謀られた正義[後編]
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アルト達が向かう目的地では、海賊船が海軍の船を囲むように配置されている。
「後30分か…お前らも見捨てられたな」
海賊船の本船からアルトの艦を見下ろすのは、免責になったスコーン元准将。 ロールはスコーンを睨む。
「ノティ中将は我々を見捨てはしない!!」
「見捨ててんだから来ねェんだろうがァよ!!!……なァ、ロール。元同僚としての最後のよしみだ。寝返れ、てめェが寝返れば部下の命は保障してやるよ」
「…………!!」
「アルト目的地だ」
青キジの言葉にアルトは瞑っていた目を静かに開ける。
『……艦隊は?』
「あるよ。配置も予想通りだ。………行けるか?」
『愚問だ。いつでも行けるよ』
アルトはスーツケースを持つ。
「この船をロール達の艦の側につける。完全に止まったら、作戦開始だ」
『了解』
アルトはドアのすぐ横の壁にもたれる。青キジは船を艦隊に寄せるため、舵を取る。 まもなくして船が止まった。
「アルト」
『何?』
「俺はここで“待つ”。……死ぬなよ」
『ああ』
アルトはスーツケースを持って、ドアを出た。
「……お。来たようだな」
「!!!」
スコーンの言葉にロールは目を向ける。救護船が間近に迫ってきた。
「ほう。要求を飲んで来たのか、良かったなロール」
「………」
「砲撃の準備をしろ!」
スコーンの隣にいる船長らしい男がクルーに命令する。
「大砲はロールの艦に向けろ」
スコーンが船長に指示し、砲弾が艦に向けられる。
「さて……どんなツラが拝めるか」
救護船が止まり、少しして人が出てくる。アルトだ。
それを見てスコーンはニヤリと笑う。
「おお、本人が本当に来やがった」
「(ノティ中将……!!?)」
『要求通り来たよ。アンタのところに行けばいいの?』
「……クク。いや、せっかくだから自分の船に乗れよ」
にやけた顔でスコーンが命令する。アルトは指示に従い、ロール達がいる自分の船に乗り込んだ。
『よっと』
「ノティ中将!!」
「「「中将!!」」」
『………』
アルトは船の様子を観察する。部下はアルトに声をかけるがアルトは少し目を向けただけでスコーンを見た。
『アンタがスコーンか』
「はっ、久しぶりだな。ノティ中将“殿”」
『……悪いけど。僕、キミのこと覚えていないから』
無表情なアルトが冷めた声で言った。スコーンはピクピクと怒りで顔をひきつらせる。
『僕は部下を返してもらうために来たんだ』
「それでひとりでノコノコと……ご苦労なこった」
「おい、お前! 金は用意したのか!!?」
船長がアルトに聞く。スコーンは少し黙ってろっと怒鳴る。アルトはスーツケースの鍵に手をかけた。
『……金ならここだよ』
アルトはスーツケースの取っ手だけを持ち、掲げる。 鍵が外れたケースは簡単に開く。中から札束が甲板にバラバラ落ちた。
「金だ!!」
「だが10億じゃねェ!!!」
『当たり前だ。10億なんて重くて持ってこれないだろ。ここにあるのは1億。残りは船にあるよ』
アルトは前を向いたまま親指で後ろの救護船を指さす。
「早く出せ!!」
『後でいいだろ』
「そうだ。コイツが死ぬのが先だ!!」
スコーンがアルトに指をさしながら余裕の笑みを浮かべた。 アルトは気配を探りながらスコーンに尋ねた。
『……その前に聞きたいことがある』
「あぁ?」
『なんでアンタは僕を狙う?』
「身に覚えがねェといいたいか。てめェのせいで俺の人生が狂わされたんだ!!!」
『………なんのことだ?』
スコーンはアルトを睨み、怒鳴った。
「“秘密任務”の時から気に食わなかったが、てめェはいつもいつも功績をモノにしやがる。少将になるのだって、あのドレークのバカが消えた昇進式の日に中将になるのだって本当は俺だったんだよ!! それを…青キジを笠に着たてめェが全て横取りして行ったんだ!!!」
『クザンクンの笠を着るような行動も、アンタから功績を奪うようなこともしてはいない』
「着てんだよ! だから自然にてめェに功績が流れる。てめェはそれで中将になったんだ!!」
『……昇進になんの意味があるんだ?』
アルトはスコーンを睨む。スコーンはそんなこともわからないのかと、バカにしたような笑みを浮かべる。
「“地位”は“権限”。“権限”は“金”に繋がる…!! だがてめェが居たために、全て狂った。一生准将なんかやってられねェ!!」
スコーンは喋り続ける。
