれ達が不甲斐ないばっかりに……」
「でも助けに来てくれて本当に感動しました!!」
「おれも!」
「おれもです!」
「おい、通せ!! 中将!お菓子持ってきましたよ!!」
わいわいと騒ぐ部下達。アルトはその光景にポカンとしていた。
「お前達!!! 中将は目を覚まされたばかりだ! そんなに騒ぐな!」
遅れて入って来たロールが怒る。しかし部下からは笑いを交えて返される。
「何言ってんですか少将!!」
「一番早く中将の側に来れなくて悔しいんでしょう!」
「報告書と始末書病室の前で仕上げてずっと待ってましたもんね」
「しょうがないから空けますよ。来てください!」
「シュフォン! お、お前らー――!!!」
部下達の言葉にロールは顔が赤くなる。
『………フッ、ハハ』
ロールと部下達のやり取りを静かに見ていたアルトは、次第に笑いが込み上げてきた。
「「「……?」」」
『アハハハハッ……ハハハ……!!!』
アルトは腹を抱え、大笑いする。その表情は自然な“笑顔”だった。いつも人形のように表情が動かないアルトからは想像できない無邪気な笑顔。笑うアルトを見たロール達は驚きの顔だ。
「中将が……あの無表情の中将が」
「「「笑った……!!!」」」
「おれ……初めて見た。中将の笑顔」
「おれも……」
アルトは笑いを抑え、肩でハアハアと息をする。
『…ハァ……ハァ、笑いすぎて苦しい…。キミ達は相変わらず、騒ぎすぎだよ』
「ちゅ、中将……」
『………ん?? どうかしたかい??』
アルトはびっくりした顔の部下達に笑いかける。ドアの付近に居た青キジはびっくりした表情を隠すため口元を抑えていた。
同時にその光景を見ながら笑った。
「(あんな笑顔久しぶりに見た。そうか……判断は間違ってなかったんだな)」
青キジは嬉しそうだった。そして、邪魔にならないよう静かに部屋を後にした。
場がなごみ。少しの間またワイワイとしていた病室。ロールがアルトの側に行く。表情は真剣だった。
「ノティ中将……」
『どうした、ロールクン?』
「私に退艦の許可を頂けないでしょうか」
ロールの言葉にしーんっと病室が静まった。
『理由は……??』
アルトは静かに聞く。ロールは、頭を下げた。
「私は、一度“寝返り”ました」
『………』
「それは、おれ達のためでしょう、少将!!」
シュフォンが言う。ロールは頭を下げたまま、続ける。
「例えそうであったとしても、私は上官のあなたに銃を向けました。これは規律違反です。私の浅はかな判断の結果…。ですからその責任を取って……」
『必要ない。ロールクン、頭を上げるんだ』
ロールの言葉をアルトは切った。ロールは申し訳なさそうに頭を上げる。
『キミが責任取る必要はない』
「しかし…!!」
『僕は命令しただろ? “撃て”と。キミは上官からの命令に従っただけだ。何も問題はない』
「!!!」
『それに言っただろう。僕らは隊にとって“最良”を取ると。キミはそれをしたんだろう?』
「………はい」
『なら、何の責もない。キミは隊のために損な役割に回っただけだ』
「………」
アルトはロールの目を見た。
『僕にはキミの力が必要だ。そして隊のみんなの力も。だから誰一人、艦から離れることは認めない。―――これは“中将命令”だよ』
「「「………」」」
ロールをはじめ、部下達はアルトに視線を集中する。アルトは皆を見渡しながら話した。
『“無事で良かった”……今回の件で僕が言いたいのはこれだけだよ。みんな、次の任務に備えて今はゆっくり休養してくれ。……そして、これからもよろしく頼む』
「「「はっ!!!」」」
その言葉に部下達は皆、敬礼し、大きな声で返事をする。アルトはその声にまた笑顔をみせた。
⇒あとがき