音色に惹かれて
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青キジの部屋
『ただいま』
「おかえり。バイオリンには慣れたか?」
『うん、まぁね。拍手がもらえたから悪くはないんじゃないかな』
アルトはバイオリンケースを机に置く。
「拍手?」
『うん。えっと、ドレーク少将だったかな。彼が拍手をくれた』
「……ドレーク少将か」
『知ってるの? クザンクン』
アルトは青キジの方をみる。青キジはカップをテーブルに置き、アルトを向かいのソファーに招く。アルトは座って、カップに口をつけた。
「そりゃ、知ってるよ。有能だって有名だからね」
『そうなのか。……あっ、このホットチョコおいしいね』
「ああ。フレィバーの新製品らしい」
『いいな、気に入った』
アルトの表情が若干綻ぶ。アルトをよく見ている青キジだからこそわかる表情だった。
「それで、ドレーク少将とは何か話したの?」
『うん。名前とかね。仕事について聞かれたけど、答えていいかわからなかったら言わなかった』
アルトはまたホットチョコを飲む。
『後、また会う約束をしたよ』
「へぇ。アルトにしては積極的だな。気に入ったのか?」
『……言って来たのはあっちだよ。バイオリンが聴きたいらしい』
「ふーん」
『まぁ、楽しかったけどね』
「(へぇ。珍しい)」
青キジはアルトを見て、微かに笑みを浮かべる。
『で、仕事は?』
「ああ。これだよ」
青キジはアルトに書面を渡す。
『“極秘文書”ね…いつも通りか』
「ああ。いつも悪いな」
『別に。仕事なんでしょ』
アルトはホットチョコを飲み干すと立ち上がった。
『じゃあ、行ってくるよ』
「ああ、気をつけて」
アルトは銃を一丁。ナイフを2本腰にさげ、部屋を後にした。
それから1週間後。 おさぼりスポットにて。
『……あれ、まだ弾いてないよ』
「聴くなら最初からがいいと思ってな」
アルトがバイオリンケースを持って行くと、そこにはすでにドレークの姿があった。
『まさか、毎日居たの?』
「いや、1週間後との約束だっただろ? ああ、任務お疲れ」
『……ん。ありがとう』
アルトはバイオリンケースを地面に置く。ケースを開けバイオリンを準備しながらアルトが言う。
『キミ、変な人だね。わざわざ僕のバイオリン聞きに来るなんて』
「そうかな? ノティ少将のバイオリンはなかなかだと思うぞ。それにおれからしたら君が変な人だ。少将なのにコートを着ていない」
『……そのコートは重いからキライなんだ』
アルトの答えにドレークはそうか重いかと呟く。
「確かに重いかもしれないな。だが、おれはこれを“責任の重み”と思っている」
『……?』
「少将になって部下が増えた。“守るものが増えた”重みだよ」
『……じゃあ、余計に僕にはわからない』
アルトはポケットから飴を取り出し、口に入れる。もう1つ飴を取り出しドレークに差しだす。
『食べる?』
「…ああ、貰おう」
ドレークは受け取り、口に入れる。口の中が甘くなる感覚を久々に感じた。
「以前、ノティ少将は大将の部下と言ってたが、自分の部下はいないのか?」
『いないよ。僕はいつも一人』
「そうか…」
アルトは改めてバイオリンを手に取り、調整を始める。その様子を見ていたドレークが少しの間を空けて尋ねた。
「なぁ、ノティ少将。話は変わるのだが」
『何?』
「その、楽しいか? 私と話していて」
『……? 変なこと聞くね』
「君は本当に表情がかわらないから心配になってな。聞いてみた」
『………』
アルトの目が一瞬見開く。表情が動いたとかろうじて感じられた。しかしその表情から感情までは読み取れない。
「気に触ったならすまない……」
『ふっ…ハハハ…』
ドレークの心配を他所にアルトは笑っていた。表情は人形みたいな無表情ではなくなり、確かに笑っているのがわかる。ドレークは自然に笑顔になった。
「少しばかり、笑い過ぎじゃないか? ノティ少将」
『ふふ、すまない。そんなこと聞かれたのは初めてだからね。やっぱり、キミは変だよ』
「?」
『僕は十分楽しいよ。僕は楽しくないところにいる程、いい性格じゃない』
「そうか」
笑っていたアルトはすっと表情が戻り、地面に目を向ける。
『なぁ、ドレーク少将…いやドレーククン。僕のことはアルトと呼んでくれないか? 少将と呼ばれるのはスキじゃないんだ』
「なんだ。そんなの構わないよ」
『そう。後…』
「……なんだい?」
『その……』
アルトは話を切り出しにくそうに言う。
『僕の仕事のことなんだけど、やっぱり言えないんだ。まだ言っちゃダメだって』
「そうか…」
ドレークは残念そうに言う。アルトは目をドレークから反らせ、続ける。
『言うのには条件があるんだ。その、…キミが僕の“友達”なら言っていいらしい』
「…!!?」
アルトはドレークの顔を見ない。今度はドレークがハハハと笑った。
「……何を言うかと思ったら」
『……悪い。変なことを言った気にしな……』
「アルト。私は今この瞬間もお前を“友”だと思って話しているよ」
ドレークはアルトの言葉を切る。アルトはきょとんっとした表情を見せた。今日は以前よりもアルトの表情がなんとなく読めることにドレークは喜びを感じていた。
『……本当? 友達ってそういうものなのかい?』
「……アルトお前、友達は初めてなのか?」
ドレークは驚いた。アルトは頷く。
『うん、初めてだ』
「そうか。じゃあ、きちんと握手を交わそう。改めてよろしくな」
ドレークは右手を差し出す。アルトはその手とドレークの顔を交互に見て、ゆっくり右手を差し出た。二人は握手をする。
『よ、よろしく』
離した後、アルトは自分の右手を見る。そして慌ててバイオリンを取り出した。
『えっと、新曲練習してきたから』
「ああ。頼むよ」
~~♪♪~♪~
アルトはバイオリンを奏で始める。明るいが穏やかな曲。アルトは照れている様だ。ドレークは笑う。今日は自分でもびっくりするくらい笑顔になる日だ。
~~♪~~♪♪
そしてドレークは思う。
たぶんアルトは政府の“闇”を仕事としてる、と。
噂になるのも頷ける。そんな仕事なら表には滅多に出ないだろう。
だから逆に世界の表を何も知らない
それ故に“純粋”なんだと
~~♪♪~~♪
おれを初めての友だと言った彼に何か出来るだろうか
ドレークはバイオリンの音に静かに耳を傾ける。この時のドレークはいずれ自分がアルトを裏切るとは微塵も思わなかった。
そんな穏やか日、彼らは友達になった。
⇒あとがき
『ただいま』
「おかえり。バイオリンには慣れたか?」
『うん、まぁね。拍手がもらえたから悪くはないんじゃないかな』
アルトはバイオリンケースを机に置く。
「拍手?」
『うん。えっと、ドレーク少将だったかな。彼が拍手をくれた』
「……ドレーク少将か」
『知ってるの? クザンクン』
アルトは青キジの方をみる。青キジはカップをテーブルに置き、アルトを向かいのソファーに招く。アルトは座って、カップに口をつけた。
「そりゃ、知ってるよ。有能だって有名だからね」
『そうなのか。……あっ、このホットチョコおいしいね』
「ああ。フレィバーの新製品らしい」
『いいな、気に入った』
アルトの表情が若干綻ぶ。アルトをよく見ている青キジだからこそわかる表情だった。
「それで、ドレーク少将とは何か話したの?」
『うん。名前とかね。仕事について聞かれたけど、答えていいかわからなかったら言わなかった』
アルトはまたホットチョコを飲む。
『後、また会う約束をしたよ』
「へぇ。アルトにしては積極的だな。気に入ったのか?」
『……言って来たのはあっちだよ。バイオリンが聴きたいらしい』
「ふーん」
『まぁ、楽しかったけどね』
「(へぇ。珍しい)」
青キジはアルトを見て、微かに笑みを浮かべる。
『で、仕事は?』
「ああ。これだよ」
青キジはアルトに書面を渡す。
『“極秘文書”ね…いつも通りか』
「ああ。いつも悪いな」
『別に。仕事なんでしょ』
アルトはホットチョコを飲み干すと立ち上がった。
『じゃあ、行ってくるよ』
「ああ、気をつけて」
アルトは銃を一丁。ナイフを2本腰にさげ、部屋を後にした。
それから1週間後。 おさぼりスポットにて。
『……あれ、まだ弾いてないよ』
「聴くなら最初からがいいと思ってな」
アルトがバイオリンケースを持って行くと、そこにはすでにドレークの姿があった。
『まさか、毎日居たの?』
「いや、1週間後との約束だっただろ? ああ、任務お疲れ」
『……ん。ありがとう』
アルトはバイオリンケースを地面に置く。ケースを開けバイオリンを準備しながらアルトが言う。
『キミ、変な人だね。わざわざ僕のバイオリン聞きに来るなんて』
「そうかな? ノティ少将のバイオリンはなかなかだと思うぞ。それにおれからしたら君が変な人だ。少将なのにコートを着ていない」
『……そのコートは重いからキライなんだ』
アルトの答えにドレークはそうか重いかと呟く。
「確かに重いかもしれないな。だが、おれはこれを“責任の重み”と思っている」
『……?』
「少将になって部下が増えた。“守るものが増えた”重みだよ」
『……じゃあ、余計に僕にはわからない』
アルトはポケットから飴を取り出し、口に入れる。もう1つ飴を取り出しドレークに差しだす。
『食べる?』
「…ああ、貰おう」
ドレークは受け取り、口に入れる。口の中が甘くなる感覚を久々に感じた。
「以前、ノティ少将は大将の部下と言ってたが、自分の部下はいないのか?」
『いないよ。僕はいつも一人』
「そうか…」
アルトは改めてバイオリンを手に取り、調整を始める。その様子を見ていたドレークが少しの間を空けて尋ねた。
「なぁ、ノティ少将。話は変わるのだが」
『何?』
「その、楽しいか? 私と話していて」
『……? 変なこと聞くね』
「君は本当に表情がかわらないから心配になってな。聞いてみた」
『………』
アルトの目が一瞬見開く。表情が動いたとかろうじて感じられた。しかしその表情から感情までは読み取れない。
「気に触ったならすまない……」
『ふっ…ハハハ…』
ドレークの心配を他所にアルトは笑っていた。表情は人形みたいな無表情ではなくなり、確かに笑っているのがわかる。ドレークは自然に笑顔になった。
「少しばかり、笑い過ぎじゃないか? ノティ少将」
『ふふ、すまない。そんなこと聞かれたのは初めてだからね。やっぱり、キミは変だよ』
「?」
『僕は十分楽しいよ。僕は楽しくないところにいる程、いい性格じゃない』
「そうか」
笑っていたアルトはすっと表情が戻り、地面に目を向ける。
『なぁ、ドレーク少将…いやドレーククン。僕のことはアルトと呼んでくれないか? 少将と呼ばれるのはスキじゃないんだ』
「なんだ。そんなの構わないよ」
『そう。後…』
「……なんだい?」
『その……』
アルトは話を切り出しにくそうに言う。
『僕の仕事のことなんだけど、やっぱり言えないんだ。まだ言っちゃダメだって』
「そうか…」
ドレークは残念そうに言う。アルトは目をドレークから反らせ、続ける。
『言うのには条件があるんだ。その、…キミが僕の“友達”なら言っていいらしい』
「…!!?」
アルトはドレークの顔を見ない。今度はドレークがハハハと笑った。
「……何を言うかと思ったら」
『……悪い。変なことを言った気にしな……』
「アルト。私は今この瞬間もお前を“友”だと思って話しているよ」
ドレークはアルトの言葉を切る。アルトはきょとんっとした表情を見せた。今日は以前よりもアルトの表情がなんとなく読めることにドレークは喜びを感じていた。
『……本当? 友達ってそういうものなのかい?』
「……アルトお前、友達は初めてなのか?」
ドレークは驚いた。アルトは頷く。
『うん、初めてだ』
「そうか。じゃあ、きちんと握手を交わそう。改めてよろしくな」
ドレークは右手を差し出す。アルトはその手とドレークの顔を交互に見て、ゆっくり右手を差し出た。二人は握手をする。
『よ、よろしく』
離した後、アルトは自分の右手を見る。そして慌ててバイオリンを取り出した。
『えっと、新曲練習してきたから』
「ああ。頼むよ」
~~♪♪~♪~
アルトはバイオリンを奏で始める。明るいが穏やかな曲。アルトは照れている様だ。ドレークは笑う。今日は自分でもびっくりするくらい笑顔になる日だ。
~~♪~~♪♪
そしてドレークは思う。
たぶんアルトは政府の“闇”を仕事としてる、と。
噂になるのも頷ける。そんな仕事なら表には滅多に出ないだろう。
だから逆に世界の表を何も知らない
それ故に“純粋”なんだと
~~♪♪~~♪
おれを初めての友だと言った彼に何か出来るだろうか
ドレークはバイオリンの音に静かに耳を傾ける。この時のドレークはいずれ自分がアルトを裏切るとは微塵も思わなかった。
そんな穏やか日、彼らは友達になった。
⇒あとがき