「だから俺は“悪”に!海賊に!なってやるんだ。その“祝い”に金、そしててめェの艦隊とてめェを潰してやるよ!!」
スコーンが言った瞬間、ピリッと空気が変わった。
『………それが理由か? そんなつまらない理由でロールクン達を巻き込んだのか……??』
アルトは自然に覇気を纏っていた。スコーンが怯みつつ、声を張る。
「てめェに何がわかるんだ!!」
『バカの個人的思考に興味はない』
「なっなんだとォ!!」
『昇進したければ、それに見合う成果を出せばいいことだ。そんな簡単なことが解らないからバカだと言ってる。それに加え、アンタは周りを無駄に巻き込む方法しかとれない、ただの愚か者だ』
アルトの捲し立てる様な言葉にスコーンは、我慢出来なくなった。
「黙れ黙れ!! てめェはもう黙って死ね!!おい、ロール!!」
『?』
スコーンの言葉にロールがゆっくりとアルトの正面に立った。 ちょうどスコーンとアルトの間になる様に立っている。
「ノティ中将……」
『………!』
ロールはアルトに銃を向ける。
「ロール少将!!」
「やめて下さい!!」
部下達が声をあげた。ロールは顔をアルトに向けたまま怒鳴る。
「お前らは黙っていろ!!」
「「「………」」」
部下達はロールの気迫に圧され黙る。
『……ロールクン。状況を説明してほしい』
「………」
「ロール、教えてやれよ。お前はおれ達に“寝返った”とな」
『………本当かい、ロールクン?』
アルトはスコーンの言葉を聞きながらロールを見る。ロールは息を整えてはっきりと言った。
「そうです、ノティ中将。私は…“寝返り”ました」
「ククク……ハハハハ!!!」
スコーンが腹を抱えて笑う。
「どうだ! ノティ。助けに来たはずの奴に銃を向けられる気持ちは」
アルトはロールが真っ直ぐ自分に突きつけている銃を見る。
「………」
『………』
「いい画 だな。見ていて飽きない。ナイスなプレゼントだろ? なァ、ノティ。大切な部下の手であの世に逝けるんだからな」
『……そうだな。ロールクンの手で死ぬのも悪くない』
「!!?」
アルトの言葉なロールの瞳が揺らぐ。
「クハハハ。良かったな、ロール。引き金が引きやすいじゃねェか」
「………っ」
ロールは銃を構えなおす。アルトはロールと目を合わせ、穏やかな声で言った。
『………ロールクン。撃たれる前に少し話をしたい』
「………」
『“みんな”ここにいるの?』
「……? はい」
『それは良かった』
「??」
『……キミにはずっと世話になりっ放しだな』
「なんだァ? 昔話か?」
スコーンの言葉を無視し、アルトは続ける。
『僕が着任した日、隊の方針を話し合ったよね』
「………」
『そして核となる方針を決めた。僕らは隊にとっていつも“最良”を選択する…と』
「!!」
アルトは右手で自分の左腕を手を添え、懐かしむ様に話す。
『……そのためにいろいろ考えたよね』
「………中将…」
ロールはアルトの目を見る。アルトは息をつき、右手を離した。
『こんなことをいうのはおかしいけれど、僕は素直にキミと組めてよかったと思っているよ』
「………」
「そろそろ終わりにして貰おうか」
『……。わかった。ロールクン、撃っていいよ』
「!!?……中将は、私が寝返った理由を聞かれないのですか……?」
『必要ない』
アルトははっきりと言った。
「………」
『ロールクン、何も心配はいらないよ。僕は…“死なない”から』
「……え!!?」
「ハッ、おもしれェことを言う。今から元部下に殺される野郎が」
「………中将、本気ですか!?」
流石のロールも怪訝な顔をする。
『……本気だ。信じられないかい?』
「………」
アルトは静か言い。一歩、ロールに近づく。
『撃つんだ、ロールクン。これは命令だ』
アルトの目は真剣だ。また一歩近づく。
「………」
『ロールクン、僕を信じてほしい。必ずキミ達を“助ける”から』
「命を張ってか? お涙頂戴だな」
スコーンは本船からロールとアルトの様子を見て楽しそうに笑う。ロールは静かに、呟く様に言った。
「ノティ中将……私はあなたを信頼しています。……信じて頂けないかも、しれませんが……」
『信じてるよ』
アルトの返答は短かった。だが、ロールには充分だった。ロールは銃の引き金に力を入れる。
『………』
アルトは目を閉じる。ロールは息を吐き、震える手を徐々に抑えた。アルトの頭を狙う。
「早く殺れ!!」
「………っ!!」
ロールは引き金を引いた。
「クハハハ。これで終わりだ!!」
バンッ!!
一発の銃声が鳴り響く。辺りは静かになった。
「後30分か…お前らも見捨てられたな」
海賊船の本船からアルトの艦を見下ろすのは、免責になったスコーン元准将。 ロールはスコーンを睨む。
「ノティ中将は我々を見捨てはしない!!」
「見捨ててんだから来ねェんだろうがァよ!!!……なァ、ロール。元同僚としての最後のよしみだ。寝返れ、てめェが寝返れば部下の命は保障してやるよ」
「…………!!」
「アルト目的地だ」
青キジの言葉にアルトは瞑っていた目を静かに開ける。
『……艦隊は?』
「あるよ。配置も予想通りだ。………行けるか?」
『愚問だ。いつでも行けるよ』
アルトはスーツケースを持つ。
「この船をロール達の艦の側につける。完全に止まったら、作戦開始だ」
『了解』
アルトはドアのすぐ横の壁にもたれる。青キジは船を艦隊に寄せるため、舵を取る。 まもなくして船が止まった。
「アルト」
『何?』
「俺はここで“待つ”。……死ぬなよ」
『ああ』
アルトはスーツケースを持って、ドアを出た。
「……お。来たようだな」
「!!!」
スコーンの言葉にロールは目を向ける。救護船が間近に迫ってきた。
「ほう。要求を飲んで来たのか、良かったなロール」
「………」
「砲撃の準備をしろ!」
スコーンの隣にいる船長らしい男がクルーに命令する。
「大砲はロールの艦に向けろ」
スコーンが船長に指示し、砲弾が艦に向けられる。
「さて……どんなツラが拝めるか」
救護船が止まり、少しして人が出てくる。アルトだ。
それを見てスコーンはニヤリと笑う。
「おお、本人が本当に来やがった」
「(ノティ中将……!!?)」
『要求通り来たよ。アンタのところに行けばいいの?』
「……クク。いや、せっかくだから自分の船に乗れよ」
にやけた顔でスコーンが命令する。アルトは指示に従い、ロール達がいる自分の船に乗り込んだ。
『よっと』
「ノティ中将!!」
「「「中将!!」」」
『………』
アルトは船の様子を観察する。部下はアルトに声をかけるがアルトは少し目を向けただけでスコーンを見た。
『アンタがスコーンか』
「はっ、久しぶりだな。ノティ中将“殿”」
『……悪いけど。僕、キミのこと覚えていないから』
無表情なアルトが冷めた声で言った。スコーンはピクピクと怒りで顔をひきつらせる。
『僕は部下を返してもらうために来たんだ』
「それでひとりでノコノコと……ご苦労なこった」
「おい、お前! 金は用意したのか!!?」
船長がアルトに聞く。スコーンは少し黙ってろっと怒鳴る。アルトはスーツケースの鍵に手をかけた。
『……金ならここだよ』
アルトはスーツケースの取っ手だけを持ち、掲げる。 鍵が外れたケースは簡単に開く。中から札束が甲板にバラバラ落ちた。
「金だ!!」
「だが10億じゃねェ!!!」
『当たり前だ。10億なんて重くて持ってこれないだろ。ここにあるのは1億。残りは船にあるよ』
アルトは前を向いたまま親指で後ろの救護船を指さす。
「早く出せ!!」
『後でいいだろ』
「そうだ。コイツが死ぬのが先だ!!」
スコーンがアルトに指をさしながら余裕の笑みを浮かべた。 アルトは気配を探りながらスコーンに尋ねた。
『……その前に聞きたいことがある』
「あぁ?」
『なんでアンタは僕を狙う?』
「身に覚えがねェといいたいか。てめェのせいで俺の人生が狂わされたんだ!!!」
『………なんのことだ?』
スコーンはアルトを睨み、怒鳴った。
「“秘密任務”の時から気に食わなかったが、てめェはいつもいつも功績をモノにしやがる。少将になるのだって、あのドレークのバカが消えた昇進式の日に中将になるのだって本当は俺だったんだよ!! それを…青キジを笠に着たてめェが全て横取りして行ったんだ!!!」
『クザンクンの笠を着るような行動も、アンタから功績を奪うようなこともしてはいない』
「着てんだよ! だから自然にてめェに功績が流れる。てめェはそれで中将になったんだ!!」
『……昇進になんの意味があるんだ?』
アルトはスコーンを睨む。スコーンはそんなこともわからないのかと、バカにしたような笑みを浮かべる。
「“地位”は“権限”。“権限”は“金”に繋がる…!! だがてめェが居たために、全て狂った。一生准将なんかやってられねェ!!」
スコーンは喋り続ける。
「だから俺は“悪”に!海賊に!なってやるんだ。その“祝い”に金、そしててめェの艦隊とてめェを潰してやるよ!!」
スコーンが言った瞬間、ピリッと空気が変わった。
『………それが理由か? そんなつまらない理由でロールクン達を巻き込んだのか……??』
アルトは自然に覇気を纏っていた。スコーンが怯みつつ、声を張る。
「てめェに何がわかるんだ!!」
『バカの個人的思考に興味はない』
「なっなんだとォ!!」
『昇進したければ、それに見合う成果を出せばいいことだ。そんな簡単なことが解らないからバカだと言ってる。それに加え、アンタは周りを無駄に巻き込む方法しかとれない、ただの愚か者だ』
アルトの捲し立てる様な言葉にスコーンは、我慢出来なくなった。
「黙れ黙れ!! てめェはもう黙って死ね!!おい、ロール!!」
『?』
スコーンの言葉にロールがゆっくりとアルトの正面に立った。 ちょうどスコーンとアルトの間になる様に立っている。
「ノティ中将……」
『………!』
ロールはアルトに銃を向ける。
「ロール少将!!」
「やめて下さい!!」
部下達が声をあげた。ロールは顔をアルトに向けたまま怒鳴る。
「お前らは黙っていろ!!」
「「「………」」」
部下達はロールの気迫に圧され黙る。
『……ロールクン。状況を説明してほしい』
「………」
「ロール、教えてやれよ。お前はおれ達に“寝返った”とな」
『………本当かい、ロールクン?』
アルトはスコーンの言葉を聞きながらロールを見る。ロールは息を整えてはっきりと言った。
「そうです、ノティ中将。私は…“寝返り”ました」
「ククク……ハハハハ!!!」
スコーンが腹を抱えて笑う。
「どうだ! ノティ。助けに来たはずの奴に銃を向けられる気持ちは」
アルトはロールが真っ直ぐ自分に突きつけている銃を見る。
「………」
『………』
「いい
『……そうだな。ロールクンの手で死ぬのも悪くない』
「!!?」
アルトの言葉なロールの瞳が揺らぐ。
「クハハハ。良かったな、ロール。引き金が引きやすいじゃねェか」
「………っ」
ロールは銃を構えなおす。アルトはロールと目を合わせ、穏やかな声で言った。
『………ロールクン。撃たれる前に少し話をしたい』
「………」
『“みんな”ここにいるの?』
「……? はい」
『それは良かった』
「??」
『……キミにはずっと世話になりっ放しだな』
「なんだァ? 昔話か?」
スコーンの言葉を無視し、アルトは続ける。
『僕が着任した日、隊の方針を話し合ったよね』
「………」
『そして核となる方針を決めた。僕らは隊にとっていつも“最良”を選択する…と』
「!!」
アルトは右手で自分の左腕を手を添え、懐かしむ様に話す。
『……そのためにいろいろ考えたよね』
「………中将…」
ロールはアルトの目を見る。アルトは息をつき、右手を離した。
『こんなことをいうのはおかしいけれど、僕は素直にキミと組めてよかったと思っているよ』
「………」
「そろそろ終わりにして貰おうか」
『……。わかった。ロールクン、撃っていいよ』
「!!?……中将は、私が寝返った理由を聞かれないのですか……?」
『必要ない』
アルトははっきりと言った。
「………」
『ロールクン、何も心配はいらないよ。僕は…“死なない”から』
「……え!!?」
「ハッ、おもしれェことを言う。今から元部下に殺される野郎が」
「………中将、本気ですか!?」
流石のロールも怪訝な顔をする。
『……本気だ。信じられないかい?』
「………」
アルトは静か言い。一歩、ロールに近づく。
『撃つんだ、ロールクン。これは命令だ』
アルトの目は真剣だ。また一歩近づく。
「………」
『ロールクン、僕を信じてほしい。必ずキミ達を“助ける”から』
「命を張ってか? お涙頂戴だな」
スコーンは本船からロールとアルトの様子を見て楽しそうに笑う。ロールは静かに、呟く様に言った。
「ノティ中将……私はあなたを信頼しています。……信じて頂けないかも、しれませんが……」
『信じてるよ』
アルトの返答は短かった。だが、ロールには充分だった。ロールは銃の引き金に力を入れる。
『………』
アルトは目を閉じる。ロールは息を吐き、震える手を徐々に抑えた。アルトの頭を狙う。
「早く殺れ!!」
「………っ!!」
ロールは引き金を引いた。
「クハハハ。これで終わりだ!!」
バンッ!!
一発の銃声が鳴り響く。辺りは静かになった。