音色に惹かれて
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~~♪♪~~♪
生い茂る木々の間にポッカリ空いた空間。ここは海軍本部で知ってる者は数少ない。以前アルトが青キジを探して見つけた、俗にいうおさぼりスポットだ。
~♪♪~♪~~
「…これはバイオリンの
職務の休憩がてら散歩をしていたドレーク少将。どこからか聞こえてくるバイオリンの音色に惹かれ、歩いて行くとポッカリと木々がない野原に出た。こんなところがあるのだなと感心しつつ、音の発生源を探す。
「この辺りで聞こえるのだが…」
ドレークは辺りを見渡す、しかし誰もいない。目を瞑り、しばし音色に耳を傾ける。
「上か……?」
ドレークは上に目を向け探した。すると大樹の太めの枝に腰掛け、幹に寄りかかる人影を見つける。 その人物は、くせっ毛の強い黒髪を持つ軍人にしては細身の男だった。髪と同じ黒い服を身にまとう姿から、白いコートを与えられていない若い士官だとドレークは思う。
青年はそんなドレークに気づいていないのか、目を閉じ、軽やかで優しい音色を奏でていた。
~~~♪♪~♪
「………」
ドレークは静かに耳を傾ける。しばらくすると曲が終わった。
『…ふぅ』
木の上にいたアルトは息をつく。
パチパチパチ…
『?』
アルトは下から聞こえる拍手に反応し、緑の目を向けた。 いつの間にそこにいたのか。濃い金色の髪を後ろに流し、顎に十字の傷がある男が立っていた。肩に掛けた白いコートを見る限り階級が上の人間の様だとアルトは状況を確認する。
『………とりあえず、降りるか』
アルトはふと呟くとバイオリンをケースにしまい、枝から飛び降りる。高い所から落下したのに関わらず軽く地面に降り立った。
「(えらく身軽だな。猫みたいだ)」
その軽やかな挙動を見てドレークはそう素直に思った。そんなドレークをやや目つきの悪い緑の瞳が無遠慮に見る。そして青年士官が口を開いた。
『キミ、誰?』
「ああ、私はドレーク。階級は少将だ。演奏の邪魔をしてすまなかったな」
『少将…か。いつから居たの?』
「……ここに着いたのはたぶん、曲の半分くらいか」
『そうか。気付かなかったな』
アルトは髪をいじる。
「(表情がまったく動かない…人形と話している様だ)」
ドレークは怪訝な顔をする。口が動くが他の表情筋が動いていないように見える。目を反らすその動きから、どうやら今は場をもて余している様だ。ドレークは尋ねる。
「君の名前は? 名乗られたら名乗り返すのが礼儀だろ」
『ああ、そうか。名乗ることがないから忘れてたよ』
アルトは髪から手を離す。
『僕はノティ・アルト。階級はキミと同じ少将だよ』
「少将!!?」
ドレークは驚いた。どう見ても自分より一回りは若い青年が自分と同じ階級とは思わなかったからだ。
『……?』
アルトは何に驚いているか解らず首を傾げる。 ドレークは咳払いをし、仕切りなおす。
「失礼。ノティ少将、君はどこの隊に所属してるんだ?」
『僕は隊には所属してないよ』
「? じゃあ、自分で隊を持っているのか?」
それなら見たり知ってたりするずだが…っとドレークは思う。アルトは案の定、首を横に振った。
『持っていない』
「……そうか。じゃあ何をしているんだ?」
アルトは、ん~っと考える。そして言う。
『言っちゃダメだと言われてるから言えない』
「はぁ!?」
流石のドレークも呆れた。
「ど、同僚にも言えないのか?」
『……いや。今まで聞かれることなかったから。クザンクンに聞いてみないとわからない』
「“クザン君”?」
ドレークは首を傾げた。
『ああ…クザンクンじゃわからないか。何て言ったっけ…“青キジ”だったかな』
「青キジ!!? 大将じゃないか」
ドレークの驚きにアルトはひょうひょうと答える。
『そう、クザンクンは大将。僕は一応、彼の部下らしい』
「………」
プルプルプルプル……
『「!?」』
アルトの子電伝虫が鳴った。アルトはドレークを
『なに?』
[アルト、任務が入ったから戻って来て]
電伝虫から聞こえたのは大将青キジの声。
『わかった』
電伝虫が目を閉じる。
『行かなきゃ』
「………」
アルトはバイオリンケースを握りなおした。 そしてドレークを見る。
「?」
『行っていいかな…?』
「! ああ、引き留めて悪かった」
『いや、意外と楽しかったよ』
「そう…か」
表情が変わらないせいか楽しそうには見えなかった。しかし、声は穏やかでそう思っているのだとドレークは自然に思えた。
「よかったらまた、バイオリンを聴かせてくれないか?」
ドレークは笑顔で言う。アルトはそれを聞いて立ち止まった。考えている様だ。
『…………いいよ。たぶん1週間後くらいには帰るから、それ以降なら構わない』
「わかった。また音色が聞こえたらここに来るよ」
『ああ。じゃあ…また』
アルトはドレークに背を向け木々に入って行った。ドレークはそれを見送った後、時計を見る。
「おれも帰るか」
ドレークはアルトは反対の道を帰って行った。
ドレークの司令室。
「ドレーク少将、おかえりなさい。ご休憩は出来ましたか?」
ドレークの右腕である部下がお茶を出しながら尋ねる。
「ああ。今日は面白い奴に会ったよ」
「?」
「准将は知ってるか? ノティ・アルト少将と言うらしいが」
「ノティ・アルト少将…」
准将は考える。
そしてああっと手を打ち、名簿を取り出した。
「一時、噂になった少将です」
名簿をめくり、それをドレークに見せる。名簿は先程会ったよりもう少し若いアルトの写真。年齢・身体情報・階級以外、詳細は書かれていない。
「………」
「これが噂の原因です。また今まで下級の階級で少将を見たと言う者はおらず、存在していないのではないかっとまで言われていました」
「まるで幽霊扱いだな……バイオリンはなかなか上手かったんだが」
ドレークは笑う。
「お調べしますか?」
部下の提案にドレークは首を横に振り、穏やかな顔で言った。
「いや、今度本人に聞いてみるよ」