謀られた正義[後編]

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アルト!!?」

青キジが驚く。アルトは至って冷静だ。


『……無謀なのはわかっている。だけど、クザンクン達が行ってはダメだ』

「………」

アルトは続ける。


『今回の失態。それは部隊の長である僕に責任がある』

「それがわかっちょるなら構わん。だが近接特化のお前が10隻相手に“人質”を庇いながら砲撃を防ぎ、敵を倒す。この全てをこなせるとは到底思えん」

「それが相手の狙いだろう」

赤犬の見解に青キジがつけ加える。


『わかってる。けど、僕は自分の手でロールクン達を助けたい』

アルトは言う。黄猿が、ん~っといいながら尋ねる。


アルト君の気持ちはわからないでもないけどねェ……勝算はあるのかい?」

『………』

白兵戦ならばアルトの右に出るものはそういない。しかし、遠距離からの砲撃を受け続ける可能性、そして何より人質を守りながら戦うという今回の場合、アルトの力は発揮されないだろう。


『……勝算はない。でも…』

「本気で言ってるのかい、アルト?」

つるが言う。アルトは頷く。


『本気だよ。そのためなら何をしてもいい』

「………センゴク元帥。少し早いが、あれを渡そう」

「おつるさん、本気か!!?」

つるの発言にセンゴクは驚く。しかしつるとアルトの真剣な表情に息をつき、引き出しから箱を取り出した。つるは箱を確認し、アルトに目を向け言う。


「本当はもっと考える時間をやりたかったんだがね。アルト、これを受け取ると言うなら命令を出すよ」

センゴクは箱を開ける。そこにあったのは手のひらより小さいくらいのグルグル模様の実、紛れもなく“悪魔の実”だった。


「「「!!?」」」

大将3人は驚く。アルトも目を悪魔の実に向けたまま聞いた。


『それって…“悪魔の実”……??』

「そうだ。最近手に入ったものだ」

センゴクが答える。アルトは興味津々だ。


『初めて現物を見た』

「どんな実か、どんな効力かはわかっていない」

図鑑には載っていなかった。そうセンゴクは付け加えた。


「それは、賭けじゃないか」

青キジが言う。つるが頷く。


「そう。だからゆっくり相談して決めるべきだったのさ。だが、どんな形でさえ、アルトの力になるはずだ」

『………』

アルト、お前が決めるんだよ。これを食べれば命令は出す。だが食べないなら、そこの3人に任すんだ。私らはわざわざお前を死なせに行く様な命令はしない」

『………本当にこれを食べれば、命令してくれるのかい?』

アルトはセンゴクを見る。センゴクは頷いた。


「能力がわからん以上、大将ひとりはつけるぞ。万が一、大したものでなければ死ぬからな」

『……なるほど』

アルトは“悪魔の実”を見る。 そして……


『なら、頂くよ』

そう言って“悪魔の実”を口に放り込んだ。一口サイズだったのですぐに噛み、飲み込む。


「「「!!?」」」

アルトの判断にみんな驚いた。


アルト!!」

『まずい……っ。苦っ。うわ、なんだこれ。………クザンクン達はよくこんなの食べれたね』

「わっはっはっは。いい食いっぷりじゃなあ!」

ガープが茶をすすりながら豪快に笑う。


「……なんで考えもせずに食べちゃうの」

一方青キジは呆れていた。アルトは口直しにポケットから飴を取り出し噛み砕く。


『……考えたさ。ちゃんとね』

「?」

『僕はドフラミンゴと対した後、弱いのを知った。そして今より強くなりたいと思った。昔は“悪魔の実”は必要なかったけど、これからの僕には必要な力だ。たぶん、いつ言われても即決してたよ』

アルトは青キジにそう言うとセンゴクとつるを見る。


『これでいいよね?』

「ああ、いいだろう。大将は青キジ、お前がついて行け。では、ノティ中将。囚われたロール少将と部下の“救出”。並びに敵の“完全抹殺”を特例任務として命令する」

『はっ!!』

アルトはきっちりと敬礼した。





『確認するけど、スコーンは“確保”じゃなくていいんだね?』

「構わないよ。スコーンは元諜報員。その海賊団に軍の秘密が明るみになった恐れがある。諜報から情報が漏れたなんて海軍の名折れだ。それに“バスターコール”が失敗した今、これ以上の失態は許されないよ」

『わかった、おつるサン。肝に命じよう』

「青キジもいいね?」

つるの言葉に青キジは肩をすくめる。


「いいも何も。“今”のおれが反論する余地はないでしょ」

『じゃあ、行こう! クザンクン』

アルトは青キジの腕を掴む。


「でもアルト、まだ能力はわかってないだろ……?」

『着くまでには解ればいい。0時まで時間がないんだ』

「……ああ、わかったわかった。行こう」

「救護船の準備はしているよ」

『ありがとう! じゃあ、みんな行って来ます!!』

アルトは青キジを引っ張って部屋から出て行った。





「びっくりしたねェ~アルト君の表情があんなにはっきり変わったの初めて見たよォ」

「そうだね。私も初めてだ」

黄猿の意見につるも頷いた。


「しかし、上手い具合に“悪魔の実”があったもんじゃな。前から用意しとったんか、センゴク?」

ガープが聞く。センゴクは茶を飲む。


「さっき言った通りだ。あいつがあんな簡単に実を食べるとは思わんかったが」

「………」

話が一区切りついたところで、皆は各自の部屋で報告を待つことになり部屋へ帰って行った。








一方、アルトと青キジは救護船に乗り込み、本部を出航した。


「目的地までは約2時間。0時には間に合うよ」

『良かった』

「金は…1億ベリーだけみたいだな」

舵をきりながら青キジが言う。アルトは船に1つだけ積まれたスーツケースを確認して鍵をかける。


『あるだけマシだろう。これも使っていいみたいだね』

「………とりあえず気を引くくらいなら出来そうだな」

『そうだな。……なぁ、クザンクン。能力はどれくらいでわかるものなんだい?』

「…それは人それぞれだ」

『……早く解ればいいんだけど』

「こればっかりは焦っても仕方ないよ、アルト

『ああ』

「後、能力がわかったら教えるんだ。おれが“使えるか”判断する」

『わかってる』

アルトは銃を整備する。


『それから……クザンクン、さっきはありがとう。とても痛かったけど』

「まあ、思いっ切り叩いたからね」

『でも、おかげで目が覚めた』

「それは良かった。…おれは久々にアルトの怒る顔を見て、少し安心したよ」

『安心……?』

「こっちの話だ」

『……そう。………!!』

グラっと大波で船が大きく揺れた瞬間、アルトの身体が左に傾く。その左肩が何かに当たったかのように止まった。青キジは舵を切り返し、背を向けたままアルトへ声をかける。


「揺れたな。アルト、大丈夫か?」

『………』

アルト?」

アルトは左肩にある透明な何かに触る。


『……なんだこれ?』

「? どうした?」

『クザンクン……これが能力かな?』

「! 待ってろ」

青キジは舵を固定し、アルトの側にやってきた。
